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第24話 新しい従者(追加もあります)

 side:リース


「凄い……第六騎士団が手も足も出ない」


 一人、また一人と帝国騎士が倒れていく。

 相手はクロト辺境伯ただ一人。

 しかも武器を持たず、魔法も一切使用していない。


 時々際どい攻撃が来ても、それらを冷静に対処し、動揺する気配すら感じさせない立ち回り。

 リースの想像を遥かに上回る戦いだった。

 

「流石ですね。最初から隙が一切ありません」


 と、夢中になっているリースに黒髪眼鏡のメイドが話しかける。


「先制攻撃も綺麗だった。突っ込んでくる敵に対して、恐れず膝蹴りを……」


「違いますよ」


「え?」


 リースの言葉を否定する。

 なんで? 辺境伯様は先制攻撃でペースを掴んだと思うのに?

 どういうことかと首をかしげていると、


「最初というのは、ご主人様が報酬を提示した時からです」 


 まさかの答えにリースは驚いた。








「これで最後!!」


「ごふっ!!」


 残された一人の首元を思いっきり殴る。

 既にフラフラだった身体が地面に倒れ、僕の周りで動く者は一人もいなくなった。


 1vs5の戦い。

 勝ったのは僕だ。


「まさか第六騎士団を一人で……クロト様がここまでお強いとは」


「私が基礎的な部分を仕込みましたから。後、ご主人様は素質があります」


 おー、イヴが褒めてくれた。

 素直に嬉しい。

 後でいっぱい甘えよう……と考えていたら、リースか僕の方へ近寄ってきた。


「言葉だけであそこまで操れるの?」


 なるほど、リースも僕の作戦に気づいていたらしい。

 多少はイヴの入れ知恵があるとは思うが、戦いに興味を持つのは将来性がある。


 というワケで種明かしの時間。


「第六騎士団は欲深そうだったからな。報酬で煽って、強気な言葉で挑発すれば指揮系統は乱れる」


 まず第六騎士団を見た時に思ったのが、欲深そうな連中だって事。

 騎士としての誇りや気品というのは一切感じなかったし、酒とかお金が好きそうだった。

 

 だから餌を与えた。

 金貨一枚という最高の報酬を。


「最初から最後までバラバラだった。みんなお金と倒す事しか考えられなくて、協力という大事な部分を忘れていた」


「そーいう事。あいつらの敗因は、チームプレーを修正できなかった事だよ」


 金貨は一人だけしか貰えない。

 しかも相手は小さなガキで自分より上の立場。

 テンションはMAXまであがるだろう。


 だから油断した。

 冷静さを失って混乱し続けた。


 後は不意打ちと1体1で戦えるよう立ち回れば、僕のペースは保たれるってワケ。 


「さぁ、これで剣が無くても戦えることは証明できた。僕は名誉や称号なんかは一切気にしない。どうする?」


「……わかった」


 僕の戦う姿と結果を見て、リースも覚悟を決めたらしい。

 膝をつき、頭を下げて忠誠の誓いを口にする。


「リースにもできることがある。それを教えてくれた”マスター”に、リースは忠誠を誓います」


「マスター?」


「リースの故郷では自分の主をマスターと呼ぶ。それに従っただけ」


「なるほど……まぁ、僕もリースを雇えて幸せだよ」


 マスターってゲームじゃないんだから……悪い気はしないけど。

 とにかくこれでリースを雇う事ができた。


 当初の予定とは少し外れてしまったけど、ミスリル鉱石を売って美少女騎士を手に入れる。

 僕のハーレム計画が大きく前進したような気がして、内心ワクワクしていた。

  

 ガチャッ!! 

 ダダダダッ!! 


「リース様!!」


「怪我はありませんか!?」


「ん?」


 と、ちょうど頭をあげたリースの元へ鎧を着た四人の少女達が駆け寄ってくる。


「この子達は?」


「第十六騎士団の仲間。新米の女性騎士はリースが見ていたから」


「なるほど、つまりリースの部下ってワケだ」


 え、めっちゃ可愛くない?


 リースは言うまでもなくだけど、他四人も負けず劣らず美少女揃いだ。

 オタサーにいたら間違いなく姫になれる。

 てか、数少ない女性騎士って全部リースの元に集中してたのかよ!!


「皆に謝らないといけない事がある。リースは帝国を抜けて、クロト辺境伯という新しいマスターへ仕える事になった」


「な、なんと!?」


「リース様が新しい所に!?」


 突然の発表に驚く美少女四騎士。

 

「本当にごめんなさい……でも、リースにとって新しいマスターは居場所になれる」


「「「「……」」」」


 申し訳ない気持ちもある。

 だけど、それ以上にリースの意思は固い。

 彼女の思いを理解したからか、この場でリースの考えを否定する者は一人もおらず、


「「「「リースさまぁあああああ!!」」」」


 全員泣き叫びながらリースに抱きついた。


「泣かないで……たまに会いに行くから」


「ざびじいでず〜!!」


「ずっと一緒がよかったです〜!!」


 あらら、可愛いのに鼻水まで垂らしちゃって。

 リースの事をそれだけ慕っていた証拠だろう。 

 感情を爆発させた部下の姿にリースまで涙目になっていた。


 リースと彼女達はそれぞれ別の人生を歩む。

 いつかまた会えるその日を楽しみにして。

 今日を、明日を生きて行く……







「メルクリスさん、彼女達も一緒に雇って大丈夫ですか?」


「え? 構いませんが……」


 ま、別れなんてないけどね!!

 だって、あの子達も可愛いし!!


「おーい!! 感動の別れをやってるとこ悪いけど、お前らも雇う事にしたぞー!!」


「「「「えっ」」」」


 感動ムードをぶち壊す僕の発言に、その場にいた全員がキョトンとした。












「今日は最高だなぁ!! ミスリル鉱石は売れたし、美少女騎士なんて五人も雇えた!!」


「ですがミスリル鉱石は少し安くはありませんか? 他国に売った方が利益は出たかと……」


「イヴ、それは違う」


 帰りの馬車の中。

 イヴが先程の取引について聞いてきたので、僕の考えを話した。


「僕が求めたのはどれだけ”高く”売るかじゃない。どれだけ”安全”にミスリル鉱石を売るかだ」


 高く売れるに越したことはないけど、それは難しい話だと思っていた。

 貴重なミスリル鉱石を売るなら国がいい。

 だけど安全にミスリル鉱石を売れる国なんて、フェルナン帝国しかない。


「他国に売るルートを開拓した所で、帝国や盗賊の介入があってゴタゴタする未来しか見えない。だけど帝国なら運送費や護衛の人員などを負担してくれる」


 フェルナン帝国がミスリル鉱石を高く買い取れないのは、少しだけ予想していた。

 だからその他雑費を負担してもらったり、人員をこちらで雇ったりさせてもらった。 


 ウチは圧倒的に物資も人員も不足しているし、このタイミングで帝国の助けを借りられるのはありがたい。


 加えてフェルナン帝国とガーランド領に”繋がり”が生まれる。

 この繋がりは今後の領地改革において武器になる。

 

「つまり値段は最初から気にしていなかったと?」


「長期的に考えるとそれがベストなんだよ。後は可愛い人材も雇いやすいし?」


「ご主人様の欲深さを舐めてました……」


「ははっ、まだまだ底はあるからなー?」

 

 売れてよし、美少女も雇えてよし。

 僕にとってこの取引は大成功だ。


 問題は明日から忙しくなりそうな所だけど……癒しが増えたから大丈夫か。

 やっぱ美少女は最高だな!!


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