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夜光伝記  作者: 古河新後
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記第二十五説 敗者

 「どこに行くのかしら?」


 「挨拶だ。お前、『創造者』にちゃんと顔を会わせてないだろ?」


 緒夏は、煙により見えにくい床を歩いていた。床もされど、その空間は見慣れた者でなければ、ずっと同じところを歩いている感覚に陥るほど景色は変わらなかった。ただ、並んでいる柱のみが唯一の道しるべである。


 「正確にはあちらの都合が合わなかっただけよ」


 先導するように前を歩いている火染の背中に言う。


 「――――ま、そう言うな。『創造者』も色々と忙しかったんだ」


 「忙しいかどうかは本人じゃなくて、他者が見て決めるものでしょ?」


 「――――それも言えてるな。だが、本来の魔道者が数十年かかる事を、あいつは一年と半年で終わらせた・・・・・」


 「それが、必然でしょ」


 「・・・・・それは言うなよ」


 と、会話をしている内に広間に辿り着いた。そこには複数の者達が存在していた。


 「なんだなんだ? 『炎塵』。女連れか?」


 段差に腰を掛けている、右目に眼帯をした男がからかうように言う。


 「――――少なくともお前よりは役に立つぞ。痲牌(マハイ)


 薄らと笑みを向けながら挑発する。


 「―――それじゃ、今度の儀式はその女に護ってもらえよ」


 クククと笑いながら更に言い返す。その言葉に、


 「聞き捨てなりませんわね。その言葉」


 緒夏が反応した。


 「何が聞き捨てならないんだ? お嬢さん?」


 再び相手をからかう様に言う。


 「この方は、私よりも立派な方です。貴方なんかとは比べものにならない程の」


 「―――へぇ〜」


 その言葉に痲牌は立ち上がる。


 「そこまで口が叩けるんなら、あんた自身にもそれ相当の力があるのか?」


 「少なくとも、貴方よりは持っているつもりです」


 火染は止める様子はない。負けず嫌いは緒夏の悪い癖であるが、こうなってしまえば止めても無駄である事も知っていた。


 「じゃあ、試してみようぜ。俺とお前、どっちが先に殺られるか・・・・・・」


 殺気が二人の間を駆け回る。と、


 「他陣形成内での戦闘は、所持者の任意が居る」


 心蝉が柱の裏側から現れた。


 「ルールが守れない奴は、ただの戦闘狂だ。どうしてもやりたいなら外でやれ。外で」


 視線を火染に送る。


 「火染。お前も見てないで止めろ」


 火染は煙を吐きながら一言。


 「正直、緒夏がどこまで強くなっているのか、見ておきたかったんだが・・・・お前でも真面目な事を言うんだな」


 「―――――上呪として『死人』内の秩序は大切だと考えている。『霊王』が居ない今なら、なおさらだ」


 「『霊王』は次の満月に我々の前に再び立つ」


 どこからか声がしたかと思うと、段の上に創造者が姿を見せていた。


 「―――緒夏殿。御助力、感謝する。だが、人間を我々の儀式に加えるのは前代未聞で有る故、いくら上呪の推薦とは言え、その実力を疑う者は失礼ながら、居ない訳ではない」


 「―――どのようにすれば力を証明できるのかしら?」


 「俺と殺り合ったらだ」


 痲牌が声を上げた。


 「いいよなぁ? 『創造者』。使えねぇ奴を儀式に組み込んでも、無駄死にするのがオチだぜ」


 「俺も賛成だ」


 火染も同意する。


 「ここらで、『暁家』がどれほどの力を持っているのか、俺意外に知っておくのも良いと思う」


 「―――――緒夏殿は、いかがなされる?」


 最後に本人に同意を尋ねた。


 「負ける気はしませんわ。どなたが相手でも」


 痲牌を見ながら薄ら笑みを浮かべる。


 「ならば、この場の戦闘を許可しよう。ただし、負けと私が判断したらその時点で終了だ」


 他の者が端に寄り、広間の中央に一定の距離を置いて、緒夏と痲牌が立つ。


 「ハンデだ。右目は使わないでやるよ」


 挑発するように右目を指差す。


 「なら、私も、足以外は使わないわ」

 

