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第23話 素行が悪いなら利用しよう

「りょ、領主!? て事は最低でも伯爵以上の貴族……!!」


「辺境伯だ。ま、無礼な態度で怒りはしないから安心しろ」


 あれだけ威張っていた騎士共がビビりだす。

 

 そりゃそうか。

 騎士っていえば一番上でも伯爵出身だ。

 しかも弱そうな女の子に絡むヤツらの家なんて、大したことないに決まってる(偏見)


「やめんかお前達!! 我がフェルナン帝国の大事な取引相手だぞ!!」


「す、すみません」


「クソッ、なんで辺境伯がこんな所に……」


 メルクリスさんの怒号で静まり返る訓練場。

 未だ反抗的なヤツもいるが、帝国騎士というのは意外と野蛮なのか?


「で、お前がリースか。今日はお前を雇う為に来たんだが」


「雇う? リースを?」


「そうだ。リースは僕が求めているものを持っている素晴らしい人材だ。だからウチの領で働かないかスカウトに来た」


「?」


 イマイチ状況が呑み込めていない様子。

 いきなり雇うぞと言われても何で? ってなるだろうし。

 経緯やスカウト理由、そしてどこに惹かれたのかを詳しく説明しないと……


「ガッハッハ!! リースを素晴らしいだなんて、最近の辺境伯様は目が腐ってるらしいぜ!!」


「剣も持てない騎士を引き取りに来るだなんて、ご苦労なこった!!」


 ……あー、またうるさくなった。

 怒られたばっかなのに、こいつらは相当素行が悪いらしい。


 今は無視無視。

 リースの事が先だ。


「剣を持てないってのは本当か?」


「剣というか、リースは武器が持てない。持とうとすると、トラウマが蘇って吐いてしまう」


「ふむ、なるほど」


 武器を持つだけ、ってのは割と重症だな。

 剣を持たない騎士なんて聞いた事ないし、周りから虐められるのも無理はない。


「剣は騎士の勲章。それを持てないリースは騎士失格。だから……リースは辺境伯様の期待に応えられない」


 リースが思う期待というのは”騎士”としての期待。

 騎士として剣を振るい、盾となって主君を守る。


「剣が無くても戦えるか?」


「?」


 でも、僕が求めているのは戦える女性かどうかという部分だけ。


 騎士とか称号とか地位とか、そんなものは関係ない。

 可愛くて戦えて僕がお触りできるならそれでいい。


「剣が無くても、殴ったり蹴ったり魔法使ったり色々あるだろ」


「それなら戦える。最近はそういう戦い方を練習していたから」


「素晴らしい。200点満点合格だ」


「えっ」


 剣がないと戦えません、って感じじゃなくて助かった。

 リースを雇う材料は揃ったし、後はメルクリスさんに話をするだけ。


「すみませんクロト様……彼ら第六騎士団は素行が悪い事で有名で、帝国でも手を焼いているのです」


「解雇はしないんですか?」


「実力はある上に、仕事もそれなりにこなしますので……」


 強いけど素行に問題があるって……結構めんどくさい連中だな。

 魔族の脅威がある以上、強いヤツらを解雇するわけにいかないってのも理解できるけど。


(リースを安心させる”材料”に使うか)


 虐められる、という事は普段から自信がない可能性がある。

 剣がないと騎士として失格。

 そんな思い込みがあるからだろう。


 だけど僕が求めているものは違う。

 彼女に戦う自信をつけさせれば、戦える美少女戦闘員という素晴らしい逸材が誕生する。


(ついでに僕のアピールもできるしな……くっくっくっ)


