記第二十九説 騎士
炎が目立つ光景だった。
見えている景色で火の付いていない場所は無かった。
円形に造られたレンガの壁が高熱を帯びる。
先遣隊の掲げていた旗が、燃えながら二人の目の前に落ちて来た。
強大な足。
天を覆う翼。
口の間から洩れている炎。
濁りの無い眼を持った本能で突き動いている理性の無い魔物。
「まいったね・・・・一瞬、走馬灯が見えた」
こちらを睨んでいる龍を見てガへリスは慣れた様子で言った。
「・・・・・・。なら、お前は確実にここで死ぬな」
後ろから声が聞こえ、そちらに視線を送ると、パーシバルが歩み寄って来る。
「えらい余裕だな。お前には見えないのか?」
「見えん」
パーシバルは腰にある洋剣を抜く。
「―――勝てるか?」
ガへリスも同じように持っている鞘から剣を抜いた。
「負ける気はない」
自分達の何倍もある龍を見て全く怯むことが無いパーシバル。
「そんじゃ――――――行くか!」
「・・・・・」
二人は火を吐く龍に向かって走って行った。
ギッィン。
金属と金属の力強く触れ合う音が夜の森に響き渡る。
ガへリスの攻撃を鞘に直した状態の剣で受け続けるパーシバル。
振り下ろしてくる斬撃を剣で受け流す。ガへリスはすかさず流された反動を利用して回し蹴りをかけた。
それを読んでいたパーシバルは屈んで避けると、剣を抜く。
ガへリスは、咄嗟の反応で剣の範囲外に跳び下がる。
一定の距離を置いて対峙する二人。
一時の沈黙が両者の間を支配する中、ガへリスが口を開く。
「――――剣筋は変わらんなぁ」
「・・・・・・」
「得意のだんまりか・・・・・相変わらずだよお前は」
パーシバルは鞘に剣を直す。
「・・・・・どういうつもりだ?」
ガへリスは怒りの表情で見る。敵の前で抜いた得物を直すと言う事は、これ以上の戦闘は無意味と言う侮辱の証であった。
剣を腰に構え、逆手で握る。
「―――抜かない気か・・・・・。剣を扱う者として、貴様には失望したぁ!」
一直線にガへリスは走ってく来た。自分も合わせて構えた状態で走る。確かに、この剣技は
相手を侮辱する剣だ。だが、それ以上に――――――
次の瞬間、高速で抜かれた剣はガへリスが振り下ろす前に、その胴体を切り裂く。
「・・・・・・なんだ? 今のは」
パキッと鎧に亀裂が入ると砕け落ちた。刃の通った場所が斬られ血が流れている。
「・・・・・・新しい剣技を取り入れたみたいだな」
と、ガへリスがパーシバルに振り返ったその時、
「・・・・何だ・・・」
口から血が流れていた。それだけではなく、目から涙のように血が流れ出る。
「!? 何だ! 何をしやがった!?」
血の涙を流しながら問う。
「この『深紅の剣』には過去にこの剣で殺された人々の『嘆き』が呪いとして封じ込められている。それを貴様に、『呪術』として植え付けた」
ガへリスが膝をつく。
「く・・・・クソがぁぁぁぁぁ!」
次の瞬間、全く予想していなかった事が起きた。
ガへリスの姿が人型から異形のモノへと変わって行く。自分を見下ろすほどの体格。電柱程の剛腕。収納されているような鋭い牙。目にあたる位置に二つの光のように丸く光っていた。
まさに怪物。姿が変わったからか、呪いも解除されたようだ。
「――――――第二回戦と行くか・・・・」
ガへリスが少し濁った声帯で言う。
パーシバルは再び剣を構えた。姿が変わろうと、もう一度斬りつける事が出来れば、今度こそ確実に仕留められる。
「――――行くぞ」
その瞬間、パーシバルは後ろに跳び離れた。元居た場所を瞬時に間合いを詰めて来た拳が叩き込まれる。速い。砕ける土を軽く浴びながら尋常でない速さを見きるので精一杯だった。
「逃がすかァ!」