 「あ?」


 痲牌は小馬鹿にした様な笑みを見て額に青筋を立てた。


 「餓鬼の口喧嘩をしに来たのか? お前達は。さっさと殺し合え」


 腕を組みながら火染の横で柱に寄りかかっている心蝉はつまらなそうに言う。


 それが合図となったのか、二人は急接近すると殺し合いを始めた。


 痲牌の拳を軽いフットワークを使い避ける緒夏。


 「どうしたぁ!? 逃げるので精一杯かぁ!?」


 余裕の表情で攻め続ける痲牌。しかし、勝負は唐突に終わりを告げた。


 頭の位置に繰り出された緒夏の回し蹴りが痲牌に直撃する。


 「がっ・・・」


 自分が優勢だと思っていた痲牌は、突如襲いかかってきた攻撃になす術もなくまともにくらった。


 更に緒夏は体を反回転させると蹴り飛ばす。


 「ぐっ!」


 痲牌は柱に当たると煙の中に倒れた。


 「ごめんなさい。少し強すぎたようね」


 起き上がろうとしている彼に向って勝者の言葉が投げつけられる。


 「やろう・・・・・」


 痲牌は眼帯に手をかけた。しかし、横から制止するように鞘に入った刀が突き出てくる。


 「・・・・退けろよ。佐々木・・・」


 睨みを効かせながら刀の主に敵意を飛ばす。


 「フフフ・・・見苦しい。見苦しいよ痲牌・・・・・ククク」


 「お前の負けだ。痲牌」


 結果を見た、創造者が言う。


 「チッ・・・・・」


 痲牌は眼帯から手を離した。


 「改めて歓迎させてもらおう。緒夏殿」


 創造者は緒夏を見ながらそう言った。





 白い床、白い壁、白い通路。


 度々、患者や看護婦などとすれ違う。こんな光景は見慣れたものだ。


 いつものように、リオの病室に向かっている天啓は変わらない風景を見ながら、病院はとても退屈な場所である事を再認識した。


 「・・・・・あいつが目を覚ましたら退屈過ぎて死ぬかもな」


 苦笑しながらそんな事を呟く。


 だが、それと同時に思い出すのは学校で聞いた天月の言葉・・・・・


 リオは、もう目を覚まさないかもしれない。


 その口調は、母の死を医師から知らされた時と同じものだった。


 彼女が言うには、人が死ぬという事には二つの条件があるらしい。


 一つは、人が人を殺すように、人体が稼働する際に支障を起こす要所を負傷すること。


 もう一つは、魂に何らかの支障を来してしまうという事だ。


 後者の方は、普通の人間では行う事が出来ないが、自分の持つ『影』や、元々人に害をなさないモノを攻撃的な形に、作る事でそれらのモノは、実態に関係なく望んだモノを破壊する事が出来る。


 リオの場合は、人に害をなさない『人の作りだした光』をさゆが集めた事で、彼女の身体を貫き、その魂を損傷させてしまったという事だ。


 魂が傷つけば、それらに精通している全ての身体機能が一時的に失われる。魂は破損すると意識がなければ、自然治癒はしない。このまま意識が戻らないのならば、リオは死んだモノと同じであるのだ。


 天月が言いたい事は、最悪の事態の事も考えておけと、言うものであった。


 「・・・・・・・・・」


 病室の前で天啓は止まった。だが、その躊躇いは一瞬だけ。そしていつものように病室に入ると、中で話声がした。


 二人の人間が会話をする声。


 「―――難しいなぁ・・・・・」


 「どんな力でも別の事に使うのは、とっても難しい事なの。ほらっ、もう一回」


 白いカーテンの向こうでさゆの声がした。もう一つも女声。彼女の他に誰か来ているのか?


