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 意を決して入った共同の脱衣場にはやはりとかいうか当たり前というべきか、たくさんの女の子たちがいた。

 雅ちゃんの忠告通りやや混み始めといった具合。

 脱衣場自体はそこそこ広く、100人ぐらいなら入れるぐらい。

 まさか中身が男のやつが入っているとは思っても見るわけもなく、友達同士で仲良くお腹周りがどうだの、大きくて羨ましいだの足ほっそーと、男子がこの場で見聞きすれば鼻血必至の会話が繰り広げられている。

 まさにパラダイスなのだが、残念ながらひかりちゃん身体が正常に動作しているらしく興奮の一つもしない。

 まぁされても困るのでいいのだが。


 「ひかりちゃん、あそこのカゴ並んで空いてるみたい」


 指をさした先に見えるのは茶色い木製の棚に草を編んで作ったようなカゴが入れられた銭湯なんかでもよく見る着替え入れ。

 正直セキュリティ的にどうなんだろうとは思うが、女の子しかいないしそこまできにすることでもないかと納得。

 パッと見そのほとんどは着替えで埋まっているが、ちょうどゆずはちゃんが見つけたそこだけは空いていたのだ。

 浴場から遠いからあまり人気のない場所なのだろう。


 「ほんとだ。ラッキー!」


 「取られる前に行こうよ」


 ゆずはちゃんが歩き出した後を追って俺も歩き出す。

 ゆずはちゃんの背中を見つめながらほかの女の子たちの着替えを見ないように歩く。

 いまの俺にできる配慮はそれぐらいだ。



 カゴの前についてゆずはちゃんは何のためらいもなく服を脱いでいく。


 「よいしょっと、……んっと」


 「…………!? っ……」


 少し見えた白いへそにおどろき、とっさに背を向けて、俺も着替えを始めるようと、ジャージのファスナーを下ろす。

 後ろで好きな子が着替えていると考えを内容にしながら自分の着替えに集中する。


 (何をいまさら緊張してんだ俺。さっき着替えは経験しただろうがっ)


 集中すると今度は緊張が襲ってきた。

 欲情は抱かないが緊張は関係なくくるらしい。

 またひとつひかりちゃんの身体の俺いまの生態を解明しつつファスナーを下げ切る。

 ジャージの上をたたんでかごに入れるときているTシャツが姿をあらわした。

 Tシャツの首元からわずかにのぞくデコルテを指で一撫でする。

 はっきりと出た鎖骨ラインをなぞり、滑るようななめらかな感触に戸惑いを感じるが、意を決して、Tシャツの首に手をかけた。

 首の後ろに手をかけて、引っ張るようにして脱ごうとするが、どうしてか途中で、引っかかってしまう。

 全く身体にフィットしすぎなんだよこのTシャツ。

 愚痴を脳内に浮かべながらも、仕方なく腕から脱いで最後に頭を外す方法に切り替える。

 全く着るのも大変だが脱ぐのも大変だな。

 脱いだことであらわになったおのれの上半身をまじまじと見つめる。

 白いブラのしたには、ほっそりとして、肋骨が浮き出ない程度に細く健康的なお腹があって、触ると柔らかい。

 お腹の真ん中には小さなへそがある。

 なんか可愛いな。

 さらには都市伝説のクビレと呼ぶべきへこみが腰あたりに存在している。

 いや多分これがクビレというものなのだろう。

 男には縁のないものだし、実物を、見たことないからわからないが。

 全くほんとに男と同じだけの内蔵が詰まってるのか本当疑問だな。

 これを維持するためにはいったいどれだけの我慢が必要なのか。

 そう思いながら、さっき券売機の前で一瞬でも全種類コンプリートしてやろうなんて思った自分の殴ってやりたい。

 それどころかハンバーグなんて高カロリーなもの摂取して太らないかと心配になって来た。

 こうして常にカロリーを気にして生きる子が生まれるのかとひとりで納得する。


 「久しぶりに見たけど、やっぱり、かりちゃんのお腹無駄な脂肪ついてなくて綺麗だね」


 いつの間にかバスタオル姿になっていたゆずはちゃんが後ろから抱きつき、お腹に指を這わせてきた。

 微妙にイヤらしく上に登ってくる指に、ぞわりと、背筋に走るものを感じ、心臓がキュンと収縮した。

 これが身の危険を感じるってやつか? 


