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 放課後。

 俺達は体育館にいた。


 「ほぇー。これまた豪華だね」


 「あんこ来られなくて残念だったわね」


 この場には俺と雅ちゃんの2人しかいない。

 ゆり先輩が去ったあと、なかなか目を覚まさない、あんこちゃんを二人担いで保健室に送りとどけて、そのおかけで遅れ、先生にたっぷりと、怒られた。

 やっぱりあのクール教師はイメージめちゃくちゃ怖かったよ。

 お説教から開放されたのが先ほどのこと。

 本当ならこれから男子部への潜入をするところだが、怒れたばかりで、問題を起こすのはまずいだろうと話し合い今日は大人しく部屋に戻ろうと決めた。

 しかし玄関で、先輩に捕まってそのまま体育館に連行され、やってきたのが今。


 体育館にはたくさんの料理のがビュッフェスタイルで並べられていて、種類がとっても豊富。

 洋食、和食、中華。

 おおよそ思いつく料理があるんじゃないかと思える。

 だがそれ以上にデザート類の種類が多い。

 流石女子しかいない空間だけあってケーキやらアイスのところにはかなりの人集りができていた。


 「すごい人の数ね」


 入口付近からそれを見ている雅ちゃんが引いているのがわかる声でつぶやく。


 「早くしないと料理なくなっちゃう」


 空腹の中での説教に耐えていた俺の頭の中はもう既に料理のことでいっぱい。

 今すぐにでも駆け出して料理貪りたい衝動に駆られている。

 少しだけ残った女の子としての自覚? でかろうじてヨダレを垂らしそうになるぐらいで我慢。


 「食いしん坊」

 

 「だってお腹空いたんだもん」


 共に説教をくらった俺達の間には軽口を叩けるほどの絆が生まれ、アニメとは違った関係性を構築し始めている。

 雅ちゃんってこんな1面もあったのかとちょっとびっくりしているけどな。

 アニメでは、もっとクールなお姉さんって感じだったんだが、もはやそんな感じ全くない。

 ちょっと子どもぽさのあるツッコミ少女だ。

 まぁこれはこれできっと面白いくなるさ。


 「太るよ」


 なんだかちょっと機嫌悪い? やっぱり怒られてすぐはしゃいだりするのはちょっとまずいかな?

 でも今は落ち込むような場所じゃないし、ここは一つポジティブをわけてあげるとするか。


 「雅、最初からマイナススタートになったのはしょうがないなんだし、ここは思い切って楽しんだ方がいいと思うよ」


 歩きながらそっとケーキの列に誘導する。

 

