表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/17

第17話「初撃」

 黒が、脈打つ。

 ドクン。

 ドクン、と。

 まるで、こちらの様子を探るみたいに。

 だが――

(さっきまでとは、違う)

 クロノは、空を見上げた。

 歪みの流れ。

 脈の間隔。

 広がり方。

 すべてが、ほんのわずかに“読める”。

「……来る」

 低く言う。

 ミナが、隣で息を整える。

「……おk」

 軽い返事。

 だが、今までよりも静かだった。

 無理をしていない。

 無理を隠してもいない。

 ただ、“やる前提”で立っている。

(いい)

 クロノは、一歩踏み出した。

 空間が軋む。

 だが――

 崩れない。

 まだ、持つ。

「ミナ」

「ん」

「合わせろ」

「……まかせて」

 短いやり取り。

 それだけで、十分だった。

 黒が、膨らむ。

 来る。

(今だ)

「——止まれ!」

 ミナの声。

 強い。

 迷いがない。

 空間が歪む。

 黒の動きが、鈍る。

 完全じゃない。

 だが――

(止まった)

 “わずかに”。

 それでいい。

「そのまま維持しろ!」

「……っ、やってる!」

 声が震える。

 だが、途切れない。

 クロノは、さらに踏み込んだ。

 一歩。

 二歩。

 距離が縮まる。

 黒が、揺れる。

(抵抗してる)

 押し返そうとしている。

 だが――

(間に合う)

 手を、伸ばす。

 起点へ。

 あと少し。

 あと――

 その瞬間。

 黒が、強く脈打った。

 ドクン、と。

 圧が、来る。

「っ……!」

 空間が歪む。

 押し戻される。

 だが。

「——まだ!」

 ミナの声。

 さらに強く。

 空間が、ねじれる。

 黒の動きが、一瞬だけ止まる。

(今しかない)

 クロノは、踏み込んだ。

 そして――

 触れた。

 起点に。

 その瞬間。

 世界が、反転する。

 視界が裂ける。

 情報が、流れ込む。

 だが。

(止まるな)

 意識を、掴む。

 手を、離さない。

 そして――

「……っ、動け」

 押す。

 ただ触れるんじゃない。

 “変える”意識で。

 起点が、揺れる。

 初めて。

 明確に。

 反応する。

(通った)

 確信。

 次の瞬間。

 黒が、大きく歪んだ。

 広がりが――

 一瞬だけ、崩れる。

「……っ!?」

 ミナが息を呑む。

 空の亀裂が、わずかに閉じる。

 ほんの一部。

 ほんの一瞬。

 だが――

 明確に、“戻った”。

「……やった」

 クロノが、呟く。

 初めてだった。

 世界が、“崩れる以外の動き”をしたのは。

 だが。

 次の瞬間。

 黒が、暴れた。

 ドクン!!

 強く。

 激しく。

 反発。

 空間が、弾ける。

「っ……!」

 クロノの体が吹き飛ぶ。

 地面に叩きつけられる。

 視界が揺れる。

 息が詰まる。

 それでも――

 目は、逸らさない。

 黒を見る。

 起点を見る。

 その奥。

(……効いた)

 確かに。

 ほんのわずかだが。

 “変えた”。

 だが同時に。

(足りない)

 全然。

 決定打には、遠い。

「クロノ!」

 ミナの声。

 振り向く。

 膝をついている。

 息が荒い。

 だが、立っている。

「……今の」

「……ああ」

 短く答える。

「効いた」

 断言する。

 ミナの目が、少しだけ見開かれる。

「ほんとに?」

「ほんとだ」

 即答。

 迷いはない。

 そして――

「でも」

 一拍。

「このままじゃ、足りない」

 はっきりと言う。

 ミナは、少しだけ息を整えて。

「……そっか」

 と、呟いた。

 悔しさはある。

 でも、折れてはいない。

 むしろ――

「じゃあさ」

 顔を上げる。

「もっとやればいいんでしょ?」

 単純な答え。

 だが。

 クロノは、わずかに笑った。

「……そういうことだ」

 黒が、再び脈打つ。

 さっきよりも、強く。

 明確に。

 こちらを“敵”として認識している。

(いい)

 それでいい。

 もう、“繰り返しの中の存在”じゃない。

 これは――

(戦いだ)

 クロノは、立ち上がる。

 ミナの隣に並ぶ。

 空を見上げる。

 歪みの奥。

 起点。

 そして、そのさらに奥。

(届く)

 まだ遠い。

 だが――

 ゼロじゃない。

「……次は」

 小さく呟く。

「もっと削る」

 黒が、応えるように脈打つ。

 ドクン、と。

 強く。

 だが。

 もう、怖くはなかった。

 初めて。

 この世界に――

 “傷をつけた”のだから。

読んでいただきありがとうございます。

少しでも続きが気になったら、フォローや評価いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