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君逝く朝に  作者: 杉山薫
第2部 修学旅行 第1章 小林さくら編
17/45

1日目 その4

 食堂で夕食をとったが味なんかしなかった。みんなは美味しい美味しいと言っていたが⋯⋯。理由は簡単だ。委員長から聞いた『恋愛未来日記』の噂。1年以内にみんな死んでしまうなんて、もう、生きた心地がしない。私は生きた心地がしないまま部屋に戻ってシャワーを浴びる。シャワーから戻ると部屋は真っ暗だった。


おそらく私がスッピンを見せたくないと思っていると、委員長が気を利かせてくれたのだろう。別に委員長くらいだったら見られてもよかったんだけど⋯⋯。


私はそのままベットに横になり、布団を頭からかぶり眠りについた。


 その夜は不思議な夢を見た。内容も不思議なのだが、朝起きても鮮明に覚えている不思議な夢。




暑くて臭くて、そんな街。道はアスファルトではなく砂利道。そんな道を私は穴があいている小さな靴で歩いていく。小さいといえば視点も低い。おそらく子供なのだろう。人通りはない。


通りに不思議な色の見覚えのないテントがある。ふと見ると入口のお婆さんがうとうとと寝ている。汚い字で書かれている店の名は『未練堂』。私の足はテントの入口へと吸い込まれていくかのようにテントの入口へと来た。お婆さんはまだ寝ている。私はそのままテントの中へと入っていった。


テントの中は薄暗い。当然、エアコン設備もなく、壁には扇風機が立てかけてある。外もそうだがテントの中はさらに暑くて臭い。


『なんだ。ずいぶん汚えガキが入ってきたな』


男とも女ともとれない年老いた声がした。


『ここは未練堂。お前の未練を一つだけ選べ』


私が黙り込んでいると、その声は話を続けた。


『じゃあ、奥の部屋へ行け』


その声に導かれて私は奥の部屋へと入った。


ここは森。

泉の端に私は立っている。

どうやら子供ではないらしい。

でも、大人でもないらしい。


森を出るために光が指す方向へと歩いていく。森を抜けると一台の荷馬車があった。荷馬車といっても農産物を載せるような簡単な荷台が付いている馬車だ。


荷馬車にはお爺さんが乗っている。日焼けして皺くちゃな顔を向けて私に向かって乗りなと言った。私が荷台に乗るとお爺さんは荷馬車を動かす。荷台も簡単なものだし、砂利道なので座っていられないぐらいの乗り心地を我慢していると大きな屋敷が見えてきた。荷馬車は大きな屋敷の玄関で停まる。お爺さんに降りなと言われ私は荷台を降りた。程なくお爺さんは荷馬車で何処かに行ってしまった。


そして、屋敷の玄関が開く。身なりの整った紳士が出てきた。私を見ると彼は眉間にしわを寄せてこう言った。


「名前は?」


「辰之助」


私の口が勝手に動く。


「辰之助、今夜は遅い。あそこで寝なさい」


彼が指差す方を見ると小さな小屋がある。私は何も言わずに小屋へと歩いていった。


どうやら馬小屋のようだ。私は干し草が積んであるスペースへと歩いていくとそこでバタリと倒れ込んだ。


疲れた⋯⋯。


「なんだ。ずいぶんと汚えヤツが来たな」


誰かがそう言った。


ここには私と馬しかいない。

異世界だと馬でも喋る。

喋るかもしれない⋯⋯。


私はそのまま眠りに落ちた。


次に目が覚めるとホテルのベットの上だった。

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