信号機の無い横断歩道
お話思いついた時に、不定期で書きます。
残業が終わり、車に乗り込む。今日を頑張れたのは明日が休みだからだ。帰ったらとりあえず、一杯呑もう。エンジンをかけ、会社の駐車場を後にする。今日も一日、いつもと変わらない平凡な日だった。同じ毎日を繰り返す日々。俺の人生は本当にこれで良いのだろうか。何かもっとこう…刺激が欲しいところだ。急に大金が入り込んだりしないだろうか。宝くじでも買ってみるか…。辺りはすでに暗く、歩行者は少ないが、車はまぁまぁ走ってる。おそらく周りも帰りなのだろう。中にはこれから仕事という人もいるかもしれない。だが、皆んなが皆んな仕事というわけでもない。休日の人だっているはずだ。帰ったら呑む以外に何をしよう。録画してたドラマでも見ようか。確か、何話分か溜まってたはずだ。まだ途中しか読んでいない小説もあったはずだ。
なんでもないいつもの帰り道。いつも通りに車を走らせ我が家へ向かう。大きい道から外れたところの小道を走ると、いつもそこには信号の無い横断歩道がある。ここらに住んでる住民がよく使う横断歩道であるが、ここを使う人はあまり見た事がない。何故なら、皆は横断歩道関係なく道路を渡っているからだ。実際にこの通勤路を使い始めて数年の間、律儀に横断待ちをしている人がいたのは数人しかいない。その横断歩道に差し掛かる頃、横断待ちをしている人を発見した。顔は確認できないが、女性のようだ。当然、自動車側には停止義務があるので止まる。ちょうどそのタイミングで対向車が来たが、その車は止める事なく通過してしまった。よくある光景ではあるが、本来ダメな行為だ。歩行者妨害になってしまうし、実際歩行者が渡り始めていたら危ないところだった。そもそもこっちが止まっているのだからもう少しまわりを見るべきだ。と思いながら、歩行者の方へ視線を戻す。
そこに先程いた女性はいなかった。車が通った一瞬で消えてしまった。周りに隠れるようなスペースもない。自分の見間違いか?だから対向車は止まらなかったのだろうか?たぶんきっと疲れてるのだ。帰って休もう…。そう思い車を走らせる。その瞬間、後ろから凍るような冷たい視線を感じた。
「キミ…… 見えテるンだネ……。」
後部座席のそいつはうすら笑いを浮かべて、こちらを見ているような気がした。