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ロスト・メモリーズ  作者: 由里名雪
鈴白凜
5/33

鈴白凛ー5ー

 凛の後に続いて二階へと続く階段を上り、廊下を歩く。見た感じだと二階にある部屋は全部で三部屋。やはり俺の家と同じだ。

「じゃあ、私は少し自分の部屋を整頓していますね。残りの部屋の方は自由に調べてもらって構わないです」

「ああ、わかった」

 そんな言葉を残して凛は自室へ引っ込んだ。

 さて、家探しを始めるとしよう。

 まずは二つある残りの部屋の内、廊下の一番奥の部屋を調べる。

「一体なにがあるやら……」

 不可解というか謎だらけの家なので積極的に調べる気にはやはりなれないが、腹をくくって全力で手掛かりを見つけよう。

 そう思い廊下を真っ直ぐ歩くとすぐにドアの元にたどり着く。

 ドアノブに手を掛け、俺は扉を開いた。

「……、これは…………」

 中に足を踏み入れると、そこには────何もなかった。

「何もないじゃないか……」

 文字通り何もない。家具の類は一切見当たらない。絨毯も何も敷かれていない。フローリングが剥き出しの、まるで建てたばかりの家の部屋の様な空虚さだった。

 その空虚さが何とも不気味に思え、すぐに部屋を出て行きたい衝動に駆られる。

「いや、本当に何もないかしっかり探すべきだ」

 自分に言い聞かせる形で独り言を漏らす。

 見た所部屋の中には押入れと思われる収納スペースがある。そこも調べてみるべきだろう。

 そう思い観音開きの収納スペースを開くが、案の定何もない。

 中をくまなく探したがやはり何も見つからなかった。

 何か落ちていないか、フローリングの床を注意して見ても、手掛かりとなるようなものは一切なかった。

「一体何なんだこの家は……?」

 一階のリビングにはほんの少しとはいえ、家具があった。

 凛の部屋も、片付けると言っているという事は家具の類はあるだろう。

 なぜこの部屋はもぬけの殻なのか。

 考えれば考えるほど不可解だった。

 しかしこれ以上この部屋を探すのは時間の無駄のように思える。

 残りの一部屋を探すべきだろう。

 最も、その部屋ももぬけの殻である可能性は高いが。

 とりあえずこの部屋を探すのをやめ、廊下に出た。

 残りの一部屋は、凛の部屋の向かいにある。

 凛の部屋からは物音が聞こえた。整頓の真っ最中だろう。

 凛の自室の向かいの部屋のドアを開けると、目に飛び込んできたのは、やはりまるで生活感のない空虚な部屋だった。

「……………………」

 何となく、凛の自分の家を家探しするのが怖いという気持ちが分かった様な気がした。

 好き好んでこんな何もない部屋に入ろうとは思わないだろう。

 ……目覚めてからずっとこの家で凛は生活してきたのだ。今までどんな気持ちだったのだろう。それを考えると、どうしても凛を今の不安や悩みから解放してやりたいと思うのだった。

「しっかしほんとに何も無いな……」

 何も無さすぎて気が付いたら少し考え事をしてしまった。

 手掛かりを見つけると意気込んでいたものの、これではどうしようもない。

 どこかに一つでもいいから手掛かりがないものか、まずは虱潰しに床をくまなく探そうとした時だった。背後からガチャリ、と扉の開く音がした。

「っ!?」

 突然の物音に思わず飛び跳ねてしまった。

 振り向くとそこにはキョトンとした顔で俺を見る凛がいた。

「な、なんだ凛か……」

「……?何をそんなに驚いているんですか?」

「いや、ちょっと考え事をしてたら急に物音がしたもんで……」

 俺が何となく感じていたこの家の不気味さも俺を驚かせる一因だったかもしれない。が、まさかそんな事を言うわけにはいくまい。

 俺の言葉を聞いた凛はくすくすと笑っていた。

「篠ヶ谷さんって、おばけとかそういうの苦手ですか?」

「いやそんな事ない!おばけでもゾンビでもばっちこいだ!」

「ふふ、ならおばけ屋敷とかに行っても篠ヶ谷さんと一緒なら安心ですね」

 それは俺を試しているのか、凛よ。

 おばけなんぞ取るに足らない相手だ。おばけ屋敷なんて楽勝だろう。

 ……と思うのだがどうだろうか。おばけ屋敷は行ったことがないのでよく分からない。ホラー映画とかもあんまり見ないしな。

「それはそうと何か用事でもあるのか?」

「あ、そうでした。橘さんも呼んで私の部屋で休憩しませんか?特に何も見つからなかったかもしれませんが」

 それはいい案だ。これ以上この部屋を探しても骨折り損だろう。丁度いいタイミングだ。

「賛成だ。じゃあ橘は俺が呼んでくるよ」

「ありがとうございます。私はお茶の用意でもしていますね」

 さて橘を呼ぶか。

 ……って俺これから女子の部屋にお邪魔するんだよな。少し緊張してきた。凛の部屋はどんな感じなのだろうか。以前お邪魔したらしい橘の部屋は正直、うろ覚えでよく分からない。実質初めて女子の部屋にお邪魔するようなものだろう。

