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私、聖女じゃなくて壁になりたいんですが!?  作者: KANAN
第1章 環境整備
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第11話 やっぱり最強調味料!

 その日の帰り道、アリスの頭の中は教会のことでいっぱいだった。

 家に帰ってニックがリデルと和解し、またリデルファミリーが和やかな空気に包まれるようになっても、アリスの頭は晴れなかった。



「お姉ちゃん、どうしたの?」

 そんなアリスの様子に気がついたのは弟のロニーだった。

「・・・何だか釈然としない。」

「しゃく?」

「お父さんとパパはやっと結ばれたんだよ!なのに、パパは週に何度か家に来て夕食食べたら帰っちゃうし、お父さんもパパの家に泊まりに行けばいいのに行かないし!」

「仕方ないだろ。ジャンさんは商人ギルドの人間なんだから。」


 アリスが悶えていると、後ろから頭を小突かれた。

「あれ?お兄ちゃん今日はギルドは?」

「今日は会議があるからって早めに終わったんだよ。それより、アリス。いい加減ジャンさんに迷惑かけるのやめろ。何度も話しただろ。」


 ニックも公認となり、改めてジャンを家族に迎え入れたリデルファミリーだったが、アリスがこれから一緒に暮らそうと提案をすると、ジャンは申し訳なさそうに断った。


 理由は2つ。1つ目は同性同士の恋愛関係が理解されていないため表立って2人の関係を公表するようなことはできないこと。2つ目はジャンとリデルの立場だ。

 ジャンは商人ギルドの人間で、貴族とまではいかないが、リデル達とは立場の異なる存在だった。ギルドにおいてそれなりの権力を持っているジャンほどの人間が、街外れの今にも潰れそうな雑貨店の店主と頻繁に会う理由は本来ないのだ。2人が過去にパーティを組んでいた仲間であるとギルド内では説明をしていたジャンだが、見るからに格式の高いジャンがリデルの家に足繁く通うことも、貧しいリデルがジャンの住居に行くことは側から見るとおかしなことだった。

 ジャンは平気な顔でニックを弟子として迎え入れていたが、これだけでもジャンがどれだけ頭を下げたかはわからない。ニックはギルドで働くことで、それを日々肌で感じていた。



「だって、パパがかわいそうよ・・・。」

「まぁそれは俺もそう思うけど、ジャンさんはたまの食事を楽しみにしてくれてるし、その日だけは夕飯も豪華になるしそれでいいじゃねぇか。」

「そうだけど・・・。」

 アリスはジャンの説明を理解はできたが、納得ができずにいた。


(長年の想いがようやく通じたのに、週に何度かの食事だけでパパはどれだけ我慢すればいいのよ!きっとあんなことやこんなことだってしたいだろうに、お父さんも自分からは何もしようとしない受身だし・・・)


「じゃあさ、たまごパンがいっぱい売れたら、パパもうちにもっと来れるかな?」

「「え?」」

 ロニーの言葉にニックとアリスが声を揃えた。

「おっきいお店ならパパもお仕事でうちに来るでしょう?そしたらパパとお父さん、もっと一緒にいられるから、ぼくいっぱいいっぱい売って、お店を大きくするよ!」


「あー・・・まぁ確かにジャンさんも中心街にあるような大きい店には仕事で行くけど、俺らの家があんなでかい店になるのはちょっと無理があるんじゃねぇかな。」

「そっかぁ・・・。」


(そうか!お店を大きくすればいいのね。そしたら私たちもジャンさんと肩を並べてても不自然じゃないし、生活環境も整えていきたいと思っていたんだから、目的は一緒じゃない!何を悩んでいたの!!)


「分かったわ!ロニー、やっぱりあなたは天才よ!天使!中心街の雑貨店なんて目じゃない!うちはもっともっと大きいお店にするわよ!!!」

「おー!」

 ロニーは天高く拳を掲げるアリスに目を輝かせながら両手を叩いた。ニックは呆れた顔をしながらも

「なんか作戦があんのか?」

 と、たまごパンを提案したアリスを馬鹿にすることはせず、手伝おうという気持ちすら見えた。


「うん!たまごパンのお金が貯まったら元々買おうかなって思ってたんだけど、お酢を買いに行こう!」

「お酢?ピクルスでも作るのか?」

「たまごもニックがいるなら今日取りに行こう!!さ、出発よー!」

「おいっアリス!待てよ!!」


 アリスはニックの問いには答えず、3人でコッコの卵を採取して、お酢を一瓶購入しては家に戻った。

「よし、じゃあ始めよう!」


 そして始まる、アリスの簡単クッキング。

 まず手とコッコの卵をよく洗い、ボウルに卵黄だけを入れてしっかり混ぜる。そこに家にあったオリーブ油を少しずつ加えながらよく混ぜたら、買ってきたお酢を加えてさらに混ぜる!そして更にオリーブ油を加え、少し塩を入れて・・・完成!


「できたー!コッコマヨネーズだよー!」

「まよ?」

「これは何かにつけて食べる、調味料なの。買ってきた串焼きにつけて食べてみて!」


 お酢を買ったお金の残りでサムの屋台から買った串焼きを3等分し、上にマヨネーズを乗せる。

「・・・うまい!肉と卵が混ざって、より濃厚に感じる!」

「うわぁ、ぼくこれ好きー!美味しい!」

「う〜ん!やっぱりマヨネーズは何にでも合うよねー!お肉塩味だけだったけどマヨネーズつけたら何本でも食べれちゃいそう〜!」


 マヨネーズの力はやはり偉大。あんなにも満足していたサムの串焼きが味気なく感じるほどに、3人はマヨネーズに魅了されたのだった。



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