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私、聖女じゃなくて壁になりたいんですが!?  作者: KANAN
第二章 学校生活
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第32話 進級試験

 季節は周り、紅葉していた木々も枯れ始めた頃、アリス達は進級試験を迎えた。



「アリス!もし当たっても負けないからね!」

「うん、全力でお互い挑もう!恨みっこなしね!」

「あー俺は筆記試験の方が不安・・・頭に叩き込んだの出ていっちゃいそうだぜ。」


 騎士学科の進級試験は筆記試験、そしてトーナメント制の模擬試合となっていた。筆記・実技ともに成績不良のものは即退学という噂だが、実際のところは大半の貴族・騎士家系の令嬢・令息に対してそのようなことが行われたことがあるかは分からない。一方でどちらも優秀な成績を収めた者には、2学年の学費免除に加え相応の報酬が与えられるというのは全生徒周知の事実であった。


(去年の報酬はミスリル製の剣だったて話だよね。プラチナより上の素材なんて街では見たこともないけど、流石王国直属の学校の試験。私の銀の剣だって何十万としたのに、いくらになるんだろ・・・報酬がお金でもらえたら何買おうかな〜。やっぱりロニーにもっとたくさん絵を描いて欲しいし上質な紙もいいな・・・)


「アリス?何ニヤニヤしてるの?」

「あっ、ううん。もし成績上位者に選べられたら報酬ってなんでも良いのかなぁって!」

「アリス余裕だな〜!んーでも、俺ならやっぱミスリルの剣、憧れるなー!」

「私ならもう少しちゃんとした防具がいいかな。2年生からは森に出て訓練することもあるみたいだし、魔法が付与されてて身体能力が上がるのもあるみたいだよ!アリスは?」

「あ、いや私は2人みたいにちゃんと考えてなくて、弟と一緒に本が作りたいから紙がいいな、なんて・・・」

(あーこういうことを言うのは騎士を目指してる2人に失礼だったな・・・。)


 アリスが目を泳がせおどおどとしていると、ハンナとシリウスは顔を見合わせて吹き出した。

「あははっ!アリスらしいね!」

「アリスが本当に選ばれて紙なんて頼んだらきっと伝説になるぜ!!あー腹いてー!」

「も、もうっ、そんなに笑わなくても良いでしょ!ちょっと考えてただけだから!私最後の確認するから先行くね!」

「あ、もう待ってよ〜アリス!」


 アリスが顔を真っ赤にして教室に向かうと、ハンナとシリウスが涙目になりながら笑って追いかけて来た。

 教室に入ると流石に緊張感があふれており、生徒達は黙々と教科書やノートを見返していた。そんな騒がしい教室の中、フェルナンドの周りだけは不思議と静かな空気が流れていた。


「フェル、おはよう。」

「・・・アリス、ハンナ、シリウス。遅かったな。」

 フェルナンドからシリウスが呼ぶようにフェルと言う愛称で呼ぶことを許可されてから、口数こそ多くはないものののアリスとハンナとも友達と呼べる関係性になっていた。



 アリス達も席に着き、筆記試験の定刻数分前に入学試験の際と同様に試験官が入室してきた。机の上のものは全て仕舞い、配布されたプリントと筆記用具のみ。砂時計が試験時間を告げる。全て同じ緊張感だった。ただし今回は試験が早く終わろうとも次の実技試験までは待機となっているため、早く終わったものも見直しなどで時間を潰すしかない。その一点のみの差だった。


(ふー。とりあえず全部埋められた。見直しもしたし、筆記試験は問題ないかな・・・。後は砂時計が落ち切るまで待つしかないけど、せっかくだから新しいお話しでも考えようかな。最推しはもちろんジャン✖️リデルだけど、最近フェル✖️シリウスも推せるなって思ってるんだよね。フェルって寡黙だけど、なんだかんだシリウスのこといつも見てるし、さりげなくフォローしてるよね。シリウスの無邪気さで人気者なのが許せなくて裏ではヤキモチ焼いて「誰のものか分からせないとな。」なんて言ってたりしてー!!!キャーーーー!)


 

「はい、そこまで。試験官が回収して回りますので机の上から手を下ろしてください。」


 アリスの妄想が捗る中いつの間にか砂時計は全て落ち切っていた。静かだった教室が一斉に賑やかになっても自分の世界から抜け出せないアリスを現実世界に連れ戻したのはハンナだった。


「アリス!顔すごいことになってるよ!」

「はっ!ちょっと妄想が捗り過ぎて・・・えっと実技試験に行けば良いんだっけ?」

「もう、試験官の話聞いてなかったの?着替えて自分の剣持って訓練場1に全員集合だよ!みんなもう行ってるから私達も早く行かなきゃ!」


 ハンナに催促され、駆け足で更衣室で準備を済ませる。

(今日もみんな見守っててね!頑張るぞ!)

 アリスはいつも訓練の前に一度髪紐を結い直す。家族とお揃いにした髪紐に気持ちを込め、再度キュッと締め直すと同時に気持ちも整うような気がするのだ。


 アリス達が訓練場に着くと、生徒達が担任のガルドの指示に従い整列していた。

「お前らが最後だぞ!早く整列しろ!!」

「ハイっ!すみません!!」


 整列は背の順となっていたため小柄なアリスは常に先頭。アリスが申し訳なさそうに頭を下げながら列へと並ぶとガルドの耳に入らないような声でひそひそと陰口が聞こえてくる。

「やる気ないなら帰れ。」

「あいつに当たったら叩き潰してやる。」


 前世でもいじめの問題は何度も耳にしてきたが、実際に自分が標的になるのでは心境が全然違った。

(・・・大丈夫。私だって訓練頑張ってきたんだ。いつも通りやれば良いだけ。)




「それではトーナメント制に関して説明する。この箱の中にそれぞれ数字が引いてある。番号の近い順に試合を行ってもらい、最後まで残ったものが一位となる。この中には相性の良いもの悪いものなどそれぞれいるだろうが、運も実力の内だ!試合中は魔法で結界を張って行う為、命に関わるような怪我はしない!本気で挑め!」

(命に関わるって、軽い怪我ならするってこと?)


「それでは最初はアリス、お前からクジを引いていけ!」

「は、はい!」


 箱に手を入れ一枚の紙を引く。

「・・・数字は、3です。」

「よしっ、次の者!!


(3番ってことは2試合目で私の番が来る・・・!)


「よっしゃ、俺は4だ!!おい、平民、よろしくな。」

「・・・よろしく。」

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