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消失についての覚書

作者: C・ハオリム

お暇な方はお付き合いいただけたらうれしい限りです。

1978年2月6日に於ける、第■■師団第■■歩兵連隊第■■大隊第■■中隊が演習間に消失した件についての補足


① 本資料の位置づけ

  第■■師団第■■歩兵連隊第■■大隊第■■中隊(以下中隊と呼ぶ。)が1978年2月6日に消失した件についての調査報告の補足として、主として通信記録をまとめたものである。


② 状況

  中隊が演習間に全隊員が消失した。現場の状況から職務放棄は考えられない。また、突発的な災害(雪

 崩、地すべり、噴火及び竜巻等)が発生した痕跡はない。


 演習場において 別添「写真-A」の痕跡を多数発見。【雪上に残された、CDぐらいのドーナツ状の痕跡の写真】 現時点において、この様な痕跡を残す生物は確認されていない。


 当日の天候は快晴、しかし、雪崩の痕跡は見つかっていない。中隊本部が設営されていた地域の状況は別添「写真-B」を確認されたい。【何かに押し倒された感じではあるが、本部として使われていたテントは綺麗に原型を残している。その周りには前述の痕跡が多数】


結論

  当面の処置として、■■■演習場の使用を禁止する。報告資料第■■■号の結論を適切な処置として認める。


  当日、第■■通信隊にて傍受された、通信記録の抜粋を添付する。


例 00 中隊本部   01 第1小隊   02 第2小隊   03 第3小隊   04 対戦車小隊   チャーリー 全員への呼び出し


「チャーリー、チャーリー 00、各小隊の状況を送れ」


「00、01 異状なし、隊員も元気、装備も駄々をこねていない。  少し寒い以外は極めて快適」


「00、02 異状なし…」


「あ、あー 00  03  あの、異状なしです。」


「00、04 少し、霧が出てきたようだ…、これ以上濃くなると、明日の射撃訓練に影響があると思う。 射撃訓練の中止は何時、決断されるのか」


「04、00 天気予報では霧が出ることはない、射撃訓練中止の決断は0600」


「00、04 時刻、確認  しかし、霧は出ている」


中隊は、北から横一列に対戦車小隊、第3小隊、第1小隊、第2小隊、中隊本部の順で並んでいる。


「01、02、03  貴所の状況を送れ」


「00、01 先ほど言ったとおり、寒い以外はいい天気、綺麗な星空付き」


「00、02 こちらも晴天である」


「えーと、00、03   あのー、いい天気です」


「03、04 本当にそうか?お前のところと1キロも離れてないぞ…、それに、風も出てきたようだ…」


「04、03 あのー、こちらは晴天です。…風もなくて…、様子を見に行かせますか?」


「03、04 いや、連絡要員が方向を失う。こちらもじっとしている。…やけに濃い霧だ…」


「04、00 霧の細部状況はどうなっているのか?」


「00、04 酷いもんだ…、10メートル先が確認できない。危険なので歩哨も下げた。それに、風も強くなってきている。本当に、晴天なのか…」

【背後にノイズとも風の音とも取れる音】


「04、00 了解した。今夜は特に訓練はないので、ゆっくり休んで貰いたい。その分、明日はかんばって貰うぞ」


【先の通信から30分後】


「00、04 霧が酷い、テントの中まで入ってきている。それに、気温も低下している。…それと、臭いだ…、隊員が不安がっている。それ以外、今のところは異状なし」


「04、00 了解した。しかし、天気予報は霧なんて…、当てにならんな…。03、03 そちらはどうか?」


「03です。 あのー、いたっていい天気です。…あ、ちょっと待ってください。歩哨から少しもやがかかってきた、と連絡ありました」


「03、00 霧が濃くなる前に、歩哨を下げろ。今日は休め」


「00、03 了解」


「00、04 テントの中も霧で何も見えない…、無線の光は見える。匂いもきつくなってきた…、隊員は怯えている。音もする…」


「04、00 04の通信は、不明瞭である。再度報告せよ」


「00、 …よく分からない…、何かいる。テントの周りを…何かいる」


【状況から考えるとこの通信の後、最初の発砲があったもののと考えられる。】