 あんまりじろじろ見たりしたら失礼だよな、気を付けよう。

 そんな事を考えながら橘を呼ぶべく一階へと向かった。








「私の部屋にようこそです」

 キッチンを探索していた橘を呼び、一緒に凛の部屋にお邪魔した。

 部屋の広さは俺の自室と全く一緒だ。というかよくよく考えてみれば、使っている部屋の位置も同じだった。家の構造が俺の家と全く同じなので、何となく親近感が湧く。

 部屋の中にはベッドや茶色のカーペットの上に配置されたテーブル、タンスやクローゼットなどがあり、他の部屋とは違いちゃんと生活感があった。

 カーテンも花柄で、いかにも女子の部屋といった感じだ。

 俺の部屋と違い片付いている。

「わーい、凛ちゃんの部屋だ」

 なぜか嬉しそうな橘。

 失礼だとは思いつつも、女子の部屋にお邪魔する事などそうそうないのであたりを見回してしまう。

 やはり少し緊張するな。

「これが女子の部屋か……」

「し、篠ヶ谷さん、あんまり見られるとその……恥ずかしいです……」

「ああ、すまんすまん。俺の部屋なんかと違ってすごく片付いてるしいい部屋だなって思ってさ」

「あはは、そんなことないですよー。ありがとうございます」

 まだ恥ずかしいのか、凛は少し俯きがちに笑った。

「瞬の部屋なんかと比べちゃダメでしょ。どーせ散らかり放題なんだから」

 いらないツッコミを橘が入れてきた。つくづく失礼な奴である。

 まあ否定はできないのだが。

「お前の部屋だって散らかってそうじゃないか。お互い様だな」

「なによー。ちゃんと片付けてるもん」

 如何にも不満そうな仏頂面で橘は文句を言った。

 今はどうか知らないが、俺の記憶が正しければ女子の部屋にしては割と散らかっていた気がする。

 学校で遠くから橘を眺めている奴らはそんな事、知る由もあるまい。

 というか知ったら引くんじゃないか?わからないが。

「今度ぜひ橘さんの家に遊びに行ってみたいです!あ、もちろんご迷惑でなければですが……」

「もちろん、大歓迎だよ。凛ちゃんの都合がよければいつでもうぇるかむだよー」

 凛がそう言うと先ほどまでの仏頂面はどこかへ消え失せ、代わりににこにこ微笑んでいる橘がいた。

 どんだけ後輩大好きなんだ。

 凛だからこそ、かもしれないけれども。

 そんな事をふと思っていると、凛の勉強机の上に置いてある白い箱が目に入った。

 俺の目を引いたその箱は、よく見ると塗装がところどころ剥げている。しかし細かい模様が彫り込んであって、繊細な装飾が施されていた。

 年代物というか、アンティークのような古いが上品な印象を受ける。

 何か入っているのだろうか。

「なあ凛。勉強机の上に置いてあるあの箱は何なんだ?小物入れか?」

「ああ、あれはですねー。ちょっと待って下さい」

 凛はすっくと立ち上がりその白い箱を持つと、俺の前に置いた。

「何だか綺麗な箱だね。私も気になるなぁ」

 橘も興味深そうに箱を見つめていた。

 改めて近くで見ると、塗装は剥げているものの大きな傷どころか小さな傷すらなかった。

 よほど大切にしてきた物のようだ。

「篠ヶ谷さん、開けてみて下さい」

「え、いいのか?」

「はい。開ければこの箱が何なのか分かると思いますよ」

 お言葉に甘えて、箱を開けることにする。

 中は何だろうか。凛の大切な物が入っているとかだろうか。

 もしかしたら凛の記憶を取り戻す手掛かりがあるかもしれない。

 そんな淡い期待を込めて俺は箱を開けた。

 そして中には────。

「これは……」

 小さな金属の円筒が一つ、儚げなメロディーを奏でながら回っている。

 中に入っていたのは凛の大切な物などではなかった。

「オルゴール……?」

「わぁ、いいなあこれ。綺麗な音だね」

 橘も驚いたようだ。

 まさかこれがオルゴールだとは思わなかった。

 何て綺麗なオルゴールなのだろうか。

「ふふ、実はオルゴールなんです。これを聞いていると何か思い出せそうな気もするんですが……そんな事はありませんでした。でも私結構気に入ってるんです」

 凛は目を閉じてオルゴールが奏でる旋律を聞いている。

 橘も同様に耳を傾けていた。

 会話が無くなり、部屋にはオルゴールの音のみが響く。

 聞いているうちに、どうしてなのか何となく懐かしい気持ちになってきた。

 ────俺はどこかでこのメロディーを聞いたことがある。聞けば聞くほどなぜか懐かしくなってくるのだ。

 何か俺は忘れている……そんな気がしてならなかった。