 「さゆ。お前も見舞いに―――――――――」


 カーテンの向こうに移動すると、そこにさゆが居た。そして――――


 「――――天啓君」


 彼女は半身を起し、こちらを見ていた。


 「・・・・・・・」


 「――ただいま戻りましたよっ! 新月李桜、ここに復活ですっ!」


 片腕を突き上げて元気に言う。天啓は無言でリオを抱きしめた。


 「あ・・・・・」


 「・・・・よかった・・・・リオ・・・・本当に・・・・よかった」


 涙を流しながら震える言葉を彼女に伝える。


 「・・・ごめんなさい。心配掛けちゃいましたね」


 リオも彼を抱きしめると、優しくその頭に手を置いた。





 「――――まったく。目が覚めないかと思ったぞ」


 その後、連絡を受けた天月も病室に現れ、安堵の息を漏らしていた。


 「スズちんにも、心配掛けちゃいましたね」


 「・・・・こんなところで死んだら、SARが馬鹿みたいに見られる。身内の事とは言え、自分の身も考慮して動け」


 と、注意と睨みをきかせて言う。


 「・・・・気をつけますよ。命は大切ですから。それに――――――」


 リオは、少し離れたところで能力の練習をしている妹に視線を移す。


 「――――守らないといけないから・・・・」


 優しい眼で見守っていると、さゆが知恵の輪が解けない子供の様な目で歩み寄って来た。


 「――――お姉ちゃん」


 「どうしたの?」


 「――――光を集める事は出来るけど、形を作るにはどうすればいいの?」


 「―――うーん。あたしも専門外だからなぁ・・・・・・・」


 悩んでいる姉妹に天月が、


 「同じ能力を使う奴に聞いてみたらどうだ?」


 「――――でも、そんな人が居るわけ――――」


 その時、天啓が入って来た。


 「――リオ、ジャンプが売ってなかったからサンデーにしたぞ」


 「・・・・・・・・・・・。あー! 居たー!」


 リオとさゆは同時に声を上げる。天月はやれやれと溜息を吐いた。





 「俺達はもう帰るぞ」


 薄暗くなり外灯の光が目立つようになってきた時間帯。天啓はもう帰る事にしたのだ。


 「じゃあね。お姉ちゃん」


 「二人とも、気をつけてね」


 彼の隣に居るさゆを見ながら、リオは手を振る。


 「天月はどうする?」


 「私はもう少しリオと話をしてから帰る」


 「―――分かった」


 「天啓さん。行こー」


 「ああ。じゃあなリオ。また明日も来る」


 「ジャンプ。よろしくお願いね」


 「分かったよ」


 さゆに腕を引っ張られながら病室を後にした。


 「・・・・・あんな楽しそうな海砂は初めて見たな」


 二人が見えなくなってから天月が言う。


 「あれが本来のあの子なんですよ」


 「――――いい事だ」


 「・・・・・何か、言い残したことでもあるんですか?」


 リオは唐突に本題に切り替えた。


 「――――街でおかしなことが起こってる」


 深刻な口調で切り出す天月。


 「海砂の検索報告では、三日前に街で確認できた死人の数が、今となっては三分の一以下に激減しているそうだ」


 「―――――あたしと天啓君はそんなに倒してませんよ。あえて多かったと言えば廃工場で、始めて『陣』を見つけた時だけですね」


 「私もだ。下手に動けば相手にこちらの動きを悟られる危険があったからな。慎重に動き、なるべく死人の掃討は避けていたんだが・・・・・・」


 「―――――あたし達、以外での第三者の可能性は?」


 「可能性的に考えられるのは、蓋来狭ビルでお前達が交戦した『円卓の騎士』の一人パーシバル卿だな。――――だが、外念波の痕跡は海砂にも念入りに調べてもらったが、全く零だった」


 「と言う事は、何もせずに死人達が、この街を去っている?」


 「―――そう言う事になる」


 リオは自分の持てる限りの情報を整理して、答えを導き出そうとしたが、どう考えても解く事が出来ない。


 「・・・・・不気味ですね」


 「嵐の前の静けさじゃなければ良いんだが・・・・・・」


 お手上げです。と言わんばかりのその言葉に、天月もため息をつきながら同意した。





 光が夜を泳いでいた。


 上下にくねりながら進むその光はまるで意志を持っているようだ。


 一定の高さで止まると、今度は細長く変形を始めた。ゆっくりと針のような形になって行くと次の瞬間、砂山が崩れるように集束を失った光が細かく拡散して行く。

 

