過去 病室の中で1
「ん…ここは?」
目が覚めると私は四方を白い壁に覆われた部屋にいた。
「どうして…」
私は必死に記憶の糸をたどった。けれどなかなか思い出せない…。
『私…なんでこんなところに…』
そんなことを考えているとふと右手に違和感を感じた。
『なんだか生暖かいような…』
ふと右手の方をみると、まだあどけなさを残した少年がいた。
「りゅう!?」
私は思わず驚いて、声を上げてしまった。
『し、しまった。』
慌てて左手で口を覆う。
「ん…ん。」
りゅうは少し身動きをしただけで、どうやらまだ起きてはいないようだった。
『よかった…。』
私はそう思ってほっと肩をおろした。
『でもなんでりゅうがこんなところに…』
私はそんな疑問をいだいた。
そしてりゅうの顔をふとのぞき込む、長く細いまつげに、すっと通った鼻。そして華奢な体。触れたら壊れてしまいそうなほどにいとおしく感じた。
『このまま時間が止まればいいのに…』
ふとそんなことを考えていると、なんだか余計に意識してしまう。
からだが一気に暑くなる。私は少しでもりゅうから意識を放したくて右手を引き上げた。すると、
パシッ
ふいに、りゅうが私の右手首をつかんだのだ。
「…!」
私はびっくりして、その場で硬直した。
「行かないでっ!」
そう言ってりゅうは目を開けた。