 なぜこんなにも懐かしい気持ちになるのだろうか。

 自分のことなのに説明がつかない。

 昔、かなり昔にこのメロディーを耳にしたような気もする。

 しかし、一体どこで耳にしたというのだ。

 このオルゴールを見たのはこれが初めてのはず。

 何かの曲……だろうか。

「これは何ていう曲なんだ?」

 どちらに向けてということもなく俺は疑問を口にした。

 しかし返ってきたのは意外な返答だった。

「うーん……私はわからないなぁ。こんな曲初めて聞いたよ。何だかすごくいい曲だね」

「私もわからないです……。けどどこかで聞いたような感覚はあります」

 橘と反対に凛は聞いたことがあるようだった。

 自分の私物だから記憶を無くしているとはいえそれは納得できる。

 しかし、なぜ俺は聞いたことがあるような気がするのだろう。

 ただ気がするだけという可能性もあるが。

「実は俺もどこかで聞いたことがあるような気がするんだ。一体どこでこれを────っ!」

 その時突然俺の頭に鋭い痛みが走った。

 思わず頭を手で押さえる。

 しばらくズキズキと鈍痛が続いた。

 一体なんなんだ。なぜ急に頭痛が────。

「し、篠ヶ谷さん!大丈夫ですか?」

 俺の様子を見て心配したのか凛が声をかけてくれた。

 痛いのは最初だけのようでもう既に痛みは引き始めていた。

 最初の激痛の余韻のような疼痛が少し残ってはいたが。

「ああ、大丈夫だ。なんか急に頭痛がな」

「ちょっと瞬、大丈夫?横になったら?」

 不安そうな顔をした橘が言った。

 もうほぼ痛みはないが、心配させたくないしお言葉に甘えよう。

 俺は橘に向かって頷いた。

「篠ヶ谷さん、私のベッドを使って下さい。床じゃ横になり辛いでしょうし」

「いいのか?俺は全然床でも構わないんだけど」

 凛は俺の言葉を聞くとぶんぶんと頭を横に振った。

「こういう時は素直に言うことを聞くものですよ、篠ヶ谷さん」

 後輩に諭されてしまった。

 橘も同調して頷いている。

 まあ、ありがたい申し出であることだし従おう。

「じゃあ済まないけど少しだけベッドを借りるよ」

 正直痛みは既にベッドで横になるほどではないのだが、ここまできた手前今更断りづらい。

 なので、俺は背後にある綺麗にシーツや布団が整えられたベッドに横たわった。

 ……人のベッドってこんなに寝心地がいいものなのだろうか。それとも凛のベッドだからだろうか。

 何にせよ何もせずに寝ているとすぐに睡魔が襲ってきそうなほど心地が良かった。

 それになんか、とてもいい匂いがした。

 ……って俺は変態か。いかんいかん。

 机の上にあったオルゴールは凛が既に勉強机の上に移動させていた。

 箱は閉じられて、再び部屋には静寂が訪れる。

「瞬、ほんとに大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ。もう痛みはほとんどない」

「そっか、それなら良かった」

 ほっ、と橘が肩を撫で下ろした。

 意外と心配性なんだろうか。

 何だか申し訳ないが心配してくれたのは素直に嬉しい。

「そういや橘は下でなんか見つけたか?凛の記憶を戻す手掛かりになりそうなものが」

「うーん、特にはなかったかなぁ」

 少し考える。

 凛の過去や思い出に直結している物……写真や日記などがあるとしたらやはり凛の部屋、つまりこの部屋だろうか。

「凛、この部屋には写真とか、日記とか何か手掛かりになりそうな物はなかったか?」

「はい、私も何かないかと思って引き出しの中とかいろいろ調べてみたんですが……やっぱり見つかりませんでした」

 いよいよ八方塞がりになりそうだ。

 凛が自力で思い出すことができたら苦労はしないだろう。だがその望みは薄い。

 何とかできないものか。

 そう考えていた時おもむろに凛が立ち上がった。

「篠ヶ谷さん、少し待っていて下さい」

「ん?どうしたんだ凛?」

「下にいって濡れタオルを持ってこようと思いまして」

 どうしよう。もう頭痛おさまってるんだが。

 そうは思ったものの最初にあそこまで痛がった手前、ケロリとしてもう治りましたとは言い辛かった。

 そこまで手間を掛けさせるのも申し訳ない。

「い、いや、もう本当に大丈夫だからそこまでして貰わなくてもいいんだぞ」

「ですが、念の為といいますか、しないよりはした方がいいかなと」

 断っても駄目そうだった。

 ……諦めるか。

 何だか騙してるみたいで本当に申し訳ないな。

 そもそもなんなんだあの急な頭痛は。

