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第17話 そこは宝の山だったらしい

「この緑色の石ってそんなに価値があるの?」


「世界中で枯渇している上に最上級の魔道具や武器を作る際に必須なので……鉱石一つで金貨五十枚くらいでしょうか?」


「五十!? 金貨一枚あれば王都で一ヶ月は暮らせるわよ!?」


 この前、ターンクス家に返した金額が金貨百枚だ。

 それが鉱石二つで取り戻せるってか?

 ミスリル鉱石ヤバすぎだろ。


「この農具は誰が作った? そしてどこに置いてあった?」


「十年くらい前に領の人達が見よう見まねで作った……って話は聞いたけど」


「十年……外からミスリルが持ち込まれるワケがないし、採掘したのは領内か」


「恐らく長く閉ざされた領ですので、誰もミスリルの価値に気が付かなかったのかと」


「だろうな」 

 

 移民が多いとはいえ、この領に技術者はあまりいない。

 誰も価値に気が付かないのも仕方ないか……


「よし、とりあえず手土産を持って聞き込みだ!!」


 これは領地改革、どころか借金を一気に返済できるカギになるかもしれん。

 僕達は大量の農具を抱えながら、領民が集まる場所へ向かった。


 後、ついでにターンクス領から持ち帰った、乾燥に強い食品植物の種も一緒に。






「みんな集合ー!! 領主様が新しい農具を持って来たわよー!!」


「「「「おおー!!」」」」


 ソフィアの一声で領民が一斉に集まる。


「ありがとうございます、ありがとうございます!!」


「た、種まで貰えるのですか!? 非常に助かります!!」


「これから領民一同、全力でこの地を開拓するのでよろしくお願いします!!」


 借金や水路工事に比べれば農具なんて安い物。

 それでも僕に本心から感謝し、頭を下げる領民を見るのは気分がいい。


 クククッ、安いご機嫌取りだったな。


「おい!! この農具を作ったヤツはいるか!? いたら僕の元に来い!!」


「は、はい!!」


 僕はボロい農具を掲げて呼びかける。

 すると、ヒョロっとしたおっさんが怯えながらやって来た。


「す、すみません……何せ素人でそれっぽい物しか作れず……」


「謝罪はいらん。で、この農具に使った鉄鉱石はどこで取った?」


「ここから遥か南にある山です。今でも鉄鉱石は取れると思いますが、質が悪くて売るには適さないかと」


「まだ”鉄鉱石”はあるんだな?」


「え? は、はい」


 よし、これでミスリル鉱石が残っている可能性が高くなった。

 後は……


「案内しろ。そこにガーランド領を救う物があるかもしれん」


「わ、わかりました!!」


 この目で確かめるだけだ。











「ねぇ、ガーランド家ってどれくらい借金があるのよ?」


「ん?」


 例の鉱山へ向かう途中、ソフィアから話を振られる。 


「残っているのが利子含めて金貨二千三百枚だから……返せるのは二百年後か?」


「に、二千三百……ケタが狂ってる……」


 そりゃ貧乏領になるわなってくらい大きすぎる額だ。

 僕だってこの額を見た時は軽く絶望してたし。


 このミスリル採掘が借金返済に大きく近づかせてくれたらいいけど……


「こちらです、領主様!!」


「ほぉ、意外とデカいな」


 山の頂上が小さく見えるくらい高い。

 ただ入口付近に落ちてある鉄鉱石の残骸を見る限り、鉱山なのは本当らしい。


 早速適当に開けられたであろうボロボロな入口から入り、中を探索していく。


「”フラッシュ”!!」


「お、助かる」


「ふふん、これくらい大したことないわ」


 中は暗かったがソフィアの魔法が松明代わりとなり、全貌が明らかになる。

 

「は!?」


「嘘……ですよね?」


「待って待って待って!? これって……」


 光によって晒された鉱山の中を見た僕達は全員驚く。

 貴重なミスリル鉱石があちこちから生えてたから。 

 

 もう一度言う。

 ”金貨五十枚の価値”があるミスリル鉱石があちこちに生えていた。


「借金返済ってどころじゃないだろ!? むしろ事業として成立できるぞ……!!」

 

「こ、これ売ったらどれくらいになる? 大金持ちも夢じゃない!?」


「夢のような話が現実に……この量は予想外すぎますよ」


 あの細長いクリスタルが一個だよな?

 見えてるミスリル鉱石をざっと数えても十個以上はある。


 入口でこれだ。

 奥に行けばもっとある可能性もある。

 

 だとしたら、少しマズいかもしれん。 


「そこのお前、もう帰っていいぞ。助かった」


「は、はい!!」


「後、この事はあまり広めるな」


「わかりました……?」


 案内してくれたおっさんを先に鉱山から返す。

 強く口封じをして。

 

「ど、どういう事よ? これさえあれば借金が解決できるんでしょ?」


「僕達が持つには”多すぎ”なんだよ。予想だといくつか落ちてるくらいだと思ってたのに……くそっ」

 

 喜んでばかりではいられない。

 何個か売って借金の足しにしよう……くらいの感覚だったのに。

 

「侵略を受ける可能性がありますね。他貴族どころかフェルナン帝国、それどころか他国や魔王軍から」


「えぇ!? あ、これだけ貴重な物がいっぱいあるから……」


「この大量のミスリル鉱石は争いの火種になるぞ」


 ここは最高クラスの資源倉庫だ。

 

 最強の兵器、魔道具、武器。

 それらを生成する為にはミスリルはほぼ必須らしい。

 ただでさえ魔王軍とやり合っている時だ。


 より強い武器を求めればミスリルは確実に必要になる。

 どんな手を使っても絶対に手に入れたい。

 そんなヤツらは山ほどいるからな。

 

「採掘班は領内の人間を使うとして……あぁ、ソフィアは確定な」


「なんでよ!!」


「ミスリル鉱石、欲しいだろ?」


「やるわ!!」


 よし、これで一人確保。

 後はソフィア経由で信頼できそうな……ってそうだ。


「この領地って盗賊がいるんだよな?」


「えぇ。普段は領民にまぎれて生活してるとか」


「鉱石の価値がバレたらめんどくさい事になるぞ……まずはそっちだな」


 盗賊が絡むと領内で内乱が起きてしまう。

 それこそミスリルを求めて、色んな地域から盗賊がやってくる可能性だってある。


「問題はそいつらをどうやってあぶりだすか……」


「た、大変です!!」


「どうした!!」


 と、僕を案内してくれたおっさんが息を切らしながら戻ってきた。


「さっき若いヤツが、子供をさらって外に逃げました!!」


 まずい、既に盗賊が潜んでいたか!!

 嫌な予感がしながら、僕達は全力で走り出す。


 何が何でも盗賊を外に出してはいけない。

 一人残さず根絶やしにするんだ!! 


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