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君逝く朝に  作者: 杉山薫
第2部 修学旅行 第1章 小林さくら編
14/45

1日目 その1

 今、私は電車に乗っている。すごい緊張している。普段、電車なんて乗らないっていうこともあるが、この後橋本龍之介君と大宮駅で待ち合わせをするからだ。東京駅まで二人きり。つまりデートってことだ。考えれば考えるほど緊張してくる。てか、なんで土曜日の朝なのにこんなに人が電車に乗ってんだよ。用がないなら家で寝てろよ。そんなことを考えていると大宮駅に着いた。


まめの木。

まめの木。

あった。

これか⋯⋯。


人がいっぱいいすぎて橋本龍之介君がどこにいるのかわからない。


「おはよう、小林さん」


橋本龍之介君の声。


「おはよう、橋本君」


ヤバっ!

今、絶対ニヤけてる。


「遅れるといけないから行こうか」


橋本龍之介君は大宮駅の改札の方へ歩き出していく。


「そういえば何がわかったの?」


突然、橋本龍之介君は振り向き私に話しかける。


わかった?

返信したよね⋯⋯。


私はスマホを取り出しラインを確認する。


アレ、大好きっていう返信がない。削除された形跡もない。

誰かに誤送信した?

マズい!

橋本君が大好きって誰に誤送信しちゃったの⋯⋯。


「へへへ、内緒」


私は真っ赤な顔で橋本龍之介君にそう言うのがやっとだった。


 東京駅までの電車は大宮駅始発の電車に乗った。二人で隣同士で座った。私は用もないのに橋本龍之介君に身体を寄せる。橋本龍之介君の体温が伝わってくる。いいよね、恋人同士なんだから⋯⋯。お試し期間中だけどね。


「小林さん」


橋本龍之介君が耳元で囁くので私は彼に顔を向ける。橋本龍之介君は真っ赤になって一言だけ言った。


「明日、嵯峨野で」


明日、嵯峨野で?

何。

何。

何!


そんなこんなで東京駅に到着してしまった。新幹線も隣同士の席だけど、クラスのみんなの目があるからそんなにくっつけない。やがて新幹線のホームに集団で歩いていく。すると、委員長が私に近づいてくる。


「おはよう、小林さん。よろしくね」


委員長とは今回の修学旅行は二日とも二人部屋で同室なのだ。私としてもスッピンを見られるのが委員長一人なので都合がいい。


「こちらこそよろしく」


もう、こういうのはいいんだよ!

早く橋本龍之介君とイチャイチャさせろ。


やがて、新幹線が静かにホームへと滑り込んくる。橋本龍之介君はすでに席に着いていた。


ふふふふふ、計画通り!

橋本龍之介君は窓際、私は通路側の席。そして、こっち側は太平洋側の窓。海が好きとか言えば橋本龍之介君にくっつき放題。明日のためにボディタッチに違和感を感じさせないためにやるだけやっておく。なんてたって明日は橋本龍之介君とキスをすることになってんだから!

頼むぞ、『恋愛未来日記』!


「旅行バック貸して。棚に上げとくよ」


そう言って、橋本龍之介君は私の旅行バックを棚に上げる。


橋本龍之介君とオソロの旅行バックが⋯⋯。

二つ並んでいる。

アレ?

なんだろう。

この違和感⋯⋯。

ま、いいか。


それより、それより。

早く海見えないかな。


神奈川県に入ると海が見え始める。いや、まだ我慢だ。東京湾程度ではしゃぐって絶対に不自然だよ。太平洋だって新幹線だったらもうすぐ見えるはず。そこまでは我慢。しかし、このひじ掛けは邪魔だな。


ええい、今のうちにあげちゃえ!


私がひじ掛けを上げると橋本龍之介君はさりげなくひじ掛けを下げる。


クソ!

彼女がひじ掛け上げたのを下げる彼氏って、おそらく世界で橋本龍之介君だけだよ。

もういい。

その瞬間がきたら一瞬でひじ掛けを上げて、橋本龍之介君に身体を預けちゃうもんね。


よし、小田原を過ぎた。

もうすぐ太平洋が私たちの眼前に現れるはず。

見たことないけど⋯⋯。


来た!


私はひじ掛けをさっと上げ、窓際の席に⋯⋯。


えっ?


私の目の前には橋本龍之介君の顔があった。

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