初めまして、Z組より
超非常識的な者達の日常的学園生活。
ごく平凡な小学生鈴原強太の常識はどこまで常識たりえるのか?
1 初めまして、Z組より
皆さん、初めまして、僕は鈴原強太といいます。
ごく平凡な小学5年生です。
このたび、父子家庭なのに父が知らない海外に出向が決まり、日本に残ること希望の僕ために、小学生でも寮のある青龍学園に編入が決まりました。
学園都市という名のごとく、この学園は都市まるごと学園で、すべてが生徒中心のシステムとなっていて、かなりおかしい学園でした。
ありえないことはありえないが日常で、『生きる』以外に校則がない。
普通が普通じゃないこの学園、普通に人外がいるような場所、金銭感覚がおかしいところなど、いろいろ記していこうと思ってます。
お付き合いできる方、ご連絡お願いします。
月百五十万。
その明記に目が点になる。
「どうしたー、キョータ」
テレビを設定していた篠原武雷が、机につっぷした僕を覗き込む。
「どうしたも何も、何、この家賃」
「安いだろ。日本の相場は知らないが、2LDK、バスとトイレは別々、システムキッチンのオール電化、光熱費コミコミ。家具に電化製品完備、防音、防火に防弾ガラス窓、完全セキュリティは指紋・網膜認証システムだぞ」
「もはや、君が何を言っているか、わからない」
元のアパートより広い、Z組専用寮の僕の部屋を見る。
家具と電化製品は完備というので、荷物は箱三つの衣服ぐらいだが、何この大型テレビは、BDデッキにパソコン一式、スマフォやモバイルまであるし洗濯機はドラム式で乾燥機完備、家具も立派でベッドなんかセミダブル。
「ちなみに、下の食堂は十一時までな。洗濯はクリーニング利用なら寮内に受付あるよ。他に何かあったら、寮母室に、電話はソコな」
日野海里が示す。
「ドアはオートロック、指紋で開くけど、クラス章と生徒証は忘れるなよ」
武雷がZのピンバッチとカードを見せる。
「特にカード、ウチは電子マネーもセキュリティもこいつで管理してる。指紋認証で本人しか使えないが、買い物できないし寮にも校舎にも入れなくなるからな」
海里が念を押してくれた。
この二人が色々と世話してくれるのは、武雷が五年Z組の室長であり、ウチのクラスで同じ寮生だからだ。
「これで良し、おいらは七階な。部屋番で通じる」
「ありがとう。武雷は七階と」
電話に登録しておく。
「俺は寮母室。母さんが寮母だから、俺は正確には寮生じゃないんだ」
「へ、そうなの」
「初等部で寮生なのは、後六年に二人、残りは中高生がほとんど、でも気にする必要はないぜ。ここじゃ年齢は関係ないから」
海里が軽く手を振る。
「元々、Zは人数少ないから、すぐ全員覚えられるだろうから」
ニッと笑う武雷に、心底同意した。
人数うんぬんより、君達を含めキャラ濃すぎる。
最終クラスって何? と思えば、名実ともにいろんな意味で終わった、人材揃いの無法地帯クラスって意味なんだもんな。
なんで、僕みたいな平均点の平均な小学生でしかないのに、このクラスに編入しちゃったの。
Z組って、スカウトされるか、政治的判断とかいう特殊な人材しか入れないのに、おかしいよね。
「家賃だ。授業料だ。は、気にしなくていいぜ。普通に授業受けてりゃ一千万ぐらいになるし、キョータは珠算部に入ったんだろ」
問われて頷く。
「あそこは生徒会公認部活だから、給料いいぞ」
「給料?」
「ウチのガッコ、給料制。ガキは勉強や部活が本分というコトで、給料が入る。それが青龍の生活」
海里は軽く言う。
「お前、家賃ないだろ。寮生じゃないんだから」
「部活で使ってるぞ。ウチ、学園公式部でもない単なる認識部だし、スポンサーのタイクンもレース場の維持やらで開発費は自分で用意する方が早い」
「えっ、レース?」
「俺、レーシング部のメカニック。二ヶ月ぐらいは世界を巡るから、部の公認休み扱いで」
「おいらは考古学部、博物館と資料館がこの先にあるから、見学料金はタダ、学術ポイントもつくし、一度見に来いよ」
「す、すごいね。二人とも、すごい部に入ってるんだ」
