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 「ふぅー、もう無理限界」


 ダンスの達人で踊り狂うことはや1時間ほどが経過している。

 一応ほかのお客さんに迷惑がかからないように1回事に後ろに人がいないかを確認をして、いたら交代という名の休憩をしてなんとか身体を持たせて来たが、額にはかなりの量の汗がにじんでいた。

 そしてついに身体が限界を迎えたのかペタンと床にヘタリこんだ。

 流石に休憩なし3連続でのダンスは身が持たなかったよ。

 それにExtremeモードはほとんどレッスンを受けたプロが踊る振り付けそのまんまだし。


 「仕方ないわね、お昼休憩にしましょうか」


 「その言葉を待ってたよ」


 ようやくでた、休憩の二文字に耳が素早く反応。

 へたりこんでいたのが嘘のように起き上がる。

 たぶん今日1番俊敏に動いたと思う。


 「ほんと食いしん坊なんだから」


 ちょっと嬉しいそうな感じの弾んだ声のトーンで雅ちゃんがつぶやく。

 確かにいつもお昼ご飯と言われれば同じように反応しているけど、今日は椅子に座わって足を労わってやりたい。


 「ほらほら急がないと混んじゃうよ?」


 そろそろ時刻は12時を過ぎる。

 このアミューズメントパークのフードコートがそんなに席がないだろうし急がないと立ち食いなんてことにもなりかねないので、雅ちゃんを急かす。


 「そんなに元気ならもう1曲踊れるんじゃないかしら」


 とんでもないことを言い出したので、しかたない俺がどんなに疲れているか教えてあげようとわざと元気をなくしたように、しわがれた声で。


 「あー、疲れた雅おぶって」


 もちろんサラリーマンの方が疲れているのはわかっているが、ダンス経験ゼロの人間が1日で振り付けをマスターする苦労もわかっていただきたい。


 「いいけど高くつくわよ?」


 「んー、じゃあ頑張って歩く」


 はっきり聞いわけじゃないが、これまでの発言的に雅ちゃんはお金持ちだと思う。

 そのお嬢様が高くつくというならきっととんでもないことになるに違いないので、ちょっと痛む足にムチ打って歩き出す。

 頑張れひかりちゃんの足。休憩ポイントまであと少しだ。


 「はぁ、反応までちょっと弟に似てるわね」


 後ろで聞こえた声はやはりちょっと嬉しいそうだった。

 雅ちゃんの弟ってアニメには一切出てこなかったしちょっと興味あるな。


 「そういえばさ、雅の弟ってどんなの?」


 あんまり人の家庭の事情に踏み込むのは良くないと思うが、話題に上げて来ているし、問題ないだろうと判断して歩きながらの雑談の一環としてさりげなく聞いてみる。

 雅ちゃんは少し考えるような素振りを見せ、思いついた単語を上げていく。


 「そうね……。なんというか頼りない? とかしょぼい。小物感にあふれているみたいな?」


 「どこが似てるのか全然わからないんだけど?」


 これでも俺このアニメの主人公なんですけど? 小物感あふれるとは失礼なやつだな。

 自分で思っちゃうあたり確かに小物感あふれる感じかも。

 ひとりで納得しかけていると、雅ちゃんは続きを話始める。

 人の話は最後まで聞くべきだな。


 「あと、怠け者ですぐに調子に乗るところとか」


 結局、失礼なことに変わりはなかった。

 改善する意味でも聞いて参考にしようかな。

 アニメのひかりちゃんはたぶんこんな感じじゃないだろうし。

 両親に会った時に、娘がおかしくなったって心配されても困る。

 娘の心が息子になったって異常事態が起こった状態で会うことになるだけどさ。


 「もうちょい具体的に」


 「お昼時にすごく元気になるとか? 単純なところとか?」


 「どうせわたしは食いしん坊ですよーだ」


 自分で聞いておいてなんだがやっぱり気分のいいものではなかった。

 そこまで気にしてはいないんだけどちょっと拗ねたくもなる。

 

 「なんでちょっと拗ねるのよ……」




 「アミューズメントパークにフードコートがついてるとは」


 エスカレーターを1つ上がり、やってきたのは、どこにある感じのフードコート。

 話ながらのゆっくりきたせいか、ちょっと混み始めている。

 急いで席を確保した方がいいかな?

