過去 病室の中で3
「行かないでっ!」
そう言って目を覚ましたりゅうは額にうっすらと汗をうかべていた。
「あ…あの…りゅう??」
私はそんなりゅうに話しかけるのが精一杯だった。
「あ…みかちゃん!目を覚ましたんだ!」
りゅうは一瞬瞬きをして、私の顔を見たとたんに元気いっぱいなあの笑顔でそういった。
「う…うん。」
私は少し後ずさりながらも素直に頷いた。
「よかった。もう目を覚ましてくれないかと思ったよ。」
りゅうは安堵の表情を浮かべてほっと肩をなでおろす。
「そんなことあるわけないよ。」
『よかったいつも通りのりゅうだ。』
私はそんなりゅうをみてそう思う。
「ほんとよかった。」
りゅうはまたそうつぶやく。
「りゅう…私なんで病院なんかにいるの??」
私は ずっと疑問に思っていたことをりゅうに問いかけた。
「う、うん。覚えてないんだね。あのね…」
りゅうは幼いながらにもゆっくりと丁寧に私がここに来るまでのことを話してくれた。
私がりゅうと遊園地へいって倒れたこと。それから、一週間程目を覚まさなかったこと。そしてしばらくは入院生活を送らないといけないこと。
りゅうは全てのことを話してくれた。そして、
「ごめん。僕のせいだ。」
そう言って泣きそうな顔で謝った。
「りゅうのせいじゃないよ?」
私はりゅうの手を握りながらりゅうに笑いかけた。
りゅうの話を聞く限り、私が倒れたのは病気のせいで病気さえ治れば何も問題はないのだ。とその頃の私は思っていた。
「美香ちゃん…ありがとう。」
りゅうはそう言って笑顔で笑いながら一筋の涙を流した。私はそんなりゅうをみて胸の奥がぎゅっと締め付けられた。
今思えば、りゅうはこの時からもう既に勘づいていたのかもしれない。
私がもう長くないことを…。