「ちゃうよ。おいらが創始者。部長。部員は十人程度だけど、学芸員とかの大人の給料が高いよね」
さらっとすごいコト言ったよ。
「ウチは元々、レースが本体、子供ばっかで色々あったから、二年前の大会の後スカウトを受けたんだよね。だからチームがそのまま部として登録したんだよ」
チーム全員が学生さん。
「えっと…公認とか公式とかの差は?」
「生徒会公認は、税金いっさいの金銭は生徒会もちで部費の交渉権があるから潰れる心配はない。ただし、必ず顧問が居て一定の活動がある事」
武雷がどこからともなくホワイトボードを取り出して、説明文を書く。
「んで、おいらの考古学部は学園公式は、顧問はないから公認になれないけど、学術的に学園がスポンサー扱いかなぁ。固定資産税はタダになるけど光熱費は自腹、学園のための仕事しないとならないし、活動報告はしなきゃなんないし、税金がない分懐は楽でもめんどう」
「んで、俺達認識部ってのは、部活としては知られてるけど、学園にも生徒会にも手助けされてない部活、学園のほとんどの部がそうだろうけど、税金から光熱費、部費から何から自分で稼ぐの。まあ、上の連中の許可さえおりれば存外自由な活動ができる」
「倒産したりするけどな。後、非公式とか見公認などの部というか、同好会ってのもあるな」
「で、でも、部活なのに、顧問が居ないって…」
「学園の生徒数は五万人ぐらい、学園内にあるすべては生徒会が管理してる。つまりは大人が働いていても部活やクラスが主体なんだ。そして、部活の数は万以上で、顧問は兼任不可」
「圧倒的に数が足りない。しかも、顧問になるかは先生しだい、ある都合で顧問を受けられない先生も居るし、旦那みたく」
ちなみに旦那ってのはウチの担任。この学園は性別や年齢、立場などお構い無くあだ名で呼びあってるんだよね。
武雷や海里みたく名前のまんまな場合も多いらしいけど、敬称を嫌うから、今日知り合ったばかりで呼び捨てすることになった。
僕は『キョータ』呼びになった。
「ま、金ってのは考えても意味ないぜ。どんな形でも生きてりゃいいんだよ。ウチは」
ニッと武雷が笑う。
「一応、救済制度もある。使った奴は居ないけど、普通にしてればどうにかなるって、クラス落ちする手もあるな。Aとかは家賃が十万って話だしな」
「えっ?」
「ABは普通科だから、学園でも金額設定が低いけども、給料はおいら達と一緒」
「なんで、僕はそっちに編入しなかったの?」
「知らない。コンピューターミスでも、Z組に入った以上、ウチの人間だ」
ニヤリと人の悪い笑みを見せる。
誰かが言ってたな…この学園でタチが悪いのは、クラスもそうだが、二つ名を持つ奴等で、この二人はその二つ名を持つ方だ。
「大丈夫だろ。ウチのコンピューターは間違えないだろ。キョータはZにくる人間だったんだろ。だいたい、それ言うとマックスかサザに殺されそうだな」
「さらっと怖いよ」
思わずツッコミをいれる。
「ウチは死に近い連中が多いから、慣れればいいんだよ」
ニッと二人して怖い笑顔をした。
「慣れるの?」
「ま、大丈夫だろ。俺だって普通に小学生だったんだからさ」
「おいらはわかんねえ。自分でここに来たし」
さらっとすごいコト言ったよ。
「さて、荷物はこれでいいと、東区の案内するか」
「基本、東区はZの他にJJ、I、M、Hがある。この中ではJとはライバルだから、授業中は攻撃されたりするから気をつけて、Iはあんま関わらないか、Mは唯一の夜間クラスで、Hは病院だから世話になるだろうな」
「病院? 大学病院みたいなの?」
「普通に病院、初等部でも医者も看護師も居る。ウチは日本とは違う」
平気でありえないこと言われた。
「外のための医学部でもあるし、ちゃんと医師免許持ちも居る。まあ、リアルブラックジャックも居るけど」
しれっと危ない発言が混じる。
「Hは杖のカケラ持ちが入る場所だな」
「?」
「気にするな。覚えていけばいい。後、中央区に教員棟、総合図書館、生徒会棟、部活連合棟がある。これらは普通のトコで言う市役所みたいなもんだ。青龍はクラスごとに校舎があるから先生達はそれぞれの校舎に居るからめったに行かないよな」