「04、00 銃声がしたぞ、何があった…。  04、04、04、応答せよ。04、応答せよ」


「00、03 銃声確認、04の方向、…き、霧が出てきました」


「了解、警戒を厳にせよ、03から、04に中継、現状を報告せよ」


「03、了解。04、04、04応答せよ」


【以後、30分にわたり01、02、03から呼び出したが04からの通信はこの後、確認されていない。】


「03、00 04を確認できるか?」


「00、03 霧が酷くて、方向がつかめず、風も臭いもあります。よって、04の確認はできません。」


「03、00 了解、03は、速やかに本部まで戻れ。01、03へ本部まで案内できる要員を送れるか?」


「00、01 了解、迷子にならないように、お手てつないで引っ張ってきます。03、移動の準備をしておけよ。すぐ行くから、心配するな」


「00、了解、霧は酷くなるばかり…です。01、お願いします」


【この後、15分簡、通信なし。】


「00、01 霧が酷くて、前進できない。前進できない。このままでは、霧に飲まれる。03、すまない引き返す…」


「チャーリー、チャーリー、救援お願いします。  何か…何か…あ」


【03の通信と推測される。03の通信はここで途切れる。以後03からの通信は確認されていない。】


「01、今すぐ引き返せ、引き返せ、命令だ、危険だ」


「00、悲鳴が聞こえました…、隊員に弾薬を装填させました。…引き返すにも霧に飲まれました」


「01、警戒を厳重にして、円陣を組め、同士討ちは避けろ、その位置で防御の体勢をとれ」


「00、01 風が酷い、臭いもする」


【背後に風の音】


「01、どんな匂いだ?隊員の様子は?」


「00、臭いは、硫黄のような、ドブのような…、隊員は自分も含めてびびりまくってます」


「02、01への救援は可能か?」


「02、了解…、しかし霧を確認、指示を願う」


「01、状況を送れ、02、引き上げろ、中隊本部の位置まで、今すぐだ…」


「な、あれ、なに、救援」


【01の通信と推測される。】


「01、01どうした。何があった…、どうした?」


「00 02、01の方向から悲鳴多数…、02は移動中…」


「02、急げ、01には構うな」


「酷い、信じられない…、身体が…」


【この通信は01ものと推測される。以後01からの通信は確認されていない。】


「00、分からない、移動したつもりが…戻っている。霧に飲まれた。01の報告した臭いもある。風も…


02、早く逃げろ、逃げるんだ」


【遠くに発砲音】


「酷い、こんな物がいるのか」


【今までの冷静な口調から一変して感情的な口調になっている。】

「ライフルでは止められない、喰われたのか…、いや、どう表現したら…、それにあの姿、俺は正気なのか…。逃げろ、逃げ…」


「02、02、02どうした、何があった、こちらも霧だ、こっち以外の方向に逃げろ」


【中隊内の通信はこの通信が最後である。これからは、中隊が大隊に送信したものである。】


「メーデー、メーデー  ■■中隊は、現在、正体不明のモノに襲われている。奴ら、ライフルもロケットも効かない。一つじゃない、沢山だ。形は…、説明できない。ここも時間の問題だ…、酷い臭いだ、ムカついてくる」


【この後、数分間、沈黙】


「あれが、目の前に…、応戦中」


【銃声多数】


「か、神はいるのか」


【中隊からの送信は終了している。】


「…………………」


【暫く、無線機の送信スイッチが押されていたため、呻きとも囁きとも呪文の詠唱ともつかない音が入っている。】


以上が、中隊が消失した思われる時間に記録された通信である。最後の音については別添の「資料-C(通話記録)」を参照されたい。


この件について、部外対して、大規模な雪崩による遭難と発表されたことは、適切であると判断する。


【最後の署名は、黒く塗りつぶされている。】


【手書きの文字で】

弾薬の配布時期の問題、通信記録を取る必要性があったのか、あらかじめ予期されていたのか?

お読み頂きありがとうございます。

初の投稿作品です。

読みづらいかもしれませんが、少しでも暇つぶしのお役に立てたなら幸いです。

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