記第四十二説 同士
町。数あるビルの屋上の一つに、一人の男が立っていた。現在のこの島の支配者であり、陣の形成者である創造者である。
「――――――全滅だ」
創造者の後ろに居る包帯を巻いた男が、その背中に語りかけた。
「全滅・・・・・・本当なの?」
隣に居る女が男に驚きながら尋ねる。
「―――ああ、間違いない」
一度女に視線を向け、再び創造者に戻す。
「予想していなかったな・・・・・・こんな結果――――」
「・・・・・・」
何を考えているのか、創造者はあくまで無言だった。
「分かっていたんだろ? ハンターが居るってことは」
「・・・・・・」
「奴らをナメ過ぎていたようだな」
「・・・・・・」
と、創造者は、ビルから飛び降りると、近くの低いビルに着地し、更に低い建物に移って下に降りて行った。
「―――――緒夏。帰るぞ」
男はその様子を見て、一息吐くと、踵を返し歩き出す。
「―――いいの? 手伝わなくても」
浮かんだ疑問を歩きながら尋ねた。
「――――正直同士が全滅したのは予想外だったが、あいつが直接戦うなら俺の出番はない。それに―――――――」
「―――それに?」
一度詰まったのを見て答えを求める様に再び尋ねた。
「―――あいつは、俺以上に仲間思いだからな」
コツコツとブーツの音が辺りに響き渡る。周りには今も生き残っている人間が探知機を見たり、仲間で雑談などしていた。
「おい。もう反応がねぇぞ?」
「ほんとだ。終わりなんじゃねぇ?」
等の会話が耳に入って来る。
こんな人間共が生き残って居ると言うのに、我が同志は誰一人として、もうこの世にはいない。親友だった心蝉も、候補では一番『屍の四肢』に適していた痲牌も、力を比べるためとはいえ、何度も儀式に参戦した武蔵と小次郎も、自分を除く死人は全滅した。
「・・・・・・・・」
やってくれたな・・・・・・ハンター共!
氷の様な心の奥底で、大きく燃え上がる業火の炎を創造者は感じていた。いま、彼の頭には霊王の事も、処刑人の事も無かった。ただ一つ、ハンター共に同士と同じ苦しみを味あわせる。
「ハンター!」
創造者は叫んだ。既に怒りは臨界点を超えていたのだ。辺りに居る人々は創造者に注目した。
「私を止めてみろ!」
あくまで叫び続ける。その様子に小言を言いながら人々は馬鹿にするような目で見続けた。
「なんだ? あいつ」
「頭おかしいんじゃねぇか?」
「やべー、あいつうける」
そんな事をもらしながら見ている目の前で創造者の姿が変わって行く。
背が高く、中年男性の様な体つきは、僅かに縮み、成人男性へと移行する。顔に涙のように流れる模様が入り、服もその体に合った物へと変わった。両腕の肘から指までが、黒く覆われ、指先は爪の様に尖っている。
と、その創造者に銃を持った二人の男が近づく。
「なんだこいつ? こいつも敵なのか?」
「でも、探知機には映ってねぇぞ」
「とりあえず撃っとくか?」
その時、創造者が動いた。
創造者が通り抜けた瞬間、男二人はバラバラになる。
女の高い悲鳴が辺りに響き渡った。
「野郎! ぶっ殺せ!」
接近戦に自身があるのだろうか、剣をもった男達が向かって来る。だが、勝負は一瞬で付いた。
創造者は、接近してくる男達を高速で移動しながら一人ずつ、バラバラにして行ったのだ。本人達はあまりの速さに、何が起こったか分からずに絶命しただろう。
「!? 奴に近づくな! 撃て撃て!」
物陰から発砲して来る者を見て、その者達の周囲に、細長い四角の陣を展開する。そして次の瞬間、陣内に炎が舞い踊った。
人間共は燃えながら逃げ惑い、水を求める。
「生き残っている人間共! よく聞け!」
物陰や辺りから恐ろしそうに自分を見ている者達に告げた。
「逃げたら殺す! 動いても殺す! この時間にこの場所に居る不幸を呪え!!」
叫ぶように言うと――――――
「派手な事をしていますね」
声がした。その主を確認するように視線を向ける。そこには、制服を着た一人の少女が立っていた。武器は刀のみ、既に鞘から抜いている。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言で互が何者かを確認し合う。
次の瞬間、創造者が動き、リオはそれを追い走る。周囲に無数の陣が展開された。
天啓達は走って移動していた。急いでリオと合流しなくては、誰もの心の中にその気持があった。と―――――
「!」
正面から歩いてくる一団があった。