ガへリスは着地した地面を力強く蹴り、再び一瞬で間合いを詰めた。
「!?」
空中で無防備となっているパーシバルにその拳が叩き込まれる。
「っ・・・・・」
なんとか剣を盾にして、直撃は防ぐが、あまりの威力に体が吹き飛ばされた。
木々を破壊しながら茂みの奥に消える。
「フハハハ! 図体で能力を判断するなよ。貴様の攻撃はもう当たらん!」
と、茂みに向かって歩みを進める。その時、茂みの中から青い狼が牙を向けて飛び出してきた。
狼の顎は腕を捉え、鋭利な牙が食い込む。
「―――なんだ! こいつ!」
殴りかかると狼は牙を離し、下に逃れた。
「こいつ・・・・・」
威嚇する様子も無く自分を見ている狼を見る。
次の瞬間、狼は弾かれるように突進してきた。
「ちぃ!」
巨大な拳で正面から来る狼を殴りかかる。その時、狼は姿を変えた。獣から人型へ――――
「!? パーシバル!?」
パーシバルは、突き出してきた拳を曲芸師の様に回避すると、ガへリスの正面に着地し、剣を抜いた。
「・・お前の騎士道が・・・・俺より勝っていたようだな・・・」
元の姿に戻ったガへリスは、仰向けで全身から血を流しながら見下ろしているパーシバルに問いかけた。
「・・・・・」
「・・・負けた・・・・」
「―――意味の無いことだからだ」
パーシバルが静かに口を開く。
「俺達の・・・・・行動が意味の無いこと・・・・だと・・・!」
あの時、自分はランスロットに加勢し、ガウェインに討たれた。再び目を覚ますと、モルドレットが『死人』と呼ばれる者達と手を組み、再び騎士として生きないかと持ちかけて来た。
俺は、騎士として生きる事を誓った。だが、アーサー王にではなく自由な騎士としてだ。
「追う必要も追われる必要も無かったはずだ」
「・・・・・・・・」
「何故、こんな事になった? 何故、我々が戦わなくてはならない?」
「・・・・間違っていたのかもしれないな・・・・俺達は」
そう。間違っていたのだ。自分達が居なければ彼らが追う必要は無かっただろう。
「・・・・・・・パーシバル」
「・・・・・・・」
「他の奴らも・・・・・・お前たちの手で、終わらせてやってくれ・・・・・」
「・・・ああ。そのつもりだ」
その言葉を聞くとガへリスは笑みを浮かべた。
「上出来じゃねぇか・・・・・・・最期に・・・・仲間がそばに居る人生なんてよ・・・・・・」
戦場で生きるものとして、死は選べないモノである。
「・・・・先に逝っててくれ」
「ああ・・・・・そうさせてもらうよ。少し疲れたからな・・・・・・」
ゆっくりと死期を迎えた身体が塵になって行く。
「―――我らの身! 再び円卓の旗の下に!」
パーシバルは剣を抜くと夜の月に掲げた。
「・・・・・旗の・・・・下・・・に・・・・」
ガへリスは呟くように言うと、夜に溶けて行った。
「・・・・・・・騎士が散ったか・・・」
全てが闇に包まれ、何所に立っているかも分からない異空間に創造者は居た。
「―――本当に大丈夫なのか? アンタの部下は」
彼に姿が見えない闇の中から声がかかる。
「部下ではない。同士だ」
「―――と、失礼。だが、まだ足りないんだろ?」
「―――候補は既に四人殺られた。偶然か・・・・はたまた油断したのか・・・・どちらか分からぬが、騎士を失ったのは計画外だった。まさか、化の者を仕留める程の『力』が人間共にあったとはな・・・・・」
深刻な面持ちで事態の状況を語る。
「だが、抜かりは無いんだろ?」
と、楽しそうな口調。
「無論だ。私の作品を囲いの中に放っておいた。騎士の変わりは果たしてくれるだろう」
「そうかい。一つ聞きたいんだけど、『奴』はどうしてるんだ?」
