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私、聖女じゃなくて壁になりたいんですが!?  作者: KANAN
第1章 環境整備
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第29話 入学準備もバッチリ!

 アリスが夢中で話していると、次第に部屋が暗くなっていった。

「わ、もう日が暮れそうだわ。帰らないと。」

「アリス、お話とっても面白かったわ!私ロマンスの物語は大好きだけど、同性愛の物語だと性別や世間の目とか沢山のことを乗り越えて結ばれるのね。とってもドキドキしたわ!」

「えへへ、そう?ロニー以外に聞いてもらったのはエリーが初めてだからそう言ってもらえてとっても嬉しいわ。」

「ええ、また今度聞かせてね。私も考えてみるわ!」

「それはいいわ!エリーもぜひ考えてみて!一緒にお話を語り合いましょう!」


 アリスはエリーという同じ同人作家仲間ができたことがとても嬉しく、いつの間にか騎士学科への進学のことなど頭から消え去っていた。


 翌日アリスはいつもより念入りに髪を編み込み、リボンを着けお洒落をしてジャンと街へと向かった。

「アリスちゃん、今日もとっても可愛いね。そのリボン、前に買ったやつだね、似合っているよ。」

「ありがとう!パパの髪もいつも素敵に編み込んでるから、今度私の髪もお揃いにして欲しいな。」

「もちろんだよ。じゃあ今日はお揃いの髪飾りでも探してみようか?」

「本当!嬉しい!じゃあお父さんやみんなでもお揃いで着けられるものにしましょう!パパ、早く行こー!」

 アリスがジャンの手を引っ張るように駆け足で歩く姿を街の人たちは微笑ましく見ていた。


(まさか私がパパだなんてね。)

 ジャンにとって女性が性的対象でないわけではないが、リデル以外に心揺らぐ人がいなかったため、自分が親として子供に接する日が来ようとは夢にも思わなかった。



 街に着くとまずは学校から指定されている必要備品を順に買い揃えっていった。アリスは武器屋で試し、指定された鉄製武器は銀の短剣を購入した。鉄・銅・銀・金・プラチナまでが揃っていた中で、鉄を選ぼうとしたアリスを止めてジャンが2ランク上の銀を選択したのだ。

「リデルから言われているんだよ、流石に金以上は難しいけど、アリスちゃんがせっかく使う初めての武器だからね。銀にしておいて損はないよ。」

「パパ、ありがとう。大切に使う!」


 アリスは購入した銀の短剣と剣を挿すベルトを着け、すぐに腰に装備して嬉しそうにくるくるとその場を回った。

(短剣使いってなんか、格好いいじゃない私!魔法は使えなくても剣士も格好いいもんね〜。背中の傷は剣士の恥ー!なんちゃって。)


「さ、これで全部買ったから、あとは髪飾りかな?アクセサリー屋さんに行こうか。」

「あ、あのね私手芸屋さんがいいの!パパが使ってるみたいな色の髪紐を作ってみたくて。」

「ああ、これかい?これは私の母が作ってくれたものなんだ。気に入ってくれたならあげるけど、女の子には少し地味じゃないかな?大きなリボンとかのが良いんじゃない?」

「ううん。これから私騎士になるんだもの、髪の毛は動きやすいように縛った方がいいし、形を変えればお父さん達がミサンガとして使えるでしょ?」

「みさんが?」

(あれ、ミサンガってないのか。)


「ミサンガって言うのは、手首につけるブレスレットのこと!お父さんやニックとロニーは髪が短いから結べないけど、腕につければお洒落でしょ?」

「なるほど、男性でもお洒落をするのは素敵な発想だね。でも私は作り方を知らないけど、大丈夫かい?」

「うん、何となくだけどできる気がするから大丈夫!」

(前世で推しCPの概念ミサンガなら作ったことあるし、映画で流行った時に何個かサンプルで髪用にも編んだことあるから多分作れると思うんだよね)


 ジャンはアリスに言われるがまま手芸屋を訪れた。小さな街の手芸屋には数種類の紐や布が所狭しに置かれていたが、決して色のバリエーションは多くはなかった。それでも前世から物づくりが趣味のアリスにとってはこれほどに心躍る場所はなかった。

 アリスはジャンを緑、リデルを赤、ニックをオレンジ、ロニーを黄、自分に水色を基本とする色に選び、その他に黒と白の紐を購入した。


「パパ、出来上がるまでみんなには秘密にしてね?」

「もちろんだよ、手伝えることがあったら言ってね。」

「うん!パパの髪紐、参考にさせてもらうかもしれないからその時は貸してね!」




 家に戻るなりアリスは早速作業に取り掛かろうと両手を広げて出迎えるリデルにただいまと返すだけで、すぐさま部屋へ向かった。


「アリスも大人になったんだな、前は飛びついて来たのに・・・。」

「ふふ、リデル。私にもおかえりのハグをしてもらえるかな?」

「・・・おかえり。でもハグは無し、っておい、ニックが見てんだからやめろよ!」

「いやもう見慣れたから何とも思わないよ。ジャンさん、アリスの買い物付き合ってくれてありがとう。お帰りなさい。」

「ニックくんもお仕事お疲れ様。夕飯の買い物もしてきたから支度してるね。」

 当初はジャンもニックの前でリデルのスキンシップを控えていたが、時が経つにつれ今までの欲が溢れたかのようにハグや頬へのキスくらいは平気でするようになっていった。ニックとロニーが嫌がっていないという点ももちろんだが、いくら繰り返しても耳まで赤くするリデルの反応が嬉しくてあえて子供の前でやっていることにリデルは気付いていなかった。

 そしてニックやロニーが気を利かせて目を逸らすのとは反対に『もっとやれ』という声が聞こえるかのようにアリスは興奮してしまうため、変わらずアリスの前でのスキンシップが最小限に留められてしまっていることをアリスも気付いていなかった。


(本当似たもの親子だね。)


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