 「あっ・・・・・・・・」


 歩きながら能力をコントロールしていたさゆは、分裂した光を見ながら声を上げた。


 「――――まだイメージが弱いな」


 同じく、その様子を歩きながら見ていた天啓は感想を漏らす。


 「もう少しだったのに・・・・・・」


 落胆する彼女を見ながら天啓は一息吐くと、


 「――――とにかく、望んだ形にコントロール出来るまでは大きく多用しない方がいい」


 そう言うと、天啓の影が変化する。


 槍状の突起物から、剣の様な姿に変わり、犬や動物などを形作ると、最後は文字となった。


 「わぁ・・・」


 自分と比べ、自由自在に作り変えている影を見てさゆは声を漏らす。


 「まぁ、俺が『影』は、お前の『光』に比べて無尽蔵にあるわけじゃないからな。限られたものだからこそここまで細かい動きが出来る。その点を比べると、さゆは無限に近いモノをコントロールしようとしているんだから、まずは小さいモノから徐々に積み上げていったらどうだ?」


 「そうですね・・・・・」


 再び彼女の正面に光が集まり始める。しかし、先ほどよりも短い時間で消失した。


 「あ・・・・・」


 その時、足に力が入らなくなり前に倒れる。


 「とっ――――」


 そのさゆを天啓は前から支えた。

 

 「―――――ごめんなさい。急に力が・・・・・・」


 「・・・・もうすぐ寮だ。そこまで背負ってやるよ」


 「い、いいですよ! 一人で歩けますから――――」


 歩み出そうとすると再び前に転倒しそうになる。


 「人の親切は素直に受けておくもんだ」


 支えながら態勢を変えると彼女を背負い歩き出す。


 「わっ・・・・」


 「代わりに鞄を持ってくれ」


 「あ・・・・はい・・」


 さゆは慌てて受け取ると、恥ずかしそうに頬を赤らめた。


 「・・・・・・本当に頑張ると自分の事が見えなくなるんだな」


 「え・・・・・あ、はい。すみません・・・・」


 「――――謝る必要はない。俺の善意だ」


 「・・・・・・・・」


 しばらく無言で歩くと寮にたどり着く。


 「もう、大丈夫です」


 そう言うとさゆは自分で背中から降りる。


 「本当に大丈夫か?」


 「――――天啓さんも心配性ですね」


 ほほ笑みながら天啓を見た。その笑顔を見た天啓は、以前彼女が見せた笑顔が誰かに似ていると思った事を思い出した。


 そうか、あの笑顔は・・・・・・


 「? どうしたんですか?」


 見つめられていたさゆは不思議そうに尋ねる。


 「――――いや、何でもない。じゃあな、また明日」


 「はい」


 帰って行く彼の背中をさゆは笑顔で見送った。





 自分の歩く音だけが妙に強く響く。夜道には天啓しかいなかった。


 他にある物と言えば街灯や、白いガードレール。


 いつもの雰囲気が漂う帰路を慣れた足取りで進んでいく。


 後は角を曲がれば党鹿野荘だ。そう思ったその時、


 「・・・・・・・・」


 足を止めた。


 何かが目の前に居た。


 ソレは私服を着た一般人に見えた。


 街灯が生み出す不気味な光下にソノ男は立っていた。


 男と眼が合った。


 天啓は鞄を捨てると、ナイフを持ち男に向かって走って行った。


 理屈は分からない。


 体が、脳が、血が、まるで悲鳴を上げるように叫んでいた。


 コワセ・・・・・・・コワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセ。


 コロセ!