 まとめると自信つけて僕に対する好感度をあげちゃおう!! って話だ。


「メルクリスさん、彼らと模擬戦をしてもいいですか?」


「模擬戦ですか!? 彼らの実力は騎士団の中でも上位ですよ!?」


「剣が無くても戦えるって証明したいんです。後、辺境伯が舐められるのも嫌なので。お願いします」


「……わかりました」


 メルクリスさんに頭を下げ、彼ら第六騎士団と戦う許可を貰う。


「イヴ、リースを頼むぞ」


「かしこまりました」


 リースの事はイヴに任せ、僕は彼らの前に立つ。

 自分より小さい者が喧嘩を売ってきた事に対し、第六騎士団の連中はニタニタと嬉しそうな表情を浮かべていた。


「へっへっへ……世間知らずのお坊ちゃんが来たな」


「辺境伯を殴れるんだ。思いっきりやらないとなぁ!!」


 いいねぇ、楽しそうで。

 上の人間をボコボコにできる。

 しかもいくら殴っても許されるって話だ。


 帝国に仕える騎士団も上に対して何かしらの不満を抱えているのだろう。


「おい第六騎士団!! 僕を降参させたら、金貨を一枚やるぞ!!」


「ふぅううううう!!」


「こいつは最高だ!! 勝って遊びまくろうぜ!!」


 そんな彼らへ更に嬉しいご褒美のお知らせを告げる。

 金貨一枚という破格の報酬に第六騎士団は沸き上がり、戦意も向上した。


「じゃ、まずは俺から……」


「一人一人ってのも面倒だ。まとめてかかってこい」


「は?」


 が、僕は一人ずつちまちま戦うなんて、めんどくさい事はしない。


「あぁ、そうだ。ついでに剣も捨てておくか」


「「「「はぁ!?」」」」


 そういえば武器を使わずに戦うんだった。

 余裕そうな態度で第六騎士団を見下しながら、腰に付いている剣をイヴの方へポイっと投げる。


「て、てめぇ……」


「調子にのってんじゃねえぞ……」


 報酬、

 舐められた態度、

 しかも相手は小さいガキ、

 

 五人もいる第六騎士団を相手にたった一人で挑み、しかも武器を使わないと宣言する。

 彼らは今、上がりまくった感情に支配されていた。


「どうした? 金貨は”最初に”降参させたヤツ一人だけだぞ? はっ……まさか辺境伯にビビってるんじゃ」


「「「「騎士団舐めんなクソガキが!!」」」」


 そして僕の煽り言葉を合図に、第六騎士団が一斉に僕へ飛び掛かった。


「まずは一人!!」


「がっ!?」


 真正面にいた一人の騎士へ僕も素早く突撃し、装甲のない顔面へ膝蹴りをした。

 膝蹴りを喰らった騎士はそのまま倒れ、僕はすかさず彼の首根っこをガシッと腕で拘束し身動きを奪う。


 そして人質を盾にする犯人のように彼を僕の正面に持っていき、残りの騎士団と向き直った。


「こ、こいつ!!」


「盾にしやがってずりぃぞ!!」


 辺境伯の正面に仲間がいてうまく攻めれない。

 そんなイライラが第六騎士団に溜まっていく。


(正面は二人、右斜めに一人、残りは……後ろか)


 人質で時間を稼ぎつつ、状況を整理する。

 ヤツらの狙いとしては、後ろにいる騎士の攻めを起点に大きく行動に出るのだろう。


 単純だがいい作戦だ。


「はぐっ!?」


 僕は人質に取った騎士の股間を思いっきり蹴り上げ、そのまま正面二人の方へと投げ飛ばす。


「がぁ!?」


「やれ!! 人質はいない!!」


 正面二人が投げ飛ばされた騎士にぶつかって動きが取れない。

 だが残りの二人は動ける。


 人質が投げ飛ばされたタイミングで、彼らも僕に攻めかかった。

 

「うわっ!?」


「これで動けるのは一人!!」


 まずは右斜めから来る騎士の足元を蹴って転ばせる。

 そして後ろから迫る騎士が剣を振り上げ、僕に攻撃を仕掛ける。


「ほれ、プレゼントだ」


「っ!? す、砂が目に……!!」


 僕は剣を振り上げた騎士に向かって、手に持っていた砂を顔面に向かって投げた。

 騎士は動きを止め、目に入った砂を取ろうと必死であがく。


「二人目!!」


「うあああああああああ!!」


 追撃として彼の目元に指を突き立て、更に視界を奪った。

 騎士はそのまま地面に倒れ、目元を抑えて苦しみ続ける。

 

 これで残りは三人。

 ふふふ、楽しくなってきたなぁ。


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