「でも、珠算部は部連棟にあるんだろ」
「えっと…近場のビルでいいって」
もらった地図を見せる。
珠算部は週二の休みがあり、僕は明日から出るコトになっている。
「J組とは森で離れてるけど、危ないから近づくなよ。後、ノラどもには気をつけるように」
「ノラ? 犬とか多いの?」
「いや、犬や猫はかわいいよ。ライオンや熊はクラス章をつけてれば大丈夫」
「そう…ライオン? 熊?」
ノラというよりそれは野生では。
「どこから逃げてきたか知らないけど、いつの間にか住み着いてる。森にはもっと居るぞ。ほとんど危険性はない」
武雷がにこやかに言うけど、ライオンが危険性ないの。
「ウチは動物園とかないけど、J組はレンジャークラスで、動物保護も仕事だからこの辺はノラがいっぱい」
海里もさらりと言う。
「でも、ライオン…」
「要注意はノラペンギンだ。あいつは容赦なく攻撃してくれる。この前、キバが血まみれにされてた」
「おいらのトコの学芸員も、魚を強要された。っとキョータ、魚屋の番号は入れとけ、魚を与えれば取り敢えず血まみれにはされない」
武雷がスマフォを操作して登録してくれる。
「ここにキズのあるアデリーペンギン」
額から左目に指をなぞる。
「ファングがミイラになってたのは、ノラペンのせいだったねか」
「電話する間もなく、ロケットアタック。まあ、部をサボりのバツだよな」
ニヤリと悪い顔になってる。
「ちなみにファングは高二で、レーサー」
武雷が言う。
レーサーも学生なんだ。
「少し早いけど、メシに行く?」
時計を見て海里が示す。
六時近いし、微妙に疲れた。
食堂はかなり広く食券制なのは学校と一緒。
「母さん、俺もこっちで食う」
カウンター越しに海里が声をかけている。
あの優しそうな人が海里のお母さん。で寮母さん。 僕は無難にカレー、武雷はランチ、海里は普通にご飯。
「で、誰?」
武雷の隣に中学生ぐらいの着物っぽい格好の人が居る。
「夢幻牙王。考古学部の一員、八年…中等部二年で通称ガオー、たいがいブライと一緒に居るよ」
海里が紹介してくれる。
「えっと…よろしく」
「……」
「ガオーは一応青龍最強、ウチのエースアタッカーだよ」
ガオーさんが口を開く前に武雷が言うが、エースアタッカーの居る考古学部ってのはなんだろう。
「ホウッ」
その声に目を向けると、テーブルの端に大きなフクロウ。
「翼凰、どうした。肉食う?」
海里が普通にフクロウに話かける。
「ああ、済まぬが、甘やかさないでくれぬか」
声をかけてきたのは同じ年頃の少年。
ただし、上半身に革鎧装備で、腰に二本の棒を下げた古風な感じの言葉使いの人。
「ダメだった」
「うむ。最近鍛練不足でのう。餌は自分で捕らせておる。なのに横着して他の者の食事を狙いおる」
腕を差し出すと、フクロウはしぶしぶと移動する。
「失礼した。俺は高野雷斗と申す。六年で登山部に在籍しておるゆえ、覚えておくがよい」
ぺこりと頭を下げて別の席に向かう。そこにもう一人、大人しそうなお兄さんが居た。
「覚えておけよ。ライトと一緒に居るのが、大神隼人。六年で登山部部長…地獄の青龍登山部を仕切る神の一人だ」
「ハトは普段はのんびりだけど、ウチで最高位の神クラスで、戦闘能力はダントツ、αチームの一員」
「?」
何を言われているのかわからない。
「青龍には普通に神や悪魔居るよ。中等部二年は、リアル中二クラスと呼ばれるほどヤバいメンツ揃いだし、神クラスの奴が二人居るしね」
海里も大真面目に言い切る。
「五年生も悪夢クラスだろうが、『沈黙の王』様が何言ってくれるかね」
カレー片手に言ってくるのは中学生ぐらいのお兄さん。たぶん、中二だろうな。
「カイ、今日は早いね。バイト終わり?」
「いや、メシ食いに帰ってきただけ、今日はこれから倉庫番で」
「暇な時でいいからウチでバイトしない。バイト代はイロつけるよ」
「考古学部か、ん~、来週頭ぐらいなら開いてる。っと、俺は竜堂海。カイでいいや。なんかあったらバイト部と引き受けるぜ」
軽く笑うと、食べながら歩いて行く。
