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第19話 合格発表の時間です

「ご主人様!!」


「クロト!!」


 盗賊と共に領の入口まで帰れば、イヴとソフィアが息を切らしながら出迎えてくれた。


「お迎えありがとう。盗賊はなんとか説得できたよ」


「ビックリしたわよ!! 急に巨大な鎧を召喚したと思ったら乗り込むんだから」


「フハハハ!! 僕もこいつの力は予想外だったな」


 鉱山から盗賊が逃げていた場所まではそれなりの距離がある。

 全力でダッシュしても二〜三十分はかかるであろう距離を、このメタルライダーは一瞬で詰めてしまった。

 

 想像以上の力に搭乗者である僕がビビったくらい。

 無駄に高いパワーを抑えるのがやっとだった。


(っ……あっぶねぇ、転びそうになった)


 何もない地面で転びそうになる。

 メタルライダーによる負荷がまだ回復仕切っていないんだ。


 吐き気はするし頭痛は酷いし、何より魔力がスッカラカンになって力が入らない。

 せめて盗賊に弱みを掴まれないよう、やり過ごしたいんだが……


「ご主人様」


「ん?」


 と、僕の方へイヴが近づく。

 頬に手を添え、整いすぎた彼女の顔へと僕の顔がゆっくり運ばれる。


「んっ……」


 そして、いつの間にかキスを交わしていた。


「ちゅ……んんっ……んぁ……」


 激しい水音。

 絡み合う舌と舌。

 柔らかいイヴの唇に僕の口元がはむはむされている。


「ぷはっ……どうでしたか?」


「……最高だ」


 僅か十秒の出来事だったが、疲れきった僕をげんきにするには十分すぎた。

 今は何も感じていない僕の口元が、イヴの柔らかさや甘い香りに飢えているくらいだ。


 イヴもかなり大胆になったなぁ。


「ちょ、ちょちょちょ!? こんなとこで何してんのよ!?」


「魔力供給は口と口で交わすのが一番効率的です。慣れないメタルライダーを操って、ご主人様はかなり疲れていましたから」


「ほんとだ。さっきより楽になった……」

 

 力がさっきより入る。

 吐き気や頭痛も少し落ち着いた。

 キスによる魔力供給って結構効果あるんだな……


「なーによ、メイドとばっかイチャイチャして。変態スケベ淫乱野郎……」


「僕はソフィアともイチャイチャしたいけど?」


「っ!! そ、そんな口説き文句で屈するなんて思ったら、大間違いよ!! ふんっ」


 頬をぷくっと膨らませながらそっぽを向くソフィア。

 かわいいヤツめ。


「さーて、僕達の熱い行為を見てたんだから、仲間は集まったんだろうな?」


「す、すぐに連れてきます!!」


「見てたっていうか、見せつけられたでしょ……」


 否定はしない。

 まぁ、見られて恥ずかしいものではないし、別に気にしてはないのだが。


 僕達は”一応”盗賊が逃げないように、後を追いながら仲間を集める姿を眺めた。

 一人、二人と仲間は集まり、やがて小規模な一団にまでなった。


 そして彼らにも先ほどと同じ説明をする。


「そ、そんな高待遇で!?」


「俺、盗賊やっててよかった……!!」


「ひゅう!! こいつはラッキーだ!!」


 始めは渋い顔をしていたが、徐々に納得してもらい、最終的に僕を慕うようになる盗賊達。

 気分を良くした彼らは僕の言うことに従い、大人しく屋敷までついてきてくれた。


「流石ですね、ご主人様」


「アンタってほんと恐ろしいわ……」


 身内が僕の狙いに気づいてるとは知らずに。











「さて、まずはお前たちのやってきたことについて教えてもらおうか」


「へ? なんでいきなり……」


「能力検査だよ。僕が何もしてないヤツを雇うお人好しだと思ったか?」


「いえいえ!! じゃあ俺から……」


 屋敷に来た彼らは、今までやってきた事を洗いざらい全部話してくれた。

 経歴、というか犯罪歴だな。


「俺は主に盗みを!!」


「俺は人をさらって奴隷商に売ってたぜ!!」


「殺人でも何でもやりましたよ!!」


 嬉しそうに自分が今までやってきたことを語りだす。

 同じ盗賊でもやっていることは違う。

 

 が、犯罪に変わりはない。


(窃盗、略奪、人さらい、空き巣、墓荒らし、財宝漁り……)


 どいつもこいつも酷い内容だ。

 倫理に反したことを、自慢話のように語り出すんだから滑稽だ。


「……最低」


 小言で呟き、杖を握る力を強くするソフィア。

 僕の領内でも、人さらいは何度か行われていたのだろう。

 

 メタルライダーで脅した例の盗賊も子供をさらっていたし。


「もういい。全力のアピールに感謝する」


 ただ、僕の世界とは違う裏社会の話というのは意外と面白かった。

 僕の欲望を叶えるためにも、そういった暗い世界から人材を雇う可能性だってあるし。


「さてと。検査する前から決めてはいたが、今から合格発表を行う」


「おお!!」


「待ってました旦那ァ!!」


 盗賊は猿のように騒ぎ立てる。

 輝かしい明日を送れると誰もが信じている。


「いやぁ、素晴らしいね。裏社会でしぶとく生きてきたお前たちを僕は賞賛したい」


「そんなそんな!!」


「これくらい普通ですって!!」


 ニヤつく頬。

 思わず垂れるよだれ。

 彼らの欲望が、余りにも醜い欲望が。

 見ていて楽しい、気分がいい。


 分かるよ? 

 僕だって叶えたい欲望があるんだから。


「報酬は何だっけー?」


「ミスリルだー!!」


「超高級な代物!! 明日から大金持ち!!」


「そうだ!! これを手にすれば人生が変わる!! お前たちは人生を変えたいだろう!?」


「「「おおー!!」」」


 だから決めたんだ。

 その欲望を叶えるために、盗賊たちを利用すると。


「さぁ、結果発表といこう。今回の合格者は……」


 お前たちは必要なんだ。

 大事なんだ。


 だから……











「残念。お前ら全員”不合格”だ」


 僕の”欲望”のために、死んでくれ。

 ズバッ!!


「へ?」


 次の瞬間。

 一人の盗賊の首が、僕の抜いた剣によって跳ね飛ばされた。


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