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夜光伝記  作者: 古河新後
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記第三十三説 刀士

 「――――っと」


 ガウェインは鷹化を解くと、一番高い建物の屋上に着地した。


 「――――まったく・・・骨がおれる」


 少止休憩。この創造者によって作られた檻―――――青ヶ島の地理は元々把握している。島の中央に位置する近代的な技術が残る町並みはかつて、ここにも住んでいた者達が居た証だ。他にも島の至る所に住居と言う形でそれは残っている。そして昔に比べ、島の大半は森によって埋められていた。これだけが少しだけ自分の地理とは異なっていた為、改めて調べなおしたのだ。


 「大半は終了だな。後は旦那達と合流――――――」


 その時、かなり下を歩いている白士の姿を捉えた。


 「――――っよ」


 そのまま建物を跳び下りると、翼だけを化し、ゆっくりと彼女の目の前に着地する。


 「―――――ガウェイン殿・・・・・・」


 「無事だったか。て言うか、無事じゃないとおかしいか・・・・・」


 「―――はい。残念ながら無事ですよ」


 白士は長い袖で口元を隠し優しく微笑む。


 「――――旦那とかと会ってねぇか? どうも脳内通信が通じ難いみたいでな。連絡が全く取れない」


 「私の方も探しているところです。丁度良かったです。頼みたい事があります」


 「――――旦那達を捜すんだろ?」


 「それもですが、それよりもランスロット殿達を見つけたら『ハンターと対峙しても決して交戦しないで』と、伝えてください」


 「―――ああ、分かった。・・・・・・ん? ハンターも居るのか?」


 「正確には巻き込まれただけみたいです。そして、彼らの狙いは私たちではなく、『創造者』。狙われてない以上、下手に戦う必要もありません」


 「・・・そりゃそうだけどよ。もし向こうが仕掛けてきたらどうするんだ?」


 「それは心配いりません。約束しましたから」


 と、言いきる白士。その自信はどこから来るんだよ。と言う様にガウェインは息を吐き出すと、彼女に踵を向ける。


 「―――分かったよ。それじゃ、もう行くが、お前はどうするんだ? 俺と一緒に行くか?」


 「いえ、私は少しだけ、やる事が出来ましたから、後ほど合流します」


 「そうか・・・・んじゃ、後でな」


 そう言うとガウェインは夜空に羽ばたいて行った。





 「女だ」


 「ああ。女子(おなご)だ」


 小次郎と武蔵は一歩も動かぬまま、リオを見た感想を述べた。


 「どうする武蔵?」


 「どうするもこうするも、某達がとるべき道は一つだろう」


 武蔵は車から降りる。


 「斬るか?」


 「ああ。斬る」


 と、武蔵が刀に手を掛けて歩み出した時、それを小次郎が制した。


 「俺が斬ろう」


 そう言うと、以心伝心しているかのように武蔵は歩みを止め、小次郎がリオに向かって歩き出した。





 「・・・・・・」


 リオは目の前の敵を黙認していた。相手の武器は刀のみ。これは銃などを持つ必要が無い程の剣力を持っている証拠でもある。なら、銃は役に立たない。


 と、二人の内一人がこちらに歩み寄って来た。


 背中の桜臨を手に取ると、鞘から抜く。


 「・・・・創造者が用意した武器とは違うな。お前、『ハンター』か?」


 ただ武器を見ただけでこちらの素性が分れた。偶然か・・・はたまた必然か・・・・


 「小次郎」


 その時、後ろにいる武蔵が小次郎に声をかけた。


 「どこから行く?」


 「・・・・そうだな」


 小次郎は一目リオを見ると決めたように、


 「まずは、皮一枚から行くか」


 そう言った。


 スッと柄に手をかけると、横に足を動かす。


 それに合わせるようにリオも移動する。


 次の瞬間、戦いは唐突に始まった。


 小次郎の音速に近い抜刀がリオに襲いかかる。彼女は身体をそらして、それを回避する。しかし、反撃の暇は無かった。それよりも早い斬撃が次々と襲いかかって来たからだ。


 「そらッ! そらッ! そらッ! そらッ!」


 空気さえも切り裂く速度の刀は、触れればアッサリと骨まで断ち切られてしまうだろう。


 なんとか見切り、避し続けるが徐々にその速度は速くなっていく。


 遂に見切りきれなくなった斬撃が、側面からリオの体に迫った。


 キィン。


 瞬時に桜臨を側面に移動させ斬撃を受けるが、鉄と鉄の音がしただけでそこに止まった刀は無かった。


 「っ・・・・!」


 咄嗟に後ろに跳び退いた次の瞬間、先ほどまで顔のあった位置を小次郎の刀が通過する。


 ザザーっと後ろに滑りながら後退すると、頬に僅かな痛みが走った。そこを触れてみると、一筋の血が流れている。


 「・・・・・ツバメ返し」


 刀を振り抜いた状態で停止させている小次郎が呟くように言う。


 全く見えなかった。刀を受けた時の違和感に気づかなかったら、殺られていただろう。


 「狙い道りだな小次郎。次はどこだ?」


 武蔵は小次郎に聞こえるように訊く。


 「次は髪だ。髪を切ろう」


 楽しむようにそう言うと高速でリオに接近する。


 既に抜いているが、再び高速の刀が襲いかかって来た。先ほどと全く同じ事が繰り返される。だが、リオは気づいていた。この速度は見切る事は困難だが、たった一つの斬撃だけは違った速度を持っている事を。そして、その一瞬こそが勝敗を分ける。