 「それもあるけど、……でもカロリーは気にしなきゃいけないわ。あいつらは恐ろしいのよ……」


 急に身震いをして、戦慄した表情を浮かべ、なにやらブツブツつぶやきながら何かを思い出している雅ちゃんを見かねて、


 「雅そんなに太ってないし、大丈夫だと思うけど」


 おっと、気がついたら結構列が進んでケーキを取れるところまで来ているじゃないか。

 1度にたくさんのとるのは女の子的に恥ずかしいし、3個ぐらいにしておこう。

 ほんとは5個とか取りたいけど、世間体というか女の子らしさを重視して、少なくとる。

 食事の量なんで悩んだりしない男子だった頃が懐かしいぜ。

 まだ2日目だけどな。

 思ったより甘いなこのモンブラン。


 「甘い、ひかりってばケーキよりずっと考えが甘い……ってなんでもうケーキ食べてるのよ!!」


 「いや、そこに美味しそうなケーキあったし、それより後ろつかえてるよ」


 振り返ると後ろにはたくさんの女の子達が並んでいる。

 ざっと50人はいるだろう。

 ケーキ人気すごいな。


 「し、知らないわよどうなっても」


 「雅さぁ、どうしてそこまでカロリー気にするの?」


 「………………言いたくないわ」


 「うーん、まぁいいっか」


 深く考えることなく残りのケーキもパクッと食べる。

 空腹に糖分。最高だな。


 「ひかりって恐ろしい子ね」


 その様子を恐ろしいものでも見るような表情で雅ちゃんは眺めていた。


 「え?」


 何が恐ろしいのか全くわからない俺は間抜けな声を漏らす程度の反応しかできなかった。

 どういう意味なのか問うかとしているとどこからかひかりちゃんを呼ぶ声がした。


 「あっ、ひかりちゃん」


 声のした方を見れば同じくようにトレイにケーキやアイスと言ったデザート類をたくさんの盛ったゆずはちゃんがこちらに向かってきていた。


 「ゆずはちゃん」


 口に残ったケーキの欠片を飲み込みながら小さく手を振る。

 女子の再会といえばはぐか手を振るしかないだろうし。

 とよくわからない女子への偏見100パーセントを元にした行動をとる。


 「げっ」


 雅ちゃんの方から虫にでも出会ってしまったような感じの声が聞こえてきた。


 「ええと、昨日食堂であった負け犬さん?」


 当然ゆずはちゃんにも聞こえたいたらしく、昨日の争いの続きを再開させるかのように挑発をいれる。


 「ぼっちがパーティーなんて来て大丈夫なの? 溶けたりしない?」


 雅ちゃんがその挑発に乗って、昨日の再戦が始まってしまった。


 「なっ、あなたの方こそひかりちゃんとしか一緒にいるところ見たことないし、ぼっち何じゃないのかなぁ?」


 しかしゆずはちゃんは怒り慣れていないのか、罵倒の語尾がとってもぎこちない。

 震えた声でかなぁ? と言われても俺からしてら可愛いなぁ、ぐらいの感想しか出てこないぞ。

 頑張れゆずはちゃん。

 前世のではこの二人だとゆずはちゃん派な俺は心の中で応援することにした。


 「残念でしたー私、ひかり以外だって友達いますーだ」


 たぶんあんこちゃんのことだろうけど、それでも2人じゃん。

 とか思っちゃいけないよな。

 前世の友達ゼロの人間がいうことでもないけどさ。


 「雅って意外精神年齢と子どもなの?」


 先ほどから見え見えの挑発に乗ったりしてるし案外そうなのかもしれないと思ったんだが、そのまま口に出してしまった。


 「ちょっと、ひかりぃー?」


 図星なのか言い争うを中断してこっち身体を向けたと、思ったら、両手を上げ、俺の両頬を思っきりつねってきた。


 「いひゃいれす」


 つねるだけでなく微妙に頬を引っ張り痛さを追加してくれやがった。

 もしや雅ちゃんつねり慣れているのか?

 

 「むぅー。どうせ目には見えない友達とかでしょ? 今いないし」


 放置されていたゆずはちゃんがまた挑発するようなことに言い始める。

 もしかしてゆずはちゃんってかまってちゃんってやつなのか?


 「はぁー? それはあんたの方なんじゃないの?」


 子どもぽい性格の雅ちゃんは当然そんな挑発を受ければ正直に反応する。

 やっぱりこの二人見ていて面白い。


 「私にはひかりちゃんっていう親友がいればほかの友達なんてできなくたって困らない」


 おお、照れるなー。

 全くゆずはちゃんにここまで恥ずかしいセリフを言わせるひかりちゃんはいったい過去に何をやったのだろうか?

 ぜひとも知りたい。


 「あら、そう。だからぼっちなのよ」


 確か雅ちゃんのいうことは一理ある。

 人との関わりは偶然に生まれることが多いけど求めないと偶然から先に進むことは絶対にない。

 極端な例で、話しかけられても無視すればその先には続かない。

 アニメではめげない底抜けに明るいキャラが返事するまで話しかけるなんてこともあるけど、現実では絶対ない。

 などと謎の友達理論を頭で展開していると、周りの女の子達と目があった。

 睨まれた。女子こわっ。

 じゃない二人がヒートアップして周りの迷惑になっているんだ。


 「あのー、おふたりさんそろそろ周りの視線がとんでもないことになっているのでそのへんで……」


 おそるおそる言い争う二人に声をかける。

 周りの皆さん俺にやれって顔してるし今日はこれ以上問題起こして先生に怒られるのは勘弁してもらいたい。

 

 「「じゃあひかり (ちゃん)」はどっちの味方なの?」


 「えーと、………………うーん」


 またまた返答に困る質問だな。


 「「どっち?」」


 二人揃って詰め寄ってくる。

 顔近い。


 「どっちでもない」


 と答えると、カクッと二人仲良く同じタイミングでコケる。

 本当は君たち仲いいんでしょ?

 

 「同じくタイミングけこた」


 「いや、私の方がはやかったわ」


 「それはない。私の方がコンマ1秒先に動き出していたよ」


 「それこそありえないわよ。私の方がひかりの近くにいるんだから」


 「二人とも抑えて周りの人見てるから」


 「ひかりちゃんがそういうなら」


 「仕方ないわね……」


 「ふぅ助かった」


 そこからしばらく平穏な時間が続き、

そろそろ満腹になったところで、体育館の照明がすっと暗くなる。


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