表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、聖女じゃなくて壁になりたいんですが!?  作者: KANAN
第1章 環境整備
28/41

第27話 試験結果が待ち遠しい!

 アリスは締め出されたように学校を出て家に向かって歩いていると後ろから1台の馬車が近づいてきた。


「アリス!お疲れ様!貴方も終わったところだったのね、良かったわ。貴方の家まで送ってあげるから一緒に帰りましょう。」

「エリー、お疲れ様!姿が見えなかったけど一緒のタイミングだったのね。ありがとう。」

「私は別室で受けていたから1人だったのよ。返って緊張しちゃったわ。」

「そうだったの・・・魔法はどうだった?」

「ええ、私は水の適性があるみたいで少しだけど手から水が出せたわ!魔法学科への進学はできそう!アリスはどうだった?」

「・・・私は、魔法の適性はないみたい。でも筆記は全部埋められたし、剣技も試験官に当てることができたわ!」

「え?試験官に当てたの?」

「え?エリーの課題は違ったの?」

「私は素振りをして、その後藁人形を斬れるかどうかだったわ。」


 アリスの試験会場にも、思い返してみれば試験官の傍には藁人形が地面に突き刺さっていた。すぐに素振りをさせられその後も使う様子がないためそう言うものだと思っていたが、アリスが平民であることを知った試験官からの嫌がらせに過ぎなかったのだ。

(あいつ・・・くそー!もっと倒れた時に思い切り殴ってやればよかった!)


「もうっ!私が貴族になって偉くなったら絶対絶対ああいう奴はクビにしてやるんだからー!!!」

「ア、アリス落ち着いて。でも筆記が大丈夫ならきっとアリスは商業学科に入学できるわよ。それにね、何度も言うけどアリスの頼みなら私も、お父様だって、入学金を払うくらいなんてことないわ。学科は違くなっても私アリスと同じ学校に通いたいもの。だから遠慮せずに言ってね?」

「エリー、ありがとう。うん、困った時は相談に乗ってね。」

「もちろんよ、大好きよ、アリス。」


 2人が話をしている内に馬車はあっという間に家に着き、アリスを見るなり家族全員が緊張した表情でおかえりと投げかけた。話を聞きたがっているにもかかわらず、それがアリスにとって嫌なことにならないよう配慮もする家族の優しさが、アリスにとって何より心地よかった。

「・・・魔法は適性がなかったみたい。でも筆記は多分全部できたし、試験官に剣技も褒められたの!お父さんのおかげね。ありがとう。」

「そ、そうか!それなら商業学科か騎士学科のどちらには入学できそうじゃないか!」

「リデル、騎士学科はアリスちゃんの望むところではないでしょう。」

「ううん、王国一の名門学校に入学できればもう騎士学科でもいいわ!まあ騎士の家系の子が騎士学科に行くみたいだから私は多分商業学科になると思うけどね。」

「うんうん、まあ何よりお疲れアリス!今までよく頑張ったな!今日はジャンがいっぱい夕飯作ったんだぞ!」

「お姉ちゃん、僕も手伝ったんだよ!」

「わーありがとう!しばらく勉強漬けだったから、明日からはまた一緒にお店手伝うからね!」


 その日はリデルの言葉通り、アリスの好物ばかりがテーブルにずらりと並び、食べ切れないほどの豪華な夕食だった。



 ♢



 それから毎日アリスは郵便配達員を待つ日々だった。合否の判定はひと月以内に郵便で届くと言われており、あんなにも自信があった筆記の結果すらもどんどんと自信を失っていた。


(あーー、なんかケアレスミスしてたらどうしようー。試験官のこと思い切り殴ったのも逆に減点になってたら嫌だなーあー)


「・・・お姉ちゃん、元気出してよ。これ、僕からのプレゼント。」

「え?・・・な、こ、これは!」

 いつもロニーの作業場でうんうん唸るアリスのために、ロニーが作ったのは1枚のイラストだった。それはアリスが兼ねてからロニーに語る、ジャン✖️リデの顎クイイラスト(ジャンがリデルの顎をクイっと持ち上げているもの)だった。


「ロロロロロロロロロロ!!!!!!」

「ちょ、落ち着いて。お父さん達には見つからないように部屋に隠してね。」

「え、これ、一体どうしたの!?」

「・・・お姉ちゃん元気ないから、何か僕にできることないかなって思って。ずっとそういうイラストが描けたらって言ってたからさ、お姉ちゃんのノート用の紙1枚拝借したの。」

「ロニー・・・!もう、本当にもう!天使!可愛いんだからー!!!!」

「や、やめてよ。もう、恥ずかしいでしょっ!」

 アリスがロニーに抱きつくと、ロニーは恥ずかしがりながらも嬉しそうに笑った。


「ありがとう、これはお姉ちゃんの宝物よ。毎日眺めるわ。」

「いや、別にそんな大したものじゃないから・・・」

「いいえ!いつか紙を手に入れたらロニーの画集を作ってもいいくらいよ!神絵師!」

「はいはい、元気になったならまあ良かったよ。」


(うん、そうよ。食事は満足に出来るようになった!あったかい家で暮らせるようになった!私は自分の力で世界を変えられる!最悪貴族になれなくても、ロニーの才能があれば同性愛への偏見も無くせるかもしれないわ!この世界でも薄い本を広めてやるんだから!!!)



 こうしてアリスは弟ロニーの優しさに励まされ、また1つ新しい目標を得たのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