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君逝く朝に  作者: 杉山薫
第2部 修学旅行 第1章 小林さくら編
15/45

1日目 その2

 こうして私のファーストキスはロマンチックな要素ゼロで終わってしまった。まあ、相手が橋本龍之介君なのが唯一の救いだ。


さっきの違和感の正体がわかった。


クラスのみんなが私たち二人を視界から外している。間違いない。旅行バックがオソロなのも誰も反応しないし、事故のようなキスも誰も気付かない。


気付かない?

本当に?


なんだろう。

何かの壁で守られているような気がする。


だって、橋本龍之介君は文化祭以来、女子の人気が高いっていう噂があるのに、なんで誰も私たちを気にしない。

てか、『恋愛未来日記』、1日日付がズレてるよ。こういうのは心の準備が必要なんだからね⋯⋯。


私と橋本龍之介君は気まずくなって京都駅まで無言で俯いていた。


 京都駅に到着すると清水寺に移動するためバスに乗った。私の隣の席は委員長。


「そういえば、あなた達、東京駅から京都駅までどこに行ってたの?」


委員長が私に話しかける。


はあ?


「どこにって、私も橋本君もずっと席にいたわよ」


「そんなことないでしょ。あなた達の席はずっと空席だったわよ。まあ、みんな気を使って気付かないふりをしてたけど⋯⋯」


みんなには私と橋本龍之介君の姿は認識されていなかったということ?


「ところでさ、ホテルの部屋の話なんだけど⋯⋯」


私は必死に話題を変える。


「私もあなたに大事な話があるの」


「恋バナ?」


委員長の言葉に私は即座に聞き返す。すると、委員長は黙って頷く。


えっ、意外!


「へええ、じゃあ楽しみにしてるね!」


「そんなに楽しい話じゃないわよ」


アレ、怒ってる?


 その後、清水寺を団体観光し昼食、八坂神社や金閣寺を団体観光してホテルに到着した。私の部屋は二人部屋で委員長と同室。おそらくこれは委員長の力が働いている。他の女子はみんな六人部屋だから⋯⋯。


「まあ、シャワーは寝る前でいいんじゃない。あんたにも都合があるんだから⋯⋯」


委員長はそう言って部屋についているシャワーを浴びにいった。私はその間に修学旅行のしおりを開いて、もう一度明日の予定をチェックする。心の準備がなかったとはいえ、キスの後に無言だったのは非常にまずい。恋人お試し期間はこの修学旅行までだから、なんとかしないとお試し期間終了で破局になってしまう可能性もある。なんとか明日の自由行動中に橋本龍之介君と二人きりになっていちゃいちゃしなければ⋯⋯。ロマンチックな嵯峨野がベストだけど、伏見稲荷の鳥居も捨てがたい。


そんなことを考えていると、委員長がシャワーから戻ってきた。


この後、委員長から衝撃的な言葉を聞くとも知らずに私は修学旅行のしおりをベットに寝転んで熱心に見ていた。

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