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私、聖女じゃなくて壁になりたいんですが!?  作者: KANAN
第1章 環境整備
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第21話 魔法ってすごい!

 それからトルドの言葉通り2ヶ月ほどが経つ頃、リデルの指示で家中の荷物を外に出すことになった。元々ものの少ないリデル家ではあったが、それでも家族5人総出で朝から夕方まで必死に運び出した。


「おーい!終わったかー!?」

「トルド!あぁもうほとんど終わったよ。後はあのデカイ棚くらいかな。」

「重てぇもんはワシがやってやってもいいが、ジャン、久々に魔法で動かしてみろや!」

「えっ、パパ魔法が使えるの!!!」

 日が傾き始めた頃、トルドがやって来た。アリスはトルドへの挨拶も忘れ、【魔法】というファンタジーらしい単語に喰いついた。


「いや、私はそんな大したものは使えないからね。トルドに運んでもらいましょう。」

「おいおい、嬢ちゃんが見たがってんじゃねぇか。やってやれや。」

 ジャンはトルドににっこりと凍りつくような笑顔で返したが、キラキラと目を輝かせるアリスを無下にする事もできず、仕方なく荷物から杖を取り出した。


 そしてジャンが空に魔法陣を描き

「風の精霊よ、大気を集いし操れ、風操ウインド!」

 と唱えると、棚の周りを竜巻のように風が覆い始め、そのままジャンの杖の動きに合わせて外へと運び出された。


「すすすすすすすすごーい!!ニック、ロニー今の見た!?パパすごいー!!!」

「いやいや、今のは初級魔法でそんな大したものでは・・・。」

「えっ、お父さんももしかして魔法が使えるの?ねぇ、どんなのが使えるの?見せて見せて!!」

 アリスが目を見開いてリデルを見つめると、リデルは罰が悪そうな顔をした。


「リデルは剣士だからね、魔法は使えないよ。魔法が使えるのは極限られたものだけなんだよ。私にはエルフの血が混ざっているから風の精霊と契約できたけど、それでも大した魔法は使えないよ。」

「えっえーーーー!!!!!パパってエルフなの!?やっぱりエルフは美しいって本当なのね。顔面国宝だわ・・・。」


 前世と比べて自分も含めて周囲の人間の造形が整っていることは感じていたアリスだったが、それでも一際美しく感じるジャンの造形美についての理由がやっと分かったアリスだった。

 

 アリスがジャンの美しさに両手を重ねて拝んでいると、少し拗ねた顔のリデルが

「トルド!これで家の中のものは全部出したから早く作業進めてくれ!夜になっちゃうだろ!」

 とトルドを急かし、トルドはまたガハガハと笑い声を上げながら、地面にチョークのようなもので家を囲むように魔法陣を描き始めた。


「よっしゃお前さんらよく見てろよー!!

 大地に住まいし精霊達よ、大地を束ねる古の盟約により、我が意のままに、我が為すままに大地を操れ。土空間交換アースエリアチェンジ

 ・・・ふぅ、問題なくできたようだな。」


 トルドが呪文を唱えるなり魔法陣からは直視できないほどの光が溢れ出し、アリスが目を瞑り、再度目を開けるとそこにはあの隙間風だらけの家ではなく、真新しいアリスの要望を取り入れた可愛らしい家が建っていた。


「え、え、えーーーー!!!!!」

「ハハハッ驚いたか?今回は時間もなかったからな、魔法を使って家を建て直すことにしたんだよ。」

「これ、魔法でできてるの?」

「おいおい嬢ちゃん、魔法なんぞでできるものと一緒にされちゃあ困る。これはワシが丹精込めて作ったんだ!ここで作るとその間困るだろ?だからワシの工房で作ったもんとここの空間を交換したんだよ。」

「そんなことまでできるの?魔法ってすごーい!」

 アリスがまた目を輝かせるとトルドは大きくガハガハと笑った。


 もっともっと魔法について聞きたいとせがむアリスを静止し、再度家の中に荷物を運び入れると、辺りはもうすっかり真っ暗になっていた。

 トルドとの久々の再会ということもあり、アリス達に早々に食事を与えると部屋で寝るように促した後、大人達は夜通し再会を楽しんだ。


 翌朝アリス達がリビングに行くと、ジャン以外の2人はいびきをかいて机に顔をつけて眠っていた。


 ジャンが今日だけは多めにみてあげてと頼むものだから、ジャンの笑顔に逆らえないアリスは魔法についてトルドを問い質したい気持ちを抑え、2人を起こさないように別室で食事をしたのだった。



「トルドさん、帰っちゃうの!?えーー、色々聞きたかったのにー!」

「ガハガハッ。まぁ魔法はお前さんら人間ヒューマンで使える奴は少ねえからな、また見たくなったらワシの工房にでも遊びに来いや!お前さんは面白えもん考えるって聞いてるからな、欲しいもんがあったら創ってやってもいいぞ!」

「えっ!本当?あのね、私これくらいで丸く切った木がいくつか欲しいんだけど!」

「お?なんだそりゃ?」

「あのね、今カルタとかが流行り出したから、みんなお家の中で遊ぶことも当たり前になってきてて、これからもっと寒くなるから家の中で遊べる遊びを増やしたいと思ってたの!」

「ほー。お貴族様のチェスとはちげえのか?」

(あ、チェスはあるんだ。単にチェスのルールは私が知らないから考えてなかったんだけど、ダブらなくてよかった)


「ううん、もっと簡単な遊びよ!できれば値段も安く、平民でも誰でも買える価格にしたいわ!」

「詳しく教えてみな!!」


 アリスがイメージしたものをトッドは懐から取り出したノートにサラサラとイメージ図を描くと「面白え」と一言言うなり、ジャン達への別れの挨拶もおざなりにしてすぐに帰って行った。


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