その言葉に創造者はからかう様に口を動かす。
「―――気になるか?」
「当たり前だろ。こんな状況になれば気にならない奴はいないさ」
「フッ―――二度と戻る事はない」
「――――それはいい事を聞いた」
と、その場を去る気配に創造者は、
「―――どこへ行く?」
「―――色々と挨拶だよ。それと、アンタの作品とやらがどれほどのモノか見ておきたくてね」
「・・・・・交戦するのは構わんが、破壊するのは止めてもらおう」
「―――分かってるよ。それに、早い段階で、『究極の一』を体現しておこう」
気配が消える。
「・・・任せるぞ。天啓」
自分以外、誰も居ない空間で呟くようにそう言った。
リオ「こんにちわー。スゴ腕ハンターの新月リオでーす。今回は珍しく夜光伝記の次回予告でーす。わー、パチパチ(拍手)」
天月「何がパチパチだ」
リオ「おーっと。早速今夜のゲスト、スズちんの登場ですよっ!」
天月「ん? なんだ私はゲストだったのか?」
リオ「もちろんですよ。だって本編で活躍しているのってまだ、あたし達だけじゃないですかっ!」
天月「いや他にも、ちゃんと活躍しているぞ。『円卓の騎士』とかな」
リオ「なるほどーって、それは敵でしょ!」
天月「敵でも味方でも平等に評価するのが私たちの職場だろ? まぁ、その場合は強いか弱いかだけどな」
リオ「出ました! 賢者発言! そこまで来ると今度のセリフは、弱い奴には興味がないぜ。とか、言ってみたりするんですよね(笑顔)!」
天月「いや・・・(汗)。別にそんなことは言わないが、基本的に異端者は殲滅対処だ」
リオ「うぁ・・・あたしは今とても怖い言葉を聞いてしまった気がしますよ」
天月「お前も同じだろ。だいたい、何で急に次回予告なんてするんだ?」
リオ「待ってました! 質問コーナーですね!」
天月「別に・・・そう意味じゃないんだが・・・・」
リオ「えーっと、ぶっちゃけた話、今回だけ極端に文字数が少ないので、緊急に次回予告コーナーを立ち上げたってことらしいです」
天月「・・・・・・・リアルだな・・・」
リオ「はい・・・・正直・・・次回予告してませんしね・・・・(元気率↓)」
天月「と、とりあえず。次回予告だけはしておこう(汗)」
リオ「そ、そうですね(汗)。次回活躍するのは、なんと意外なあの人!」
天月「誰だ?」
リオ「ズバリッ! その名前は――――」
天月「・・・・・・」
リオ「―――です!」
天月「おいっ!」
リオ「ん? なんですか?」
天月「肝心な部分だけ聞こえなかったぞ」
リオ「えーっと、少し電波状況が悪いみたいですね」
天月「次回予告にもならんな」
彊「ならば俺と殺り合うか?」
リオ「!?(びっくりして振り向く)」
天月「!?(ウィンチェスターを構える)」
彊「さすがは、SAR、反応が速―――――(バンッ)ガハッ!―――(ドサッ)」
天月「殺ったか?(倒れた彊を覗き込みながら)」
リオ「ちょっ、ちょっと! スズちん!(彊を指差しながら)」
天月「なんだ?(平常心)」
リオ「せめて、最後まで聞いてあげましょうよ。小説内での扱いも使い捨てでしたし、かわいそうですよ」
天月「・・・・・。そう考えると少しだけ罪悪感があるな・・・。とりあえずこのコーナーを一旦打ち切るか。こいつ(彊)を始末しなくてはな」
リオ「うわぁ〜、表情を変えずに本気で言ってる所が怖い。と、言う訳で、次回予告してませんけど、次回予告を終わりまーす(笑顔)。次説もお楽しみにっ!」
収録終了後。
ガウガウッ! ケタケタケタッ
(スズちん! 左です!)バンバンッ!
(くそっ! 最後の悪あがきをっ!)バンバンッ!
(くっそー、こんな世界(小説)みとめねぇーぞ!)