先頭を歩いているのは、高一ほどの少女で着物を上品に着こなしている。その横に少女よりも背の小さいもう一人の少女が自分達の姿を確認して歩みを止めた。更に、その二人の後ろに、金髪の髪をした男と、赤茶の髪をした男、その二人よりも少し背の高い男が自分達を見て歩みを止めた。着物を着ている少女以外は皆、中世の古びた鎧を着ている。
相手の様子を見て、距離を置いて天啓達も歩みを止めた。
「! お前は!」
金髪の男を見て、天啓は天臨に手をかける。しかし、それを制するように天月の腕が前に出てきた。
「―――――彼らに敵対意思はない。そうだろ?」
天月は着物を着た少女に問いかける。少女は無言で頷いた。そして、天啓を見る。
「――――どうやら、ソレは貴方が持つべきものでしたか」
「・・・・・・・」
「ガラハッド!」
その時、後ろからさゆが声を上げた。
「! さゆ!」
ガラハッドと呼ばれた鎧を着た少女は前に出る。
「――――良かった・・・無事で」
「―――さゆの方も。ごめんね、途中で逃げたりして・・・・」
「―――ガラハッドは、『円卓の騎士』だったのね・・・・・」
その他のパーシバルやガウェインを見て、さゆはそう判断した。
「―――だまそうと思ってたわけじゃないんだよっ! その〜、中々言い出せなくて・・・・さゆはハンターだから・・・・」
「―――――いいの。貴方が無事ならそれで。友達だから」
「―――さゆ〜」
「感動に浸っている所悪いが、そろそろ行くぞ」
ランスロットが声を出した。
「海砂。私達もだ。本来の目的を忘れるな」
反対側では天月が言う。
「―――はい。それじゃあね。ガラハッド気をつけて」
「――――さゆもね」
そう言うと、一団の脇を走り抜けて行く。
「・・・・・・・・」
天啓はパーシバルを見ていた。同時に彼も天啓に視線を送る。
「決着は、今度付けるか?」
「―――――やめとくよ。待っている間が疲れそうだ」
と、同じように脇を走り抜けて行く。
「―――――御武運を」
その背中に白士は告げる様に声を出した。
「天啓ちょっと待て」
しばらく走ってから、天月が止まった。
「なに?」
「さっきの奴らを見て考えたんだが、このままだとお前は危険だ」
天月が断言するように言うと嵐道が、
「確かに、天啓は俺達と違って基礎細胞は普通の人間だからね」
「嵐道の言う通りだ。実際に、今のお前は、死人の攻撃を一発喰らうだけで致命傷だ。そこで―――――――」
と、天月は天啓の頭に手を乗せた。
「・・・・・・・あのー、天月? 何を―――――」
「静かにしていろ」
注意され、事が終わるまでじっと待つ。数秒して手が離れた。
「今、お前の体に、強化リミッターをかけた」
「強化リミッター?」
「簡単にいえば、一時的な身体向上状態だ」
天啓は軽く、拳を突き出す。
「・・・・・あんまり変わった気はしないんですけど」
「――――あくまで、頑丈になっただけだ。これで死亡確率は減ったが、一定以上ダメージが蓄積すると、それは強制的に解除されるからな。その場合、かかっているダメージが一斉にお前の体にかかる。気をつけておけ」
「―――――分かった」
「よし、急ぐぞ」
「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・」
リオは視界を機敏に彷徨わせていた。手に桜臨を持っているが体は傷だらけだった。その時、足下に陣が現れる。
「っ・・・・・!」
走り、その場を急いで離れた。しかし、走る先に次々と意志を持っているように陣が現れて行く。
右に左に避けながら回避して行くが、次に自分を大きく捉えた陣が足元に現れる。
まずい。
全力で走り、陣外に出る。しかし、そこに極太の雷が落雷すると、その威力で瓦礫ごと吹き飛ばされた。
「あ・・・・・」
地面に叩きつけられるように落下する。
桜臨を杖代わりに震えながら立ち上がろうとするが、足が上がらなかった。能力の使い過ぎで限界が来ているのだ。
両腕と膝を付きながら激しく呼吸を繰り返す。その目の前に創造者が現れた。
「―――これで気が済んだと思うか?」
悠然とした足取りで歩いてくる。
「まずは、お前を殺し、残りの奴らに貴様と同じ絶望を味合わせる―――――」
その時、風が吹いてきた。
その風は徐々に強くなると、砂塵となり視界を覆う。創造者は気づいた。軽く腕を払うと風が消え、目の前にはハンターを守るように数人の男女が存在している。
「信じろ・・・・・。俺達ならやれる!」
天啓は創造者を見ながらそう言った。
ついに次回は最終決戦です。の予定です!




