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私、聖女じゃなくて壁になりたいんですが!?  作者: KANAN
第二章 学校生活
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第36話 さよなら学校生活

 エリザベータの家から帰り夕食を終えると、いつものようにジャンが淹れた紅茶を飲みながらアリスは家族に気持ちを告げることにした。

「お父さん、パパ、お兄ちゃん、ロニー。何も聞かないでくれてありがとう。私、やっぱり学校を辞めようかと思う。入学金も短剣も、色々みんなに協力してもらったのに、ごめんなさい。」


 アリスが深々と頭を下げると、ジャン達は何も言わずにリデルの方を見た。リデルは紅茶を一気に飲み干すと、

「・・・髪を切られたから辞めるのか?」

 と聞き返した。アリスは顔を上げ真っ直ぐリデルを見返し、

「違うわ。これはきっかけに過ぎない。私は騎士として、主人のために身を投げ出せるような気持ちがない。自分のために、家族のために生きたい。そんな気持ちでこれ以上騎士学科に在籍するのは失礼だと思ったから、辞めようと思う。」

 とリデルの問いをキッパリと否定した。

 リデルはそれを聞くとフッと笑い、アリスの頭を大きな手で髪が崩れるほどに撫でた。

「ならいい!!嫌なことがあったから辞めると言うなら、これからのアリスのためにならないから反対しようと思ってたが、余計だったな。学校には俺から連絡しておくからもう気にしなくていい。

 アリス、俺もジャンもニックもロニーも、みんなアリスのことが大好きで大切だ。お前は優しい子だからずっと我慢していたのかもしれないが、これからはちゃんと相談しなさい。いいな?」

「うん。ご、ごめんなさい。」


 リデルの暖かい手と家族の笑顔に、アリスはまた涙を堪えきれずわんわんと子供のように泣き出してしまった。

「お、お父ざーん!!!!!」

「おいでアリス、よしよし。よく頑張ったな!一年間お疲れ様。」


 一昨日もジャンの腕の中で泣き疲れて寝てしまったアリスは、今日はリデルの腕の中でそのまま寝てしまった。



 ♢



 翌朝、アリスが窓から差し込む光で目を覚ますといつものベッドが非常に窮屈だった。

(ん・・・なんか暑い・・・)

「お姉ちゃん、起きた?」

「え、ロニー?なんで私のベッドで寝てるの?」

「覚えてない?昨日の夜、僕もお姉ちゃんが悲しんでるの見て悲しくなっちゃってたら、お姉ちゃんが僕に抱きついてきてそのまま寝ちゃったから、2人でお父さんに運んでもらったんだよ。」

「そうだっけ・・・。」

「もう悲しくない?スッキリした?」

「ロニー、うん!ありがとう。」

「良かった!じゃあ朝ごはん食べに行こ!」

(前世では一人っ子だったけど、この天使すぎる弟が可愛すぎてお姉ちゃん最高!!)



 それからアリス達は朝食を終えるとロニーの作業場でカルタやリバーシの着色を行った。

 そんな日々が何日も過ぎ、学校に行く前の生活がまたアリスの日常として戻ってきた。



 リデルが学校へ手紙を出してから数日後、ガルドが店にやって来た。ジャン含め3人は冒険者時代に何度か顔を合わせたことがあったのだ。

 アリスはガルドに一言お礼を告げると、リデルの指示でロニーと一緒にトルドの元へ材料の受け取りに行かされ、ガルドは客間へと通された。普段温厚なジャンですらもお茶を出そうとはせずピリついた空気が漂っていた。


「・・・久しぶりだな、リデル。ジャン。お前らのパーティは随分前に解散したと聞いていたが。」

「ガルドも相変わらずのようですね。鈍感な貴方が担任だったから、アリスちゃんへのイジメがこんなに酷くなったのでしょうかね。」

「それは・・・すまなかったと思ってる。」

「ジャン、止めろ。・・・アリスは頭が良く優しい子だ。髪が切られなければきっと俺たちには学校で起こっていることを隠し続けただろう。髪で済んだのは良かったよ。」

「・・・アリスの髪を切ったのは男爵の子息で、その子は退学処分となったよ。

 試験の結果、アリスは実技試験が棄権となり今年度は首席にはなれなかったが、筆記試験はトップの成績だった。だがその、彼女の望む商業科への編入はやはり難しかった。騎士学科にはなるが、俺はまた来年も彼女に教えたいと思っている。彼女は伸び代があるんだ、お前らも冒険者だったんだから分かるだろ?」

「貴方ねぇ・・・。」

 バンッ!!!


 ジャンの言葉を遮るようにリデルは机に勢いよく拳を叩きつけた。

「誰が何て言おうと、アリスはあの学校はもう行かないと決めたんだ。アリスが望むなら剣は俺が教える。それで十分だ。書類を置いて帰れ。」

「・・・分かったよ。ここにサインしたらそれで退学手続きは完了だ。」

 リデルはガルドから奪うように書類を受け取り、すぐに記名して突き返した。


 ガルドはもう何も言わず、残念そうな顔をしながら出て行った。




「いつになってもお貴族様ってのは変わらないな。平民を見下して何をしたって構わないと思ってやがる。」

「リデル・・・大丈夫、アリスちゃんは強い子だ。こんなことで折れる子じゃない。また一緒にお店を盛り上げていこう。ね?」


 ジャンは震えるリデルの肩をそっと抱いた。



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