 あんだけ痛かったんだからもうちょっと続いてくれてもいいのに。

 そうすればこんなに後ろめたくなることもなかっただろう。

 まあ、治るに越したことはないはずなのだが。

「じゃあ、少し待っていて下さいね」

 そう言って凛は部屋から出て行こうとした。

 すると橘も急に立ち上がり凛の後に続いた。

「あ、凛ちゃん、手伝うよ」

「橘さん……ありがとうございます!うーん、じゃあ私は新しくお茶を淹れるので、濡れタオルの用意をお願いします」

「はーい。まかせてー」

 バタン、とドアの閉まる音。

 橘まで出て行ってしまい、部屋には俺一人が取り残された。

「なんなんだこの状況……」

 凛も橘も、人の世話を焼くのが好きなのかもしれない。ほんとにそうかはわからないが。

 けれど何かしようとしてくれるその気持ちは素直に嬉しかった。

 ふと横になっていた体を起こしてみる。

 体は軽い。頭痛も完全に治っていた。

 二人が戻ってくるまでどうしようか。

「うーん…………」

 どうしようもなかった。

 考えたところで何か起こるわけでもなし。

 大人しく寝ていようと思い改めて横になり寝返りを打とうとした時、ゴトリ、と何か物が落ちる音がした。

「ん……?」

 ポケットの中の感触が消えている。

 どうやら俺の携帯が床に落ちたようだ。

 ベッドから起き上がり、下を覗く。

 しかし携帯の姿は見当たらなかった。

 おそらくバウンドしてベッドの下に入り込んだのだろう。

 俺はベッドから降りて床にうつ伏せになり、ベッドの下を覗き込んだ。

「お、あったあった」

 奥までは入り込んでおらず、少し手を伸ばせば取れそうだ。

 体を少しベッドの下に入れ手を伸ばす。

 難なく携帯を取り出し、ベッドの下から這い出ようとした時だった。

 携帯があった位置より更に奥の暗がりに、何かがあった。

「暗くてよく見えないな……」

 凛のベッドは壁際においてあるので、隅の方がよく見えない。

 体を更に前へ押し出し手探りでその何かを掴もうとした。

 指先に冷たい感触。金属だろうか。

 それを掴むとどうやら細いチェーンのようになっているらしく、一気に引っ張り出すことが出来た。

「よいしょ……っと」

 何とかベッドの下から這い出る。

 手元に目をやると、俺は銀色の細いチェーンを掴んでいた。

 チェーンの先には同じ銀色のハートのチャームが繋がれている。

 ホコリだらけのそれは、よく見ると開くことができるようになっているみたいだった。

 ロケットペンダント、というやつだろうか。

「これは……?」

 ベッドの下から出てきたのは意外なものだった。

 これも凛の私物だろうか。

 ホコリを払ってやると、これも白いオルゴールと同じく年代物のように見える。銀色の塗装が所々剥げ、下の金属が見えていた。

「このペンダント……どこかで……」

 俺は強烈な既視感を覚えていた。

 間違いなく、俺はこのペンダントをどこかで見ている。

 しかし、一体どこでだ。どこにでも売っていそうなペンダントではある。が、記憶に無い。

 しかしこの既視感は否定できそうになかった。

 その強烈な既視感が消えないうちに、ズキン!!と思い出したように突然先ほどの頭痛が俺を襲った。

「ぐっ……!が……っ!」

 耐えられない程の痛みだった。

 先ほどと違いすぐに消える様子はない。

 痛みに耐え兼ね思わず手に持っていた携帯とペンダントを取り落とす。

 鈍いプラスチックが床に落ちる音と、無機質な金属音が部屋に響いた。

 一体なぜ、初めて見るはずのものにこれほどの既視感を覚えるのか。

 オルゴールだってそうだ。

 家の造りも俺の家に瓜二つ。

 この家には……一体何があるんだ。

 相変わらず痛みは治らない。

 頭を抱え込むと自然と視線は床に向いた。

 床には俺の携帯と、落下の弾みで開いたハートのロケットペンダント。

 そしてハートの中にあったのは、一枚の小さな写真の切り抜き。

 そこに写っていたのは────。

「こ……ども……?」

 十歳にいくかいかないかくらいの少年と少女が、手を繋いで満面の笑みを浮かべていた。

 年相応の、幼い無垢な笑顔だった。

 そしてまたやってくる激しい既視感。

 写真自体にではなく、そこに写っている子供の方にだ。

「これは……っ、一体────」

 そして俺の意識は、深い闇へと落ちていった。

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