 走りながらナイフを持ちかえると男に向かって突き出す。


 男はそのナイフを握るように受け止めた。


 「―――流石だ。血に衰えは無いと見える」


 「・・・・オマエハ・・・・・」


 受け止めながら男は笑みを浮かべると、


 「私は、『創造者』だ」


 「!?」


 その言葉を聞いた天啓の眼が青く変わる。そして男の魂を見た。暗く濁っているわけでもなく、不可解な色をしている訳でもない。滅ぶという事を知らない、黄色く彩られた魂だった。


 天啓は足を使い強引に創造者から離れる。


 「私に用があったのではないのかな?」


 楽しむように創造者は声を出した。


 「・・・・・お前を・・・・殺す・・・・」


 青いその眼を創造者に向ける。


 「―――――ククク・・・・懐かしい・・・懐かしい感覚だ。『恐怖』・・・・まさに我々が忘れかけているモノ・・・・・」


 「・・・・・・・・」


 天啓は瞬時に距離を詰めると魂を狙う。


 創造者は勢いよく右手を左に払った。すると、ナイフは回転しながら横に飛んで行く。


 勝った。


 その動作を見た天啓は勝利を確信した。ナイフは囮、目の前にあるモノを無力化させ、攻撃手立てがないと油断させた、その瞬間に本命である『影』で魂を突く。


 創造者は今隙だらけだ。確実に殺す。


 影が、創造者に向かって突き刺さった。


 「・・・・・・・」


 静寂が辺りを包む。その時、


 「ククク・・・」


 創造者が動いた。


 「・・・・お前は死んだ。魂を壊した。間もなくこの世界から抹消される」


 「どうかな?」


 「・・・・・・・」


 創造者は相変わらずその場に存在している。


 「私の魂は、本当に壊れたのかな?」


 天啓は再び創造者の魂を見た。


 「―――――――なに!?」


 その魂は健在だったのだ。次の瞬間、地面が光ったかと思うと、陣が現れた。


 危険と判断するとその場を跳び離れる。その際にも影で創造者を攻撃した。しかし、


 「・・・・・・・」


 影は創造者に触れている時点で止まっており、どれだけ意志を働かしても、それ以上は傷つけられない。離れながら落ちているナイフを拾う。


 「その影には弱点があるようだな・・・・・・」


 初めてそのような事を言われた。この能力の弱点? そんなもの今まで一つも思い当たる事はない。ハッタリか・・・・・


 そう思い再びナイフを構えた。


 「―――疑いの眼差しだな。なら教えようか? その力の弱点を」


 間髪をいれずに影で創造者を突き刺す。しかし、今までと同じでまるでダメージは無い。


 「その力は、人を傷つけることが出来ないのだ」


 「・・・・・・貴様は、死人だ」


 「その通り。私は死人だ。だが、この肉体は、人間のモノだ」


 「―――――なら・・・」


 創造者に最接近する。影でダメージを与えられないのならば直接魂を突く。


 その時、一瞬だけ光が天啓と創造者の間に現れた。


 関係ない。天啓は光を抜けるとその向こうに居る創造者に向かってナイフを突き出す。どんな攻撃が来ても影で全てを破壊し、創造者を殺す。


 「――――!?」


 光の向こうに居る創造者を見た瞬間、天啓のナイフは止まった。


 「・・・・・・・リ・・・・オ?」


 そこに居たのは創造者ではなく、リオだったのだ。


 「―――天啓君・・・・」


 ナイフを降ろし、動きが停止している天啓にリオが近づく。


 「・・・・なんで・・・ここに?」


 リオは彼に寄り添う様にして身を預ける。


 「ダメですよ。天啓君―――――」


 次の瞬間、リオの腕が天啓の身体を貫いた。


 「敵に対して、武器をおさめたら」


 悪魔のような笑みを浮かべるとその姿が創造者に戻って行く。


 「油断したな。夜月天啓」


 「―――か・・・・・・は・・・・・」

 貫かれた状態で、宙に浮いている天啓は血を吐きながら力なく創造者を見た。その手からナイフが地面に落ちる。


 「君たち人の悪い癖だ。姿形が同じならば迷いが生じる。今までの『処刑人』は、そのような事はなかったのだが・・・・・期待外れだよ」


 ・・・・・・何を・・・言っている・・・・?


 天啓は創造者が何を言っているか理解出来ない。


 「―――――だが、その『魂』は有効利用させてもらう」


 次の瞬間、『陣』が現れ天啓と創造者は姿を消す。


 その様子を、まるで眺めるかのように満月になりかけの月が夜道を照らしていた。

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