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私、聖女じゃなくて壁になりたいんですが!?  作者: KANAN
第1章 環境整備
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第18話 パパを助けたいのに

「お父さん!パパがギルド辞めちゃうって本当なの!?」


 アリスは店に着くなり客がいることなどお構いなしに叫んだ。

「は?それ本当なのかよアリス!父さん、どういうこと!?」

「ちょ、アリス、ニック。落ち着きなさい。お客さんの前だぞ!・・・後で話すから店が終わるまで待ってなさい。いいな?」

「わかったよ。」

「・・・私、ロニーのとこにいる。」


 アリスは家の1室を作業部屋としているロニーの元に行き、隣に座り込んだ。

「・・・何かあったの?」

 アリスが話したいことがあるとロニーの元に行く。これはもう習慣だった。同世代の子供達とは前世の記憶がある分どうしても話が合わず、それでも誰かと話したい。そんなアリスの救いが、アリスのどんな妄想・想像でも嬉しそうに笑いながら聞いてくれるロニーだった。


「今教会でシスターに聞いたの。パパがうちの店のことでギルドで色々言われてるみたいで、ギルド辞めさせられちゃうかもって。貧乏だったうちが急に立派になるなんて、変だって。パパが何かしてるって噂されてるんだって。」

「そっか・・・。でも、パパがギルド辞めたらうちで働いてもらって、そしたらお姉ちゃんが前に言ってた家族みんなで暮らすってことも叶うんじゃないの?」

「・・・それはそうだけど、でも、私パパがギルドで働いているのを何度も見て思ったの。パパはギルドで働くのが好きなんだわ。それを私たちが奪っていいわけない・・・。」

「そうだね・・・。」

 アリスはロニーの横にしゃがみ込み、静かに肩を上下させた。ロニーは何も言わず、アリスの頭を撫でると、黙々と作業を続けた。


 それからしばらく経ち、リデルが声をかけるまでアリスはずっとロニーの下でうずくまっていた。


 リデルに呼ばれアリスとロニーは促されるままに椅子に座った。先に座っていたニックも不服そうな顔で、言葉を飲み込みじっと父の言葉を待っていた。


「・・・本当はもう少し落ち着いてからお前達に話すつもりだったんだが。アリス、一体どこでその話を聞いたんだ?」

「今日教会に行ったらシスターが言ってた。パパがうちのお店のせいでギルドを辞めさせられちゃうかもって。」

「そうか、そんなとこにも噂が広がってるんだな。・・・お前達は誰に似たのか頭がいいからな、隠しても無駄だろうから正直に話すぞ。

 うちの店は元々お前達のお母さん、アリアのご両親の時からある雑貨店だ。アリアが亡くなってからは馴染みの客もいなくなり、街の人たちはそんな店で子供3人も育てられないだろって何度も言われてたんだ。養子にもらいたいって言われたこともあったんだぞ。ハハッ。

 でも俺はそれを断り続け、ジャンがこの街に来た時、いくらか金を援助してもらったんだ。アリスの考えた商品で店も持ち直して、すぐにその金も返した。でも、俺の店がジャンが来てからどんどん繁盛していくのを不思議に思った人たちがいてな。金のやり取りもどこからか突き止められ、俺の家に出入りするジャンのことも追及されて・・・。」

「それってパパと私たちが裏取引してるってこと?なんの証拠もないのに?」

「まぁそういうことだな・・・。」


 ニックは俯いたまま、ぽつりぽつりとこぼした。

「俺がジャンさんのとこで働いてたからじゃないのかな。俺、何度かジャンさんが他のギルド職員の人に部外者をギルドに入れないようにって言われてるの聞いたことがあったんだ。ジャンさんは気にしなくていいって言ってくれたけど・・・。」

「いや、ニックのせいじゃない。それは俺が頼んだことだし、本当にそれだけじゃないんだ。」

「じゃあなんでだよ!ジャンさん、ギルドでもすごい慕われてたのに、俺がギルド行くようになってから明らかに話しかける人が減っていってた。俺がギルドで何年も勝手に弟子入りなんてしたからだろ!」

「本当に違うんだ!」

 普段温厚なリデルの声に、全員がぴたりと止まり、部屋の中には時折垂れる水滴の音だけが響き渡った。


 そしてリデルは疲れ切った顔で、

「・・・俺とジャンの関係、つまり恋人だってことがバレたんだ。」

 と漏らした。


「玩具の特許申請をした時に、ジャンの部屋でその、申請作業をしてて・・・」

「キスしてたのね!」

 身を乗り出してくるアリスに、リデルは黙って頷いた。


(パパって我慢できるって言いながら、なんだかんだお父さんにちょっかいかけるんだよね。)


「一応ジャンがすぐに弁明はしたんだが、そこから急に今までの金銭のやり取りや急に新しい商品を発明してるのは全部ジャンのアイデアじゃないのかって追及が始まってしまってな。俺もどうにかしたいんだが、ジャンからも事態が落ち着くまでギルドに近寄らないようにとだけ言われてる。だからお前達も余計なことはしないで、商人ギルドにも近寄らないで欲しい。特にアリス、分かったな?」

「でも、」

「でもじゃない。いいな?」

「・・・はい。」



 アリスはもちろん、ニックもロニーも何もしていないジャンが疑われているというのは許せることではなかった。しかしジャンが言うように、今のアリス達にできることはギルドに近寄らないこと。それだけだった。



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