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商店街を抜けてしばらく歩くと、駅前にでた。

 全面ガラス張りで、柱と内側の壁な白色のスッキリとした印象の駅。

 主要都市の大規模な駅とは違いない駅ビルや隣接するビルのような背の高い建物がないおかげで、少し離れていてもよくわかる。

 近づくにつれて、人の数も増えて来るけど、休日であることを考えればそこまで多くもないようなきがする。

 

 「ここはいつ来ても人がすごいわね」


 駅の中に入れば、外の倍以上の人達がひしめいている。

 確かに予想外に人が多いな。


 「そうなの?」


 例によって俺はこの世界の事情に疎いので、うかつな発言ができないので知らない感じを出すように発言する。

 まぁ本当に知らないだけなのだが。


 「一応このへんの主要駅なんだけど?」


 まぁ学校のある駅って田舎ってイメージはあるけどさ。

 駅ビルの一つもないのに主要駅とはな。

 もしかしたらこの世界、ベースは日本だけど全くの別物かもしれないな。

 今度は地図の一つでも買って調べて見るか。


 「まあ、そうだね。それで、電車で移動するの?」


 というか、ここ駅以外だとさっきの商店街ぐらいしかないし、電車移動しかないと思うけど、改札前から全く動かない雅ちゃんを見ているともしかしたら通り抜けて向こう側に行く可能性もあるが……そういう雰囲気ではないような気もする。


 「もちろん、そうなんだけど……電車ってどう乗ればいいのかしら?」


 ズコッと芸人さんのようにこけそうになりながら、雅ちゃんを見る。


 「雅……よくそれで生きてこられたね」


 ぶっちゃけて俺のマジの本音である。

免許証を取れる年齢でもないはずの雅ちゃんは友達と遠出する時どうやって移動して来たのだろうか?


 「しょうがないじゃない、基本車で送り迎えされてたんだから。やっと電車に乗れるのよ」


 ほんとに電車に乗れることが嬉しいのか雅ちゃんの頬は少しだけ赤くなっている。

 そんな可愛いらしい反応されてはここ数日筋肉痛でも構わず、いじめくれたしかしをしたくなってしまう。


 「憧れてたの?」


 悪い笑みを貼り付けて、からかってみる。


 「悪い?」


 起こった様子はなく、少し恥ずかしそうに返してくる。

 ちょっと赤い程度だった頬が赤みをましてより可愛いらしくなった。

 たぶんひかりの背があと15センチぐらい高ければ雅ちゃんは上目遣いになって、破壊力がましていただろう。

 そして男の子のままだったら惚れていたかもしれないな。

 だが現実には、ちょっと可愛いかもと思う程度で、心臓は平常運転のまま。

 女の子の身体では女の子に欲情なんてしないようだ。


 「いや別に……でも、いつ来てもって言ったから、てっきり慣れているのかと思って」


 「パパが痴漢にあったら困るからって乗ることがあっても、パパかママの同行して乗ってたのよ。両方がダメだったら、パパの秘書の人がが同行してくれるからひとりで乗る機会がなかったの。それに友達と遊ぶ機会もなかったしね……」


 微妙に慌てたような早口でまくし立てるように説明してくれたが、パパとママがどうのってのと遊ぶ機会がなかった以外聞き取れなかった。

 まだ身体に慣れ切っていないので早口は勘弁してください。


 「なんかごめん」


 しかし余計なことを思い出させてしまったのは理解できたので謝っておく。

 そうか雅ちゃんも週末ぼっちだったのか。


 「何よ? その目は」


 「なんか地雷踏んじゃったなと思ってさ。心から反省してるよ」


 同情と同志に向ける哀れみと嬉しさが混ざった複雑な目のまま見つめていると雅ちゃんの顔が少し険しくなる。

 やっぱり週末ぼっちってつらいよね。


 「……もうっ。機会が無いとは言ったけど友達が全くいなかったわけじゃないんだから。……はやく行きましょう」


 え? さてはこいつ偽装ぼっちだったのか?