 そう思いいくつかある店の中から、何を食べようかと、迷っていると横から声がした。


 「どれも割高ね」


 「テンション下がること言わないでよ」


 「でも事実じゃない」


 「そんなこと言うなんてもしかて雅って主婦なの?」


 こういう娯楽施設の食事は意外といい値段する。

 前世で時々主婦が愚痴ってたりすることがあった。


 「違わよ。うちの両親金銭感覚がちょっとおかしくて、私は、ああなりたくいって考えてたら、ついつい遊園地とかの食事って高いなーとか思っちゃうのよ」


 「確かにカレー800円とかちょっとあれ? とか思わないこともないけどさ、そこまで気にすることでもないんじゃないの?」


 確かに高いと思う気持ちはわかるので素直に共感する。


 「1回うちの両親にあったらひかりもわかるわよ」


 「なんか、苦労してるんだね」


 ちょっと疲れたような顔をしながら思い出しているであろ雅ちゃんに、一瞬迷ったあと労いの言葉をかけた。

 お金持ちって案外大変なのかもしれないな。


 「よくお金持ちの家羨ましー、とか言われるけど、そう思うならぜひとも変わってもらいたいって思ってたわよ」


 「家で一体何があったの?」


 変わって欲しいと願うようなことが起こるような家ちょっと雅ちゃんの家に興味が湧いてきた。

 そういえばチワワも裸足で逃げ出す家だしね。


 「聞きたい?」


 疲れた顔を据わった目をしたして鋭く目だけをこちらに向けて危険な雰囲気を出しながら、一歩こちらに近づいてくる。


 「いや、やっぱりやめとくよ。聞いたらご飯美味しくなくなっちゃうだろうし」


 興味はあるが聞けばきっと雅ちゃんと同じ評定になるのではないかと思い、首を横に振る。

 せっかく食べるならお昼は美味しくいただきたし。


 「良かったわ」


 ホッとした顔で、そう言われるともしかしてそんなに大した話じゃないのかもと思えてしまう。


 「で、ジャンクフードと高カロリーなものしかないけど?」


 「ハンバーガーのレタスだけ食べるとか?」


 「それじゃあ発想がいかれた金持ちだよ。雅」


 「そうね。似たくないところほど似るものね」


 他に思い当たることがあるのかちょっと哀愁的ななにかを漂わせ、遠くを見つめ出した。


 「そうなのかな?」


 雅ちゃんに聞こえていないのはなんとなくわかっているけど俺自身はあまりそんな実感がないので、首をかしげた。



 「仕方ないから、午後の運動の量を増やすわよ」


 「えぇー」


 復活した雅ちゃんはやっぱりとんでもないことを言い出した。

 午前中はかなりハードに動いたし、これ以上は上はないと思っていたので、素直に不満が出てしまった。


 「いい、ひかりジャンクフードや丼ぶりもののご飯はとっても美味しいわ。でもねハマると恐ろしいことが起こるのよ。とくに普段から運動しないような、怠け者はすぐにぷよぷよのぶよぶよになちゃうわよ?」


 妙な説得力をもったその言葉に一つの可能性が頭に浮かぶ。


 「もしかして雅なったことがあるの? ぷよぷよのぶよぶよ」


 「なっ、そ、そんなわけないでしょ? 私がそんなハンバーガーを一気に5個とか食べたりするわけないでしょ」


 「へー、ハンバーガーを一気に五個食べしたことあるんだー」


 動揺した挙句墓穴まで掘った雅ちゃんにもう少しだけ追い打ちをかける。

 午前中の運動の文少しぐらいからかってもバチは当たらないだろう。


 「うーう、なんか今日のひかり意地悪ね」


 「いや今のは自爆でしょ?」


 「ってそんなことしてる間に混んじゃったじゃない」


 自分が不利なことに気がついたのかめちゃくちゃ強引な話題転換だったが、実際に半分ぐらいしか、埋まってなかった席の9割程が埋まっていた。


 「ほんとだね。まだ食べるものも決まってないのに」


 結局早くてうまいハンバーガー1つになりました。

 雅ちゃん曰く最大限の譲歩だそうだ。

 しかしハンバーガーを食べる雅ちゃんは今まで見たことないほどの笑顔で、一口一口噛み締めるように食べていた。

 午後こそは、オールパーフェクトとって、ラーメンを食べてやる。

 やっぱり好きな食べ物を食べることは見ていてとても幸せそうだったので、俺も頑張って見ようと思えた。

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