第22話 美少女はどこにいる?
「まず一つ目。ミスリル鉱石の輸送に関して、輸送中の護衛を派遣してもらう事は可能ですか?」
「それくらいでしたら是非。貴重なミスリル鉱石を、奪われるワケにはいきませんからね」
よし、護衛を雇う事はできた。
今のガーランド領でミスリル鉱石を安全に運ぶ手段がなかったから助かる。
「二つ目。ミスリル鉱石を採掘する人材の派遣もお願いしたいのですが」
「……少し難しいですね。採掘する人材は外部から雇う事になるので、予算が下りるかどうか」
「でしたらミスリル鉱石の金額から差し引くというのはどうでしょう? 十名雇うとしたら、ミスリル鉱石の取引価格を金貨三十枚にするとか」
「えっ? よろしいのですか?」
「鉱石を掘る人材は求めていたので。むしろそちらから派遣して頂く方がありがたいです」
「でしたら、採掘に関する人材派遣も話を進めます」
どうせお金を払って採掘する人材を雇わないといけないんだ。
雇うなら正式に手続きをしている帝国からの方が都合がいい。
採掘作業者がミスリル鉱石を盗んだ時とか、責任を押し付けられるからな。
「そして三つ目ですが……帝国にいるメイドか騎士を、こちらで雇いたいです」
「ウチのメイドか騎士を……ですか?」
そして本命。
ミスリル鉱石で資金が安定するなら、人を雇うお金にも余裕が生まれる。
以前まではイヴ一人を雇うのが限界だったが、ミスリル鉱石の取引が進めば何人か雇える。
つまり僕の美少女ハーレム計画も進むってワケだ!!
「申し訳ないですがメイドは無理ですね……最近、人材の整理をしたばかりで、誰一人として抜けられるのは困るのです」
「なるほど……帝国も色々と大変ですからね」
イヴを含めた美少女メイド軍団に癒される計画が先延ばしになってしまった。
どうせ雇うなら優秀な人材が欲しかったし仕方ない。
けどメイドは欲しかったなぁ……ちょっと残念。
「ですが騎士なら可能です。ちょうど派遣用の人材を整理する前でしたので」
「本当ですか!!」
「えっ、あぁ、はい……」
やばっ、興奮して声が大きくなっちゃった。
ミスリル鉱石の採掘や盗賊から領を守る人材がちょうど欲しかったんだよなぁ。
金目のあるところに悪い奴らは来るし、定期的に見回りしてくれる騎士がいるのは心強い。
メイドがいないのは残念だけど、騎士でも可愛い子はいるハズ!!
「よろしければ訓練場へ行かれますか? ちょうど訓練中ですので」
「お願いします」
その場にいた全員が立ち上がり、メルクリスさんの案内の元訓練場へ向かう。
「ご主人様の好みに合う人がいるといいですね」
「当然だ。雇うならずっと見ていて飽きない子がいい」
小声でイヴと話しながら、お互い頬をニヤつかせる。
さぁ帝国騎士よ。
お前たちの底力を見せてもらおうじゃないか!!
「こちらが訓練場です。今、摸擬戦をしているのが第一騎士団と第二騎士団です」
「あぁ……さ、流石、ですね」
うん、知ってた。
ここ男しかいねぇ。
広い訓練場を見渡す限り、男男男……
むさ苦しい騎士達が無数に湧いている。
女の子なんて一人も存在しないし見当たらなかった。
「おかしいだろ。いくら騎士でも、綺麗な女性の一人や二人いるって」
「女性はメイドか秘書になります。最近では女性騎士も増えている、とはシノビから聞きましたが」
「あー、そっちかぁ……」
ただでさえ騎士は男社会。
加えてメイドや秘書という選択肢があるんじゃ、女性がいないのも仕方ないか。
「ウチでは騎士を騎士団という小規模なグループに分けております。有事の際、指揮系統が乱れた時でも個々の判断で動けるので」
「という事は第一、第二以外にも騎士団が存在するのですか?」
「はい。流石にこの二つを譲ることはできませんが、第五騎士団以降でしたら」
「よければそちらも見て大丈夫ですか?」
「勿論です。他の者はこちらにいます」
訓練場の奥に更に広い場所があるらしいので、そちらに向かう。
まだだ!! まだいるはずだ!!
フェルナン帝国が誇る騎士だぞ!?
可愛い女性の一人くらい絶対に……
「いない……」
いませんでした。
ベテラン騎士団から新人騎士団まで全部見たけど女性はゼロ。
おかしいだろ!!
いくら男社会でも一人はいるって!!
「すみません、もう少しゆっくり考えてもよろしいですか?」
「構いませんよ、雇うのはクロト様ですから。紅茶でも持ってきましょうか?」
「お願いします」
メルクリスさんが近くにいた従者に命令して紅茶を持ってこさせる。
ここにいる騎士達は優秀だ。
ベテランは動きの一つ一つが洗練されており、剣の振り方や立ち回りまで綺麗だった。
新人はまだまだ動きがぎこちないが素質を感じる。
実力者から金の卵まで。
隙はないんだけど……全員男なんだよなぁ。
「諦めますか?」
「いや、雇うと言っておいてナシはダメだろ……実力は優れてるし」
でも雇うなら可愛い女の子がいいなー!!
こういう所で好き放題するのが、現世で僕がやりたい生き方だからさ。
あーあ。
実は隅の方に隠れてましたーというパターンはないか……
「おらおら、剣も持てねえ雑魚が騎士を名乗ってんじゃねぇよ」
「……ごめん」
ん?
訓練場の隅でガラの悪そうな騎士達に絡まれてる美少女が……
って美少女!?
騎士団に美少女がいるぞ!!
「メルクリスさん、彼女は?」
「あぁ、彼女ですか? 彼女はリース、第十六騎士のリーダーです」
第十六騎士団って結構後ろの方だな……新人さんか?
暗い場所でも輝いて目立つ、長い銀髪。
青い瞳は彼女のクールな印象を強くさせ、高身長と肉付きの少ない全身と合わせて美しさを引き出している。
モデルみたいだ。
前世なら間違いなくイン〇タとかでバズれるポテンシャルがある。
「失礼ですが、私やソフィアさんより身体の凹凸はありませんよ?」
「イヴはわかってないな。可愛い女性に触れる、という部分が大事なんだよ」
騎士で美少女、間違いない。
リースこそ僕が求めていた人材だ。
胸はないし、お尻も小さくて足も細い。
だが、引き締まった女性の身体というのも素晴らしい。
色んな美少女がいると楽しみが増えるからな……ふふふ
「彼女はトラウマが原因で剣が持てず、周りの騎士から標的にされ……ってどうしましたか?」
「リースと話がしたいです。直接話してきてもいいですか?」
「え? だ、大丈夫ですが……」
そう告げた後、僕はゆっくり立ち上がる。
ニヤつく頬を抑えながら、ガラの悪い騎士に絡まれているリースの元へ近づく僕。
剣が持てない理由はまだ聞いていないが、直接聞けばいいだろう。
「ほぉ、随分楽しそうじゃないか」
「な!? だ、誰だてめぇ!!」
剣を押しつけるガラの悪い騎士の腕を掴み、無理やり僕の方へ向かせる。
「誰……?」
「クロト・ガーランド、ここから南の方で領主をしている」
ぽかんとするリースの姿。
リースよ、よく見ておくといい。
今後、お前が仕える事になる領主の姿をな。




