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私、聖女じゃなくて壁になりたいんですが!?  作者: KANAN
第1章 環境整備
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第24話 豪華な侯爵邸

 翌日約束の時間通りにアリスとジャンは手紙の送り主、アルベルト = ラーゲルレーヴ侯爵の屋敷を尋ねると、煌びやかな部屋の中に案内をされた。

(わーなんかすごいキラキラしてる!お城の中みたい!)


 前世でも映画の世界でしか観たことのないような屋敷に興奮し我を忘れていたアリスだが、ノックの音で現実に戻された。

(来た!!!)


「お待たせしてすまないね。」

「ラーゲルレーブ卿、お久しぶりでございます。商人ギルドの際は大変お世話になり、ご挨拶が遅くなりまして申し訳ございません。」

「いやいや、君がギルドを退職したと聞いた時は残念に思ったが、今はあのカルタを作った店で販売しているとはね!その子が例の?」

「はい、面白いアイデアを次々と生み出す、リデル雑貨店のアリスです。」

「は、初めまして!リデル雑貨店の長女、アリスでございます。本日はお忙しい中貴重なお時間を賜り、誠にありがとうございます。」

「ほう、話に聞いていた通りしっかりとした子のようだ。アリス、年はいくつだ?」

「先日12歳になりました。」

「なるほど、では私の娘エリザベータと同い年だね。ほら、お前も挨拶をしなさい。」

 エリザベータと呼ばれる少女はふわふわとしたアリスの自然のままの髪とは違い、綺麗に時間をかけてセットされたパーマに負けないくらい大人びた顔をしていた。


「エリザベータお嬢様、お久しぶりでございます。」

「ジャン!貴方と会えるのも楽しみにしていたのに、ギルドを辞めてしまうなんて、私とても悲しかったわ!」

「エリザベータ様、お初にお目にかかります。アリスと申します。私のカルタをお使いいただいているとのこと、大変嬉しいです。」

「・・・ふんっ。ねえジャンさん、今日は何を持ってきてくれたの?エリー知りたいわ!」

 エリザベータはアリスをチラリと見ると、アリスに応える素振りもなく、すぐに背を向けジャンにベタベタとくっついた。


(何この子!性格悪〜〜。典型的な甘やかされお嬢様って感じ。でもまあ相手は貴族・・・我慢我慢。)


「お嬢様、本日はリバーシというチェスに代わるボードゲームをこのアリスが開発しましたので、ぜひお嬢様にも楽しんでいただければと思い、お持ちいたしました。」

「ふ〜ん。この子がね。まあジャンが言うなら遊んであげなくもないわ。一緒にやりましょう!」

 アリスがジャンと丹精込めて選んだ飾り紙は一瞬でビリビリに破かれ、アリスはグッと拳を押さえながら笑顔を崩さないよう努めた。


「エリー、私はジャンと話がしたいからアリスちゃんとやりなさい。お前と同い年だと言うから、良い話し相手になろう。」

「お父様!私何度も言うけど、同い年の子達は子供っぽくて嫌いなのよ!ジャンと私もお話ししたいわ!」

「エリー、我儘を言うんじゃない。・・・すまないね、ではジャン、私の書斎に行こうか。」

「はい。それではお嬢様、失礼いたします。アリス、頼んだよ。」

「はい!」

 アリスはラーゲルレーブ卿の姿が見えなくなるまで頭を下げた。

 扉が閉まり、アリスが机の上のリバーシを説明しようとすると、リバーシを思い切り床に叩きつけた。部屋の中にはロニーが貴族向けにと一層丁寧に作り込んだ駒が散乱した。

「うるさいわね!こんな子供騙しのおもちゃ、要らないわよ!私平民なんかと口を聞きたくないわ!

 ジャンも貴方の父親のせいでギルドを辞めさせられたと聞いたわ!どうせ貴方の父親がジャンに迫ったんでしょうけど、ジャンほどの美貌があれば貴族と結婚だってできて爵位を得られるチャンスだってあったのに。よくものうのうとジャンと一緒にいられるわよね!これだから平民は嫌なのよ!」


 ブチっ。

 エリザベータが駒を踏みつけた瞬間、アリスの中でこれまで溜め込んでいた怒りが爆発した。

 アリスはエリザベータに近づき、怯む彼女の顔の横に思いきり手を付いた。


「いい加減にしてよ!お父さんもパパも何も悪いことはしていない!ただ愛し合っているだけで、何がそんなに悪いのよ!!平民平民って、だから何よ!貴方なんてお父さんが貴族なだけで貴方自身になんの力もないくせに!貴方の力で何か1つでも成し遂げたことがあるわけ!?知ったような口聞かないでよ!!

 ・・・いい?これ以上お父さんや私の家族を馬鹿にしたら、お嫁に行けない身体にしてやるわ。分かった!?」

「ヒッ」

「返事は!?」

「わ、分かったわよ!」

 生まれてから今まで侯爵家の一人娘として大切に育てられてきたエリザベータにとって、人から怒鳴られると言うのは初めての経験だった。

 アリスは泣きべそをかいているエリザベータの顔を見てようやく我に返った。


(しまったーーー!!!!!ギルドに対しても文句言えなくてずっと溜まってたからつい勢いで言ってしまった・・・。貴族に対して壁ドンしてしまった。え、これ子供同士の喧嘩だよね?処刑にはならないよね?)


「・・・あ、あー分かっていただけたなら良いんです。じゃあリバーシやりましょうか。はい、えっとまずは駒をここに4つ並べたら、自分の色で相手の色を挟むとひっくり返して自分の駒になります。最後に自分の駒が多い方が勝ち、というゲームです。簡単ですのでやってみましょうか?エリザベータお嬢様から先攻で」

「エリー。」

「え?」

「エリーでいいわ。私もアリスと呼ぶから。」

「あ、でわエリーお嬢様。」

「お嬢様も要らないわ。敬語もやめて。」

「いえ、そういう訳にはいかないかと・・・じゃあ、2人でいる時はエリーと呼ぶね?」

「ええ。えっとここに駒を置くのね。で、これを返す。」

「そうですそうです。でわ私はここに。」



 ♢



「あー、また負けたわ!アリス、貴方は強いのね!」

「エリーも随分強くなったよ!もうコツも掴んだみたい!」

「ええ。四つ角を取ろうと貴方がしていたからね、私も真似したのよ!」

 初めは手を抜いてあえて負けていたアリスも、エリーがすぐにそのことに気がつくので2回目からは真剣に取り組んだ。エリザベータは同世代の子供たちを“子供っぽい“と言っていた通り、着眼点も鋭く、負けても投げ出さずにリバーシを楽しんでくれた。


 その後ジャンが戻ってきてアリスが家に戻ってからも、度々エリザベータからアリスに手紙が届き、アリスは喜んでエリザベータに会いに行くようになった。

 アリスにとっても、エリザベータは初めてできた同性の友達になっていった。


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