「ひゃあんっ」


 一拍遅れて、自分でもびっくりするほど女の子な悲鳴を上げで、猫のような、しなやかさで距離をとる。

 オネェ的な人なら今男らしい低い声が出るところだったんだろうかと、考えを巡らせたが、オネェとはまた違うタイプだと考えをまとめる。

 というかゆずはちゃんはいつの間に背後をとったのだろうか?

 気配全く感じなかったし。


 「てっ、もうっ、ゆずはちゃんてば、いきなり何すんの!?」


 反射的に出そうになったガラの悪い口調をなんとか押し込めて、女の子らしく怒ってみる。

 なんとなくキャラがつかめてきたようなきがするぞ。


 「ごめんごめん。ほら一緒にお風呂なんて久しぶりでつい……ね?」


 驚かせてしまったことは反省しているのか一応は謝っているが、よほど一緒にお風呂に入れるのが嬉しいのか、口調は軽く、明るい。


 「本当びっくりしたんだから。もうしないでね」


 「うんっ」


 もたもたとしているとまた攻撃されないとも限らないないので残りの着替えを一気に済ませる。

ジャージのしたと下着を脱ぎ、バスタオルを身体に巻く。

 ふんわりと肌触りの良いバスタオルに包まれ、なんだか上質な服を来ている気持ちになりつつも緊張が高まってきている。


 背中に当たる髪の毛が若干くすぐったいが、長いので仕方ないと割り切る。

女の子らしくなりつつあるが、色々と未成熟な身体なおかげで、歩く以外の違和感を感じることは無い。

転ばないように意識しながらゆずはちゃんとともに浴場へと続くドアを開けた。


 むわんっ。

 扉を開けてすぐに顔を覆う暖かさと湿度に駆け出したくなる衝動をグッと抑える。

なぜなら踏み込んだ浴場は笑い声が聞こえる程度の賑やかさしなく、どこにも走り回ったり、浴槽プロレスに興じる人の姿もなく、

ただ皆落ち着いて、1日の疲れを癒していた。

 男心の不思議なんだがどうしても浴槽や広いところを見ると駆け出したくなるのだ。本当不思議。


 しかし、こういうのを見せつけられると中学生の時点でこんなにも精神年齢に差があったのかと思いへこむ。

 女の子の成長は早いなんて聞くけどそのとおりのようだな。


 なんとかそれを表に出さないようにして石を敷き詰めたような床を歩く。

 床はお湯で濡れていて、とても滑りやすくなっている。

 浴場はいくつかの浴槽と洗い場に分かれていて、まずは洗い場で頭や身体を洗う。

ってここは男女の差はないようだ。

 ゆずはちゃんと2人並んで洗い場にすわる。

 洗い場はシャワーと蛇口が一体になっている銭湯によくあるタイプのやつで、操作には困ることはなさそうだ。

 ついに腹を決めてバスタオルを取り去った。

 この世界で初の一糸まとわぬ正真正銘の全裸になってしまった。

 なんだがいけないことをしているようなきがして鼓動が早まる。

 湿度が高いせいか息苦しさまで感じる。

 このまま考えを始めればまたグルグルと思考がループして罪悪感が襲来るのは確実なので、思考打ち消すように頭からシャワーを浴びせる。

 髪の毛が水気を含みちょうど視界を覆ってくれたので、そのまま備え付けのリンスインシャンプーを手に取って髪につける手で揉み込むように泡立てて、徐々に毛先の方に。

 よくわからないけど多分という感じで洗っていく。

 やや髪が長いので時間がかかることぐらいで特に問題なさそうだな。

 シャワーで泡をすべて洗い流す。いつもよりもだいぶ長い時間を使って、髪を洗い終えた。

 次は身体か。

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