十六夜が風邪引いた
「ゲホッ、ゲホッ!」
十六夜は咳と怠さ、頭痛がしてソファで休んでいた。
「きつくても学校いったほうがいいぞ」
十六夜の横には看病していた比呂斗の姿があった。十六夜が風邪と伝えると比呂斗はすぐに向かってきたようだ。
「わかった。なんとかしてでもいく」
十六夜は体の怠さに刃向かいながらなんとか起き上がり部屋に着替えるために部屋に戻ろうとする。
「少し手伝うよ」
そういって比呂斗は十六夜をもう少し休憩させて、部屋に行き制服を取ってきた。
「ありがとう」
彼女はお礼をいい、次の行動を察した比呂斗は「俺も支度するから一旦帰るわ」
といって家に戻った。
十六夜はなんとか着替えをすませ家の前で比呂斗と合流した。
「大丈夫か?」
「なんとか」
比呂斗は心配そうに彼女にいうがちょっと動いて少し楽になったのか家の時よりは動けるようになっていた。だがマスクをつけているので少し息苦しい。
「今日は部活休みにするか」
その言葉に十六夜は反論できない。今日ぐらい休んだとしても今月号にはあまり支障はないのでそこは不幸中の幸いだった。
寄り添いながらなんとか学校へ着いた十六夜は教室の椅子座るとすぐに顔を伏せて寝た。比呂斗は少し疲れたのか椅子に座り少し「ぼー」としていた。
「どうした比呂斗、そんな顔して」
源が声を掛けてきた。源にあらかた状況を説明すると、「は~ん」といって納得したようだった。
「看病するのはいいものの比呂斗までかかったら本末転倒だな」
と笑って席に戻り携帯をいじった。比呂斗は疲れたのか顔を伏せて寝ていた。
何とか、5時間目まで十六夜は保ち休み時間には顔を伏せている。昼休みに保健室で寝ていたようだが、熱は上がって、風邪も少し登校前よりひどくなっているようだ。クラスの女子が数人が十六夜の心配しに近寄った。
「ねぇ、十六夜ちゃん大丈夫?」
声を掛けられた十六夜は微かな力を発揮し、首を縦に振った。それを見た女子たちは、大きすぎず小さすぎない声で、
「ひどくない?彼女が風邪引いているのに無理やり学校連れてきたりして~」
と聞こえないぐらいに比呂斗に向かって言っている。比呂斗には聞こえておらず、表情変わらず源と話していた。聞こえていた十六夜はそのことに否定したがったが力が入らず、誤解を解くことができなかった。
そのまま六時間目、終礼が終わり、比呂斗は担任の切﨑先生にあることをお願いする。
「わかったわ、任せてちょうだい」
すると切﨑先生は了承し、十六夜を連れて、教室から出ていった。
「あなたなにおねがいしたの?」
十六夜が出ていくと、笹草が声を掛けてきた。
「いや、先生に病院に連れて行かせたんだよ。俺にはすぐ連れていく手段がすくないからな。丁度財布も忘れてしまったし」
「そういうこと」
そういうと納得したように教室から出ていった。
比呂斗は部活を休みにしようかと思ったものの、6月の依頼以外の新聞記事をどうするか決めたくてすることにした。
「あんた噂になっているわよ。彼女を風邪なのに連れてきたって」
そのことには比呂斗も頭を抱えていた。
「それはちゃんと理由があるさ」
「理由?」
瑠衣が首をかしげていた。
「ああ、十六夜は家の事情から進路は就職になんだよ。そして就職するにはまずは皆勤をしたほうがいいって親がいっていたからな。だから行かせた。
その理由に瑠衣と智は驚いていた。
「就職?!あんなに頭いいのに?」
二人は進学希望だと思っていたようだ。おそらくほとんどの人にきいてもおんなじ反応をするだろう。
「そう、それなら納得がいくわ、なら部活はおしまいね。早速十六夜ちゃんのところへ行きなさい」
瑠衣はそういって比呂斗に手を振る。
「鍵は俺達に任せて!」
智も同意して、比呂斗は「なら任せた!」といって部室を出た。
「いったわね」
「いったね」
二人は比呂斗を見送ると紙を中央に置いた。
「なら私達二人で記事を考えよ。二人ばかりに任せられないからね」
「そうだね」
そういって二人は30分ほどかけてどうするか考えた。そしてなんとか7月はどうするか決まり、部室を出ようとした。
「ねぇ、橘。春風がでてくる前、『鍵は俺に任せて』って言わなかった?」
「言ってない、言ってない俺は『俺達』っていったぞ?」
慌てて反論する智をみて瑠衣は笑った。
「ふふ、なんのことかしら?それといつの間にか『僕』から『俺』に変わっているわよ?」
その指摘に智は少し思い出した。
「そういえば、姉に言われて変えたんだよ。最初は慣れなかったけど、いつの間にか慣れていた」
「ふぅ~ん、そう。私はそのほうがいいわよ」
そういった途端、智は顔を赤らめた。「はっ!」と気が付くともう瑠衣の姿はなかった。
「やられた」
と頭を抱え、智は鍵を閉めて部室を出た。
比呂斗は家に帰るとすぐに十六夜の家にきた。
「大丈夫か!」
入ると早々十六夜の部屋に入った。すると十六夜は苦しそうにしながらも寝ていた。
「ん?」
机のほうをみると手紙が置いてあった。それを読むと、切﨑先生が書いた手紙だった。
『症状は風邪。
熱は約39.0。
薬は書いてある通りに飲ませなさい』
それをみた後に薬をみると、2種類ほどあり、玉薬と粉薬があった。そして朝昼晩の食後に飲むようだった。
「よかった。なんとか大丈夫だったか」
学校に行かせるのは実際のところ比呂斗も反対だったが、高校入学前に比呂斗に就職希望を伝えたときの顔を思うと賛成せざるを得なかった。
「私、高校卒業したら就職する。もうみんなに迷惑かけたくないから」
その眼は決意と覚悟が混じっていてあまり十六夜がみせない眼だった。それゆえ、比呂斗はその顔を忘れたことがなかった。
「どうしよう。比呂斗寝ちゃってるよ」
十六夜が起きると、そこには椅子に座って寝ている比呂斗の姿があった。
「少しは体が楽になった。明日には熱は下がるかな」
そういって自分の額と比呂斗の額と比べた。すると少し十六夜のほうが熱い。
「心配してくれて、ありがと」
そういって十六夜は携帯電話を取り出し、比呂斗の妹、色葉に電話した。
「もしもし比呂斗寝ちゃったけど、迎えにきてくれない?寝起きだと階段からから落ちそうなんだよね」
そういうと電話越しにため息が聞こえた。
『大丈夫だよ。お兄ちゃんは寝起きはあれだけどさすがに・・・・ダイジョウブだよ。それとお兄ちゃん今日はそっちに泊めてていいですよ。明日回収しにいきますから』
少し心配になったが笑った。それにつられて色葉も笑っていた。
『では、お兄ちゃんを頼みますよ』
「私は何もできないけど」
『いるだけでいいんですよ』
そういって電話が切れた。十六夜は比呂斗をみると「はぁ~」とため息をつき、物置部屋から布団を取り出して部屋に敷いた。そして比呂斗を起こさぬよう寝かせた。
「疲れた~」
寝かせ終わると十六夜は汗だくになっていた。
「風呂入ろ・・・」
そういって十六夜は風呂を目指した。その時にもう体が動かせていることに気が付くのはその数分後だった。




