事情聴取
「待て!」
智は源を置いて犯人を追う。
犯人は必死で走りスポーツテストより速いだろうが智にはかなわなかった。
「捕まえた」
智は両手で犯人の肩を掴み抑えた。犯人も抵抗しようとするが智の力のほうが強くすぐにあきらめた。
「速いよ~」
5秒ほど遅れて源が追いついた。
「さすが智」
比呂斗は追いかけることをあきらめてもはや歩いていた。
「ふぅー、さてどうする?」
捕まえたのはいいもののどうすればいいのかわからなかった。
「とりあえず部室に行きましょう」
と比呂斗の提案により新聞部部室へ連れていくことにした。犯人もおとなしくその指示に従う。部室に犯人を連れていく間にチャットアプリで見つけて部室へ連れて行くと連絡を入れる。
比呂斗達が部室へ着くと切﨑先生を除く、打ち上げ参加者が集まっていた。
そして犯人を部室の長机の奥側へ座らせる。
「あ、あなたでしたか」
犯人が座るなり鎌谷さんが心当たりがあるかのか、それらしき発言をする。
「知ってるんですか?」
笹草が聞くと、鎌谷さんは「知ってる」と答えた。
「3年3組の原田くんだよね?」
とクラスの名前をきくと犯人は首を縦に振った。みつかったことに恐怖しているのか冷や汗がみえるくらい動揺している。
「あ・・あの・・私・・どうなるんでしょうか・・・・」
震えながらも微かに口を開いた。予想はしていただろうがやはり捕まると頭が真っ白になるのだろう。
「ん~、私に聞かれてもわからない。まぁ先生次第じゃない?」
それを聞いて原田さんは頭を下げた。
______ガラガラ
突然部室の扉が開いた。そして長机とパイプ椅子をそれぞれ片手でもつ切﨑先生が入ってきた。
(なんつー力だ)
と比呂斗は驚いた。
「ん?え?原田君が犯人なの!?」
先生からの評価は好印象なのか犯人をしって驚いていた。
先生によると原田さんは真面目で責任感が生徒と認識されているらしい。そして先生によく頼まれている印象。だった。
「でもどうしてこんなことを」
先生が原田さんに行動のわけを聞こうとするが原田さんはここにいる人たちをみて話さない。
「ごめんだけど全員部室から出てくれる?」
先生が原田君の様子を察して2人きりで話そうとする。
「それなら私も同行していいでしょうか?先生だけだと話しにくいでしょうし」
「なら男子枠で俺も」
と鎌谷さんと比呂斗が追加で話を聞くことになった。
その間他の人たちは備品を直した後、生徒会室で雑談することにした。
「それでしようとしたきっかけは、いじめですか?それともただのいたずら?もしくはストレスとかですか?」
先に比呂斗が仕掛けた。原田さんは覚悟を決めたのかゆっくりと口を開いた。
「もう嫌だったんですよ。先生たちに頼まれるのが」
原因はストレス。比呂斗は原田さんの表情やしぐさをじっくりと観察する。
「それなら断れば」
先生がそれを口にした瞬間自分が失言したことに後悔する。
「断っていますよ。けど『君にしか頼めないんだ』『君ならできる』といってくるんですよ」
(期待に押しつぶされた感じかな)
鎌谷さんは内容を整理しつつ話を聞く。
「文化祭のクラス責任者を任されたときはまだよかったんですがね。このクラスマッチのクラスリーダーを決めるときももちろん私が候補として先生から言われました」
クラスマッチにリーダーとかあったのか。と比呂斗思っていた。比呂斗のクラスの場合、大抵のイベントのリーダーは笹草が率先的にやっているのですべてクラス委員長がやるのかと思っていた。
「断りました。運動できないし、ルールもわからないので。けど先生は『いい経験になる』といって半場強制にリーダーになりました」
はぁ~と切﨑先生はため息を吐いた。
(あの先生やけにこの子に肩入れしてると思ったけど、ここまでとは)
切崎先生は原田さんの担任の話したことを思い出す。
「そこから、クラスマッチの配置決めに入ったんですが。そこで喧嘩が起きました」
喧嘩内容は単純だった。『なんでこいつがここにいるんだよ!』とか『運動できないならソフトボールへ行ってくれ』 などと多くの言葉が飛び交うグループ決めではよくある光景だ。
人数決めは最初に希望を取りそこから人数が多ければ少ないほうにじゃんけんで決め、半々に分かれさせる感じだった。けどそれでチームに運動できない人たちとできる人たちがじゃんけんでほぼ別れてしまい喧嘩が起きた。実力差を考慮するために原田さんが少し移動させようとするが「じゃんけんで決まったのに変えるの?」と反対意見もでた。勝ちたいという意思を伝え渋々移動案を実施したが、今回のクラスマッチでは運動できない人たちは参加せず全員が教室で寝たりしてサボるという結果になった。呼びに行っても『どうせ運動できる人たちが全部やってくれるでしょ』と言ってそこから頭のねじが外れてしまったらしい。
「それでむしゃくしゃしてこんなことをやったと」
原田さんは首を縦にふる。話を聞き終えた3人は大きくため息を吐いた。
備品隠しはただの嫌がらせだったらしい。
「備品を隠したことは、もうしわけありませんでした」
机に額をつけるほど頭を下げた。
「反省はしてるようね。ならよかった」
切崎先生は生徒の思いを聞けて少しほっとする。
「でももしかしたら次も同じことになる可能性があるのでは?」
話を聞いたことで比呂斗は根本的解決をしようとした。
「それなら私が先生にいうわよ」
と切﨑先生が解決に名乗りでる。
「先生の責任なら先生が解決すべきよ」
鎌谷さんは先生がこんな発言をするのかとびっくりする。
「隠したことにお咎めとかはなにかあるんでしょうか」
原田さんが自分の処遇について聞いた。
言わずに済めばよかったものを、と比呂斗は思った。
「特になしかな。反省もしているし。あるとすれば打ち明けたことが処遇よ」
善人すぎると比呂斗は切﨑先生をみる。比呂斗の視線に気づいた先生は少し恥ずかしがっていた。
「さて、話はおしまいね。原田君は家に帰って十分休むこと」
といって原田さんを部室から出させた。
「でもどうするんですか?おそらく原田さんの担任には今回の喧嘩のことを言ってもNGですし、教室でさぼっていたこと、隠したことを話すのもNGだと思いますよ?」
鎌谷さんがどう対処するかを切﨑先生に聞く。
「それだったら普通にリーダーをもうしたくないって言ってた。といえばいいのよ。そして彼一人に押し付けてたら最後にパンクしますよ。悩みをほかの先生に打ち明けるくらいため込んでいたんですし。ってさらに追加でいうと多分聞いてくれる。自分以外の先生にこういう事情を相談された時点でショックを受けるでしょうからね」
と先生なりと考えがあって2人とも関心した。
「では私はそろそろ」
早速切﨑先生は席を立ち実行に移した。
「打ち上げの埋め合わせしてくださいね」
比呂斗が念を押すと一瞬止まったが「わかった」といって職員室へ向かって言った。
後日切﨑先生に結果を聞くと大分ショックを受けていたという。




