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私、聖女じゃなくて壁になりたいんですが!?  作者: KANAN
第1章 環境整備
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第20話 新しいお家を作ろう!

 ジャンが一緒に住むことになり、アリスはやっと念願のリフォームに取り掛かるようになった。店が繁盛してきたことで、店舗の方は棚などを新調していたものの、リデルの許可が中々降りず住居の方はドアもない、隙間風のある家のままだったのだ。

 それはアリアの、アリアのご両親が作り上げた家だからこそリデルが手を出していいか悩んでのことだったが、好きな仕事を辞めてでも自分や自分の子供達のために尽くしてくれるジャンのためにリデルも家に手を付けることを決断したのだった。


「アリアならきっとわかってくれるよな。」

 リデルは柱に残された幼いアリアとその家族の思い出の跡を優しく撫でながら呟いた。



「私はね、絶対各部屋に扉が欲しい!」

「俺も自分の部屋が欲しいなぁ。」

「僕は作業部屋がもう少しあったかいと嬉しい。」

「分かった分かった!店が繁盛したのはお前達のおかげだからな、お前達の希望はなるべく叶えよう!」

「あ、じゃあ私の部屋はパパ達の隣がいいな。」

「アリスはまだまだ甘えん坊だな〜。いいぞいいぞ、じゃあここをアリスの部屋にしようか。」

(ふふふ。パパ達の隣ならば聞き耳立てればワンチャン・・・ぐ、ぐふっ)


「・・・またアリスお姉ちゃんが変な顔してる。」

「ほっとけよ。じゃあ俺は角がいいからここ!」

「僕はお姉ちゃんの隣がいいからここかな。」


 そうして各々の希望をリデルが図面に起こし、新しい家の設計図が完成した。


「よしっ、出来たぞ!新しい家は1階が店の在庫品やキッチンとリビング、作業部屋。2階がそれぞれの部屋だ。いいか、お前達。部屋ができても、食事はなるべく全員で食べる。何かあっても隠し事をせず相談すること。これが約束だからな?」

「「「はーい!」」」


「あ、でもお家なくなっちゃう間はどこに住みの?パパのお家?一回壊して新しく作るってなると、結構時間かかるよね?」

 アリスが心配そうにリデルを見上げると、リデルはジャンの方を見てニヤリと笑った。


「そうかそうか。お前達は家がどうやって建つか知らないか。」

(え?家を作ったことはないけど、大工さんが家を建てていく過程はテレビとかでも見たことある。でも、この規模なら数ヶ月はかかると思うんだけど・・・)


「リデル、せっかくだからアリスちゃん達も連れて行ってあげたらどうですか?店番は私がしますよ。」

「そうか。じゃあそうするかな!」

「え?お父さん、どういうこと?どこに行くの?」

「ハハッ、それは行ってからのお楽しみだよ!」

 アリスをはじめ、ニックもロニーも3人とも同じように頭の上にクエスチョンマークを浮かばせ、同じように頭を傾けるのがおかしくて、リデルはしばらく笑い続けていた。



 ♢



「よし、着いたぞ!」

 翌日リデルに連れて行かれて、3人は初めて馬車に乗り隣街へと出かけた。初めての馬車に最初は興奮したものの、3人ともすぐに腰が痛くなり、アリスは街に着いても馬酔いで1人で歩くこともできなくなってしまった。


(せっかくの新しい街なのに・・・うっぷ・・・)


 リデルに抱き抱えられながら揺らぐ視界の中で目にしたものは、自分たちの街とはまた違う、木造建築の並ぶ可愛らしい街並みだった。ロニーもニックも声には出さないものの、目新しい街並みに終始キョロキョロしながら歩き、リデルは嬉しそうにその様子を眺めながら目的地へと向かった。


「ほら、アリス、大丈夫か?ここが目的地だぞ!」

「うん、大分良くなったわ。ありがとう、お父さん。ここは・・・【職人ギルド】?」

「お!すごいなアリス、よく読めたな。そう、ここは職人ギルド。大工や鍛治職人、農家など、何かを作る人たちが所属しているギルドだ。足元に何か落ちてることもあるから気をつけて歩けよ。」


 ジャンの所属していた商人ギルドが高さのある、やや高級感のある建物だったのに対し、職人ギルドは終わりの見えないほど続く横長の建物、そして扉も壁も全て木でできているようだった。


(ログハウスみたいで可愛い〜!)

「えっ!!!!!見て、お父さん!!!あれってドワーフ!?」

「こらアリス、失礼だろっ!ドワーフの種族は昔から手先が器用で力持ちの人が多いから、職人ギルドに所属している大半はドワーフなんだよ。今日約束してるのも・・・あ、いたいた!おーいトルド!!」


 リデルが手を振り駆け寄る先には、アリスと同じくらいの背丈の黒い髭が体を覆うくらいに生えているドワーフが立っていた。

「おおーリデル、来たか!!!アリアの送別式以来だな、元気だったか!?お!そいつらがオメェさんのガキか!前見た時は米粒みてぇだったのにデカくなったなぁ!!」

 トルドと呼ばれるドワーフは体の大きさと反比例するかのように、大きな声でガハガハという変わった笑声を出しながらアリス達をまじまじと見つめた。


「あぁ、中々連絡もできずで悪かったな。ジャンからトルドが隣街で仕事を始めたって聞いて驚いたよ。この子達が俺とアリアの子供。一番上の子がニック、今年で17歳だ。アリスが今年で12歳、ロニーが10歳になったばかりだな。」

 3人がトルドに頭を下げると、トルドはまた嬉しそうに

「いい子達そうじゃねぇか!!ジャンも一緒に暮らすようになるならより安心だな!お前は昔から融通が効かねぇとこがあるからな!!!」

 とガハガハと笑った。



 その後トルドの工房に案内をしてもらった4人は全員の要望が書かれている設計図を渡した。トルドはふむふむと言いながら時折リデルに修正案を耳打ちし、アリス達は初めて見る職人感溢れる工房を見学している間に無事に家の設計図が完成した。


「んじゃ、明日から作業に取るかかるからな!完成は2ヶ月後くらいだろうよ!できたら連絡するから楽しみに待ってろよ!!」



 トルドに別れを言うと、アリス達は家が建つことについての疑問など忘れ、初めての隣街観光を楽しみ、また馬酔いを味わうのだった。


(う・・・馬車無理・・・うっぷ・・・)



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