 ちなみに偽装ぼっちとはぼっちを装いながらなんだかんだで、ペア組めと言われた時にペアになれる人がいる人間のことを言う。

 

 「そこで切符買わないと――」


 と、声をかけたが、少し遅かった。


 「うわっ、なにこれ」


 雅ちゃんは見事に改札機の下の方についている扉に入場を阻まれ、警告音を鳴らされていた。

 うわ、駅員さんこっち来ようとしている。

 とりあえず雅ちゃんを回収しておこう。

 

 やってきました券売機。

 結局並んでうちに2本ほど電車が行ってしまった。

 流石は主要駅。込み具合が違いますね。

 そしてようやく順番が回ってきたのだが。


 「どれをおせばいいのよ?」


 「このくだり前にもやったような……」


 大衆の常識を知らない雅お嬢様がいつぞやのように財布を握りしめ、不審者のように券売機をいじくっている。

 お金を入れないと切符は買えないと思うんだけど。


 「気の所為よ、気の所為。それよりひかりもさっさと切符買っちゃいなさいよ」

 

 そしてしれっと諦めたのか華麗に俺と場所を変えて、後ろにつく。

 

 「でどこに向かうつもりなの?」


 俺は目的地を知らないので、振り返って確認する。


 「ええと、ここの駅よ」


 券売機のボタンの一つを指さす。

 見慣れない地名だな。


 「じゃあ」


 お金を投入して、ボタンを押す。

 そして数秒して下の方から切符がでてくる。

 ちょっと古いタイプなのか勢いよく吐き出すように出てきた。

 この券売機ちょっと態度悪くないか?


 「なんだお金そこに入れるのね」


 下の方についていた投入口見えてなかったのね。


 「じゃあ電車に乗ろう」


 もうそろそろ電車が入ってくる。


 「これさっき私を止めた悪い機械ね、今度は切符買ったし、勢いでぶっ飛ばせばいいのよね?」


 再びやってきた改札で助走のために距離を取りながら物騒なことを言い出す雅ちゃんをそっと止める。

 マジて今度は駅員飛び出して来るからやめてくれ。


 「先に手本見せるから雅はあとからついてきて……」


 ちょっと疲れたようにため息混じりにそれだけいうと切符を入れて改札を通り抜ける。

 機械に関しては雅ちゃんはあてにならないことがよくわかったよ。


 色々と大変ながらもようやく電車に乗ることができた俺達だが、目的の駅は3つ先なだけなので、座ることなくつり革に捕まって車内を過ごしていた。


 「電車の中って意外と広いのね。もしかしてこれが噂の優先席? なんだか普通の席とあんまり変わらないわね」


 あまり乗る機会がなかった雅お嬢様は物珍しそうにあたりを見回してはテンションを上げていた。

 まだピンク色になっていないので危険はないけどそろそろテンションを下げておいた方がいいだろう。


 「雅。電車の中では静かにね」


 「はっ、……つい」


 われにかえった雅ちゃんはしゅんと小さくなる。

 しかも顔を真っ赤にしている。

 その様子がおかしく思えて、つい笑い混じりにからかう。


 「これじゃあいつもと逆だね」


 「確かにひかり注意させるなんてなんか違和感」


 テンションが戻った雅ちゃんはまあまあ失礼なことを言い出す。


 「わたしこれでも常識人だから」


 ドヤ顔混じりにそう返す。


 「それはないはね。だって夜中にラーメン食べるために寮を抜け出すんだも」


 「それまだ引っ張るの?」


 「深夜の2時から30分の説教受けたのよ、後2ヶ月ぐらいは引っ張るわよ。寝不足になるし、寝坊しそうになるし1日大変なだったんだから」


 「夏までですか……」


 雅ちゃんをむやみにからかうのは控えよう。

 キャラにないことするとろくなことがないと俺は学んだ。


 1度会話が途切れること数分そろそろ見える範囲の電車の中にある広告を全て見終えて暇になりそうなその時。

 

 「そういえばさ、どこに向かってるの? 楽しい場所としか聞いてないんだけどさ」


 朝から全く考えていなかった当然の疑問が頭に浮かんだ。


 「それはついてからのお楽しみよ。まぁ悪いようにはしないから安心して」


 ちょうど降りる駅のアナウンスが聞こえて、電車が停車する。

 そして逆方向のドアが開く。

 「さ、早く降りましょ?」


 先に降りる雅ちゃんの背中を見ながらますます不安が募っていく。

 これさトレーニングジムとか行く流れじゃないよね?


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