 リオは、上から来た小次郎の刀を桜臨で受けた。


 「そおら! 行った!」


 小次郎は、受ける感触を感じた瞬間、刀を返し、上に撥ね上げる。だが、そこにリオの姿は無かった。


 「!?」


 リオは刀を受けると同時に次の斬撃を見て回避運動を取るのではなく、滑るように小次郎の脇を抜けると、その際に両足を切り裂いた。


 「クオオオッ!」


 両足を切られ、バランスを崩して前に倒れる小次郎の後ろに、滑り込んだリオは唐竹に桜臨を振り下ろす。


 背後から縦に両断された小次郎は倒れる前に塵となった。





 「・・・・・・」


 ヒュンっと一度桜臨を振るとリオは武蔵を見る。


 「・・・・・・フフフ・・・ハハハハハ!」


 途端に口を開けて笑い始めた。


 「――――遂に敗れたか小次郎! どんな状況にせよ、それは敗北と某は受け取るぞ!」


 武蔵は立ち上がると、リオに歩み寄る。


 「・・・・貴方達は、仲間じゃなかったんですか?」


 「それは愚問と言うものだ。某達は生前より戦い続けてきた」


 そして、ある程度の距離を置いて歩みを止めた。


 「そして、遂に証明する事が出来る」


 武蔵は刀を抜くと上段に構える。


 「では・・・・・参る!」


 間合いにリオを捉えると、刀を振り下ろす。


 リオは反撃を考えずにその一撃を避けた。上段から振り下ろされた際の剣圧が尋常ではなかったのである。刀の位置に値するアスファルトが、滑らかに断ち切られている。


 武蔵は刃を横に向けると、リオに振り上げた。この攻撃も彼女は避けることしか出来ない。


 小次郎は長刀を生かした高速剣技だったが、武蔵は力を重視した剣力剣技であった。まともに受ければ桜臨ごと叩き斬られかねない剣圧だ。


 力強い刀が次々と襲いかかる。リオは反撃の機会を窺うが、そのような様子はまるでない。


 これだけは使いたく無かったのだが・・・・・背に腹は代えられない。


 次の瞬間、上段から振り下ろされた刀をリオは止めた。


 僅かに膝が曲がるが何とか受け止める。


 だが、武蔵は既に次の手を用意していた。リオも少し遅れてそれに気がつく。武蔵は刀を片手で持っていたのだ。もう片方の手は鞘に納まっている小太刀に掛かっている。


 「二天一流!」


 小太刀が抜かれ、勢いよく彼女に襲いかかる。


 だが、リオはそのさらに先を読んでいた。


 刀を止めている桜臨を手から離すと、その場に屈む。


 「なに!?」


 武蔵の声とともに小太刀は桜臨とリオの間を通り抜ける。武蔵の刀によって垂直に向きを変えた桜臨を空中で逆手に掴むと、そのまま切り上げた。


 刀を持っている腕が鋭利な断面を見せてアスファルトの上に転がる。


 リオは刀を瞬時に持ち替えると、小太刀を持っている腕も切り裂く。


 「ぬぅ!」


 そして、体を回転させると、そのまま武蔵の胴体を二つに両断した。





 森。更に深い森林。


 「・・・・・・・・」


 天月はまた森に居た。着物の女と別れた後で町を目指した結果、再び森に入らなくてはならなくなった。その為、潔く侵入したのは良いが、最初の時のように迷ってしまったのだ。


 「ここは・・・どこだ?」


 全く景色が変わらない風景を既に三十分は見続けている。


 その天月を熱源で見ているモノが居た。暗い空間でも確実に相手の姿を捉えるには最適な視野である。歩いている天月を的確に捉えると、視野の上から赤い三本の線が三角を作るようにロックする。


 「・・・・・・・・妙だ」


 天月は何か違和感に気が付いた。辺りには、敵の姿もなければ気配もしない。だが、身体全体が自信に敵がいると訴えているかのように高揚している。何か変だ。


 スーっと、ウィンチェスターを私法空間から出す。


 そして、動物的本能で横に跳んだ。


 その時、元居た場所に何かが撃ちこまれた。


 爆発。閃光と炎で、暗い森が一瞬だけ明るくなる。


 「・・・・やはり敵か」


 止まることなく木々の間を走り続ける。後方に次々と敵の攻撃が撃ちこまれていた。


 「だが、同じところから何発も撃つとは、素人か」


 ポンプアクションで弾丸を起こすと、攻撃を行っている木の上に一発放った。


 重い音がして発射された弾丸は予想通りの場所を抉る。


 その瞬間、敵の姿が現れた。正確には、まとっている保護色(ステルス)迷彩が強制的に解除されたと言うところだ。


 「いいモノを持っているな」


 敵は、腕に着けているコントロール盤の様な機械を操作し、機能が故障したかを確認している。


 天月はもう一発撃った。


 敵は見えていると悟ったのか、姿を消さずに持っている兵器で攻撃してくる。


 「小型零子カノンか・・・・・・・・」


 撃つと同時に木の陰に隠れ、冷静に相手の武装を把握する。


 敵は、自分の姿を見失ったのか、零子カノンを止めると、木から飛び降り、次は何やら円盤状のモノを取り出した。


 「・・・・・・なんだ?」


 一度振ると、花びらのように鋭利な刃が現れた。それを勢いよく横向きに投擲する。


 音を立てながら飛んで行くソレは木に触れると、容易く断ち切った。


 「!?」


 円を描くように回転しながら次々と木々を切り裂いて行く。


 「――――冗談だろ」


 自分が隠れている木も切断された。


 戻ってきた武装を慣れた手つきで止めると、木の向こうに熱源を発見する。それをロックすると零子カノンを発射した。


 「くそっ!」


 天月は、残った木の陰を経由しながら撤退を開始した。不利すぎる。武装面にフィールド状況。相手には、こちらがはっきりと認識されている。更に、自身の能力がまるで相手に作用しない。手榴弾を二、三個背後に放流すると走ってその場を後にした。

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