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私、聖女じゃなくて壁になりたいんですが!?  作者: KANAN
第1章 環境整備
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第23話 リバーシの売り方模索中

「パパ、前にカルタを注文してくれた貴族の方の名前とかって覚えてる?」

「え、まああの方はこの街の人間なら誰もが知っているほどに有名な方だからね。もちろん覚えてるけど、それがどうかした?」

「リバーシを持ち込んで販売したいの。」


 アリスは試作的にいくつかのリバーシを店頭に並べたが、1000リアルという、平民でも少し頑張れば手を出せるくらいの価格設定にしたこともあり、まだ宣伝もしていないにも関わらず連日リバーシはないかと尋ねる人が後を絶たなくなっていた。

 反響が途絶えないうちにリバーシについて商人ギルドで特許申請を行い、本格的に生産量を増やしていくべきなのだが、アリスはリデルにこれを行わないようにお願いしていた。ジャンの件があってから商人ギルドをどうにか痛い目に合わせてやりたいとずっと考えていたアリスにとって、これはチャンスだと感じたからだ。


 ギルドの利益は主に仲介手数料から成り立っている。そのためジャンが後ろ指を刺されたように、リデルの雑貨店の担当になっていたジャンは、アリスが開発してきた目新しい商品を貴族・飲食店等に紹介することで莫大な利益を生み出していた。もちろんこれは貴族等とのコネクションを持っていない小売店にとっても悪い話ではなく、互いになくてはならない存在であることは間違いない。しかし、ジャンの実績を妬み、業務には関係のないプライベートな内容まで持ち出してジャンを商人ギルドから追い出した者が、現在のリデルの雑貨店の後任の担当者となっていた。

 これまでのマヨネーズやカルタなどに関しては、すでに取引している相手に卸さざるを得ないが、これからの新商品に関しての利益・実績もそいつが得ることになるというのが、アリスにとってどうしても耐えられなかった。


「私もうあいつとは会いたくないもの!私のアイデアを子供だからって勝手に聞き出そうとしてきたのよ!きっとあいつに話してたら自分でギルドにアイデアを売ってたかもしれないわ。」

「まぁまぁアリスちゃん、私も彼の態度は些か気になることはあるけど、それでもギルド職員としての仕事は漏れなく行っているし、腕は確かだからね。それに本当に私のことはもういいんだよ。リデルと一緒に働くなんて想像もしていなかったけど、結構楽しんでやらせてもらってるよ。」

 

 ジャンはもうギルドへの未練はないと言っており、実際リデルとニックの3人で毎日店頭で楽しそうに働き幸せそうだった。が、アリスはギルドに一泡吹かせてやらなければ気が済まなかった。泣き寝入りの状態でジャンが辞めさせられたこと、そしていまだにギルドの職員達はリデルが手続き等でギルドに訪れるたびに、にやけた目つきでリデルを見る彼らの態度が我慢ならなかったのだ。


「貴族の方って中々会うのは難しいと思うけど、カルタを買ってくださったってことはお子さんがいるんでしょ?きっとオセロも気にいると思うのよ。」

「うーん、そうだね・・・あの方は私も昔からよくしていただいていたし、ご多忙だから会ってくださるかはわからないけど、手紙を出してみようか。」

「本当?パパありがとう!大好き!!」



 ♢



 ジャンが手紙を出してから一週間後、見るからに高級そうな便箋と金の蝋で封をされた1通の手紙が届いた。

「じゃ、ジャン!!!アルベルト = ラーゲルレーヴ様から手紙が届いてるぞ!?一体何したんだよ!」

「リデル落ち着いて。私が手紙を送ったんだよ。恐らくこれはその返事ですね。」

「パパ!貴族様からのお手紙返ってきたの!?」

 アリスは青冷めた顔をしているリデルには目もくれず、封を開けるジャンの手つきを今か今かと覗き込んだ。


「アリスちゃん、今開けるからね。

 ・・・オセロに興味があると仰っている。明日の正午の鐘に屋敷へ来るようにとのことだ。オセロは1セット持っていけるかな?」

「もちろんよ!お父さん、何か綺麗な包みとかってない?ラッピングしなくちゃ!」

「うーん、これなんかどうだ?」

「こんなのダメよ!ラーゲルレーブ様って無知なお父さんでさえ知ってるくらい有名な方なんでしょう?じゃあもっと豪華なのにしなくちゃ!」

「ふふふ、じゃあアリスちゃん、明日のために色々買い物に行くのはどうかな?新しい服も必要だからね、一緒に買いに行こうか。」

「本当!?わーい、じゃあパパとデートしてくる!いいよね、お父さん?」

「はいはい、店は俺とニックでやるから、悪いがジャン、頼むな?」

「じゃあ私着替えてくる!パパ、ちょっと待っててね!」

「なんで着替えるんだ?街に行くだけだろ?」

 リデルの問いに応えることもなく、アリスは2階の自室に駆け戻って行った。


「ふふふ、リデルは女心が分かってないね。」

「女心って、アリスはまだ10歳だぞ?あいつは本当マセてるなぁ。誰に似たんだか。」

「女の子は何歳でも美しく思われたいんだよ。まぁ私はどんなに着飾った女性よりもリデルの方が可愛いと思うけどね。」

「か、可愛いって、揶揄うのも大概にしろっ!俺は店番に戻るからな!夕飯までには戻って来いよ!」

 リデルは耳まで真っ赤になった顔をジャンに見られないようにすぐに店へと戻ったが、ジャンにとっては何度可愛いと言っても毎回赤くなり恥ずかしがるリデルの行動全てが愛おしかった。

 


「パパお待たせ!・・・なんだかにやけてるけど、どうしたの?」

「なんでもないよ、行こうか。」


(あーーーなんか私の腐レーダーが絶対何かあったって反応してる!こんなにジャンリデ応援してるのに、どうしてそのシーンに出会えないの・・・悔しい!!!)



 ♢



「パパ、これなんてどうかな?」

「うん、花柄に金箔があしらってあってとても綺麗だね。いいんじゃないかな?」

「じゃあこれにする!あと、このリボンも一緒に買っていい?」

「包みに使うのかい?」

「ううん、これは私が髪につけるの。こうやってやったら、ほら、どうかな?さっき買ったドレスと同じ水色でしょ?」

「うん、とっても可愛いね。もちろん一緒に買って行こう。」

「ありがとう!!」


(パパと買い物するとちゃんと一緒に考えてくれるし女の子扱いしてくれるからとっても楽しんだよね〜。前世では自分の服とか全然気にしてなかったけど、アリスの容姿なら大体なんでも似合う気がする。いつもは汚れてもいい服ばっかりだから、たまにはお洒落して出かける時間作りたいな〜。)



「アリスちゃん、他に欲しいものはあるかな?」

「ううん、大丈夫!パパ今日は付き合ってくれてありがとう!明日もよろしくね!」

「もちろん、こちらこそエスコートさせていただいて光栄です、お姫様。」

「もうっ!パパったらすぐに揶揄うんだから!」


 ジャンの言葉で耳まで真っ赤にするアリスの様子はリデルそっくりで、ジャンは嬉しそうに、アリスはそっぽを向きながらまた手を繋いで家へと帰って行った。



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