「バイト部というか、何でも屋というか、カイの一人部で特別部なんだよね。基本、金でなんでもするからさ」
「えっと…」
「ワケありだから、青龍最高で『創成の破壊神』とか『青龍の盾』とか呼ばれてる。一人防衛隊だったり、ほとんど校舎に居ないけど、有事にはドコにでも現れる。頼れる神様だよ」
やはり海里が真面目に言う。
そのカイさんの後を大きい犬がついて行った。
「今の狼。カイの従者というか、同郷の神の化身の狼。名前はポチだ」
「クロウが本体だけどね。またカイにつきすぎて嫌われたんだろ。ポチは分身だけど、普通の狼だから追い払えないんだろ」
「クロウは高等部の奴ね。カイの従者なためか『青龍の良心』と呼ばれるほどお人好しだから、いつでもたかれる」
「いやいや」
真顔で言う武雷に海里が手を振る。
「ああ、そうそう、時たま虎のトラも歩いてるけどさ、怯えると襲ってくるから気をつけろよ」
「えっ、虎…猫?」
「いや、体長四メートルの元人食いシベリアタイガーだっけ、どっかのマフィアのペットをカモンが拾ったとかなんとか」
「捨てトラになるというか、敷物にされるトコを拾ったんだよね」
「えっ…ええと…」
なんだろう。理解が追いつかない。
「カモン達が餌にされるトコを倒したら、敷物にされるとかで可哀想だから飼うコトにしたみたい。頭のいい奴だから、青龍の人間は食べないよ。バッチをつけてる奴はヤバいと理解しているんだよ」
海里がクラス章を示す。
よくわからないが、これが命綱らしい。
「まあ、動物にしろ神にしろ、無意味に無駄なコトはしないから、大丈夫だろ。後は、緊急サイレンが鳴ったら学校な。何が襲撃してくるかわからないから」
「襲撃?」
「週一ぐらいで、宇宙から宇宙人が来たり、異世界からバケモンが出たり、諸外国から軍が派遣されたり、バッチをつけてない奴を見たら通報」
海里がクラス章を押すマネをする。
「これ、通信機で発信器で認証だから重要。何があってもなくさないように」
「うん、わかった」
絶対に肌身離さずにいよう。
「後重要なのは、サザと白神に気をつけてか、四年だけど、片方はZ初等部筆頭のZの目、白神はショータの弟だけども、本体は土地の祟り神の化身だから、正体をショータにバラすともれなく呪いがくるだろうな」
「ショータって同じクラスの?」
「そうサッカーバカの、あいつは白神のコトがある特例でZに入ったけど本人は知らないから、教えないように」
そうゆう事情もあるんだ。
「後は結構自由かな」
「自由の幅が広くてきつい! 違う意味できついよ」
「大丈夫、結構慣れるもんだ。俺だって普通からここに来たけど慣れた。慣らされた」
海里が力説するけど、どっちかというと、海里も特殊な方だよね。
慣れるの僕、無理な気がする。
「キョータ、お前、神だ」
突然にバッチから声がした。
「?」
全員がそれぞれのバッチに視線を落とす。
「マックス?」
「お前、カイやハト、ランド、みゃあ同様の創成神の一人の転生体の一人だ。七人の神の一人だと判明した。まあ、みゃあに近い調和の神らしいから、これといって仕事はないだろうが、覚えておけ」
一方的に話すと一方的にきれた。
「えっ…ええと…ええっ!」
「七人の一人か、全員揃うとは言われてたけど、本当に揃ったんだ」
あっさりと海里が頷く。
「ちなみに、現在七人のウチ二人は理事、元々この学校、神を集めるための学校で、オマケでおいら達みたいなバケモンクラスが集まっただけなんだよ」
さらりと武雷が言う。
「つまり、どうゆう」
「おいらにもわからん。これから何か起こるのか、いつも通りか、どっちにしろ、生きればいいんだからやるコトは変わらないだろ」
「どうせ深い意味なんかないだろうから、気にせず神様してればいいんじゃない」
二人というか、ガオーさんも頷いてるだけだ。
「ようこそ、非日常的日常へ」
その場に居たメンツが声をあげる。
こうして、唐突に神にされた僕の日常は、普通じゃない日常になった。
のんびりとした日常を書いていくので、ねえよ、そんな日常とツッコミ入れてくれるといいなと思います。