第15話 謎の兵器、そして深い夜を共に
「ロボットが召喚魔法……すごいな」
確かにロボットなんて召喚できたら最強だ。
大型のモンスターだろうと、魔族の軍勢だろうと、このロボット一つで消し飛ばせる。
と、視界が再び暗黒に染まり、目を開けるといつもの執務室の光景が広がった。
「っ……はぁ、はぁ」
「おかえりなさいませ」
僅かな時間で落ち着けたからか、イヴの表情に少しだけ余裕が生まれた気がする。
正直、質問に答え続けられるのか怪しい状態だったが……このまま続行しよう。
「あのロボットを召喚するのか?」
「ロボット、とは? あれは”メタルライダー”という召喚兵器ですが……」
そっか、この異世界にロボットなんて単語は存在しないんだ。
テレビでガ〇ダムを放送してるワケでもないし。
で、あのロボットは”メタルライダー”という名前らしいが……
「選ばれた人間が使える、って感じの召喚魔法か?」
「その通りです。勇者か王族にのみ受け継がれるという最強の召喚魔法にして召喚兵器、それがメタルライダーです」
勇者か王族……基本的には国が保有する最後の切り札って感じか?
「で、メタルライダーはどれくらい強い?」
「フルパワーで国一つが滅ぼせます」
「は?」
おいおい、想像以上にヤバいじゃん。
銃も機械もない世界でロボットがいたら、そうなるのも納得はできるけど。
どんな兵器も魔法も魔族も。
このメタルライダーの前ではゴミ同然だ。
「安心してください。フルパワーを発揮できたのは過去1000年の歴史でも一人しかいません。が、魔族に圧をかけるには十分かと」
「そんなに凄いなら、さっさとメタルライダーで魔王軍を滅ぼせばいいだろ」
「メタルライダーは大量の魔力を消費する上に、搭乗者にかなりの負担をかけます。動けるのも二〜三分程度ですし、魔族を滅ぼすには時間が足りません」
なーるほどね。
滅茶苦茶強い代わりに滅茶苦茶コストがかかると。
二〜三分しか動けないんじゃ乱用はできないし、そもそも国一つを滅ぼせるレベルの兵器を運用するだけでリスクは大きい。
(下手したらメタルライダーを使った後に、他国のメタルライダーから侵略を受けたり……とかな)
こいつは核兵器だ。
他国に使うだけで世界情勢を変えかねない程の恐ろしいパワーを秘めている。
メタルライダーが存在するという事実だけで圧力としてはとてつもないだろう。
なんちゅう物をイヴは見せて……待て、
「なんでメタルライダーをイヴが持っているんだ? 勇者でも王族でもないだろ?」
「メタルライダーは神から継承される物です……しかし、私達パーシバル家にはもう一つの役割がありました」
「役割?」
イヴは僕の方をじっと見つめた後、再び口を動かす。
「”神”ではなく”人間”が見定めた者にメタルライダーを継承させる事」
その言葉で僕はローエンの目的を理解した。
「ローエンがイヴを狙ったのは、魔王軍にメタルライダーを継承させるためか」
「……はい」
メタルライダーなんてヤバい兵器、魔王軍にとっては脅威だ。
聞いた感じ、魔王軍にメタルライダークラスの兵器はなさそうだしな……
だけどメタルライダーが魔王軍の物になれば?
自由に扱えるようになれば?
侵略者として最強の兵器を求めないワケがない。
「メタルライダーの継承は私が”心を許した者”にしか行えません。だからヤツらは……っ!?」
ゴロゴロゴロ!!
ピシャー!!
メタルライダーの話を続けていた時、雷の音が屋敷内に響き渡る。
「うわっ、とんでもない雨だな……ってイヴ?」
「はぁっ……はぁ、はぁ……!!」
イヴが頭を抑えて身体を身体を丸めている。
震えながら呼吸を荒くさせ、目元には涙まで溜めていた。
拷問の話をしていた時のように。
「雷が怖いのか?」
「か、雷魔法が、実験でよく使われて……」
「……なるほどな」
そりゃあ雷が怖くなるワケだ。
電気は拷問道具として、前世も恐ろしさの対象として描かれてきた。
それを与え続けられたイヴは、心の奥底まで雷の恐怖が植え付けられているのだろう。
「うーん」
「申し訳ございません……」
しかし、まいったな。
もう少し話が聞きたかったのに、イヴがこんな感じじゃ続けられそうもない。
夜も遅いしここは……
「一緒に寝るぞ、イヴ」
「はい?」
さっさと寝て明日にしよう。
「すみません……本当に情けなくて……」
「謝らなくていい。イヴという存在を全身に感じながら眠れるんだ。むしろご褒美だろ?」
「そう言っていただけると幸いです」
暗い寝室。
貴族らしいキングサイズのベッドの上で、僕とイヴは抱き合いながら眠りにつく。
僕の方がやや身長が小さいせいか、イヴという存在に全身が包まれてしまう。
脂肪という脂肪から与えられる、柔らかい天国。
欲深い男性からすれば、この状況は至高の瞬間といえるだろう。
「本当にイヴは素晴らしい。大人びた顔立ちは美しく、身体の肉は男性が求める場所にしっかり付いて……おまけに果実の甘い香りが僕の欲望を更に刺激してくれる」
「さ、流石に恥ずかしいです……ご主人様」
弱っているからか、年頃の女性みたいに可愛げのある反応を示すイヴ。
その様子が僕の心臓を激しく動かす。
欲に従い、彼女の胸元に顔をうずめれば、彼女の鼓動がうるさく鳴り響くのを感じた。
「……ごめんなさい」
「何故謝る」
「ご主人様に忠実なメイドになれなかったからです。ここ最近、ご主人様の迷惑ばかりかけて……」
ただ、イヴは申し訳ない気持ちでいっぱいらしい。
僕としてはイヴの失敗を利用して、エッチな欲望を叶えてもらって満足しているのに。
「本当に迷惑だと思っているなら、僕の”欲望”をもっと叶えてもらおう」
「欲望? 一体何を……っ!?」
それでも納得できないと言うのなら。
僕の欲望を身体に教え込むまで。
力を入れて起き上がり、イヴを僕の下になるように押し倒す。
「いつか、そういう”行為”をする日が来ると思ってただろ?」
「は、はい……」
僕に押し倒され、顔を赤らめるイヴの姿は新鮮で愛おしかった。
いつもクールで淡々と仕事をこなしているのに。
完全に弱りきって、
感情を素直に出して、
”行為”の前には恥ずかしそうにする。
「イヴみたいな可愛いメイドがいてくれて、僕は本当に幸せだ」
「ご、主人様……」
あぁ、素晴らしい。
僕はイヴを好き放題できる。
幸せだ。
物凄く満たされていく。
だけど……本当の”幸福”はその先にある。
「僕の欲望を満たしてもらおうか、イヴ」
「……かしこまりました」
それから僕達は雷や豪雨の音が聞こえなくなる程、互いの身体を激しく重ね続けた。




