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93. ユイナと由真のステータス

久々のステータス判定です。

縦に長くなりますのでご注意ください。

 午後2時になる1分前。


 由真たちを乗せた「ドルカオ4号」はベルシア駅に到着した。


「15分遅れ、かしらね?」

 ホームに降りて、晴美が時計を見て言う。予定ではベルシア到着は「13時44分」だった。

「特等が埋まってないシンカニオなら、よくあることですね、カンシアでは」

 ユイナが苦笑とともに応える。


「これ、かなり揺れなかった?」

「うん。エールとかおいてたら、絶対こぼれた」

 美亜と愛香が言う。


「これ、320キロ出してなかったですよね?」

 そして由真は、ユイナに向けて尋ねる。


「ええ。あの、特等が埋まってないと、その速度は出しませんね」

「そんな速度が出せる車両じゃないですよ、これ。連節なのにあんな揺れるとか、たぶん、車体が剛性の割に長すぎです」

 走り去る車両を見送りつつ、由真は言う。


 その列車は、高速走行区間に入るや、微細な揺れを起こし始めた。

 ベルシアに近づいて在来線に戻って、ようやく揺れが収まったとき、由真は思わずほっと息をついたほどだった。


「まあ、『モディコ300系』は、速いですけど評判はよろしくないですね、正直。特等車だけは頑丈で、後はボロボロ、って聞きますし」

「そんなとこでも身分差別? この国、変なことは徹底してるのね」

 ユイナの答えに、晴美は心底あきれかえった様子で応じた。


「まあ、とりあえず、神殿に戻りましょう」

 ユイナはそういって、由真たちをホームを離れる。


 改札を抜けて、渡り廊下を歩き、途中の宿泊区画に入る。

 セプタカのダンジョンに向けて出発したのが先々週の土曜日。ほんの2週間前のことが、ひどく遠い昔のように思えた。


「皆さん、荷物を置いたら、いったん聖堂に行きますね」


 というユイナの指示に従い、由真たちは荷物を部屋に置く。ちなみに、晴美の部屋に「従者」として居候する身分だった由真も、今回は自分用の部屋が与えられていた。

 ユイナにつれられて、一行は聖堂に入る。そこに待っていたのは、紫色のコートを着た老人だった。


「神祇長官台下、お疲れ様でございます」

 ユイナは、その相手――神祇長官タルモ・フィン・ナイルノに向けて深々と頭を下げる。

「神官ユイナ・セレニア。重任、ご苦労だった」

 ナイルノ神祇長官のその言葉は、由真の耳にも非常に重厚に聞こえた。

「それと、皆さんも、一連の『初期教育』、労をねぎらいたい」

 そう言われて、皆さん――由真たちもそろって頭を下げる。


「早速ながら、まずは、セレニア神官の研修修了を確認するため、そのステータスを判定する」

 そう言うと、ナイルノ神祇長官は祭壇に向かう。


「三主神様、神祇長官タルモ・アギノ・フィン・ナイルノが申し上げます。ここな神官ユイナ・セレニアのステータスを正しく判定いたしたく、その一切の障りを除き賜ることを、切にお祈り申し上げます」

 その「祈り」もまた、モールソ神官などとは格の違う重みがあった。


「神祇長官タルモ・アギノ・フィン・ナイルノを認証しました。神官ユイナ・セレニアを認証しました。祈祷・預言妨害術式、『ラ』制御術式その他の一切の対抗術式の効力を解除しました」

 その声は、ユイナがいつも祈祷している相手の女神――おそらくは大地母神セレナだった。


「それでは……」

 ナイルノ神祇長官が振り向くと、ユイナはうなずき、そして祭壇に設けられた水晶玉に手をかざす。


NAME : ユイナ・セレニア

AGE : 17 (26 UP / 103 UG)

SEX : 女

LV : 61


STR : 140

DEX : 160

AGI : 140

VIT : 140

INT : 1580

MND : 1500


CLASS : 神官 LV 60

GIFT : 光の巫女 (A) / 風の申し子 (A) / 家の管理人 (A) - 光の巫女 (A) / 風の申し子 (A)はdual (S)

SKILL

祈祷法 LV 10

預言法 LV 10

宗学 LV 10

光系統魔法 LV 9

風系統魔法 LV 9

闇系統魔法 LV 8

地系統魔法 LV 7

水系統魔法 LV 4

魔法解析術 LV 6

経営学 LV 8

歴史学 LV 7

地理学 LV 7

生物学 LV 6

医薬学 LV 5

太極拳 LV 3


 水晶板にステータスが浮かび上がる。


「これは……素晴らしい。ここまで成長していたとは」

 ナイルノ神祇長官の声は、些か高揚しているように聞こえた。


(足すと3660、確かに、61×60だな)


 ステータスの6指標。

 レベル1ごとに60が割り当てられるというそれ。「レベル61」となったユイナの数値から、由真はそれを素早く計算した。


(って、太極拳もスキルに入ってるのか)


 この神殿で「初期教育」をしている途中で、身体系のステータスが低かった美亜と愛香を相手に触りだけ教えた太極拳。

 ユイナは、それに強い関心を寄せ、あげく「二十四式」の制定拳をわずか1週間で全てマスターした。

 その太極拳も、しっかりと「レベル3」のスキルに加わっていた。


「あの、太極拳というスキルがありまして、これを教わったのが、大きな要因かと、そう思っております」

 ――ユイナ本人が、ナイルノ神祇長官に向かってそう告げた。


「そうか。『召喚』に巻き込まれるという困難を、そのような形で活かすとは、実に見事だ。卿は、期待を遙かに超えて成長してくれた。これは、陛下にも申し上げねばならぬ」

 そこまでの大事――になっているのだろう。

 これまでの王国最高水準は、他ならぬナイルノ神祇長官の「レベル51」だったという。それを「10」も上回るこのステータスは、確かに国王にも報告すべきことだろう。


「これで、セレニアの神祇官任官に対する異論は全て封殺できる。ここの皆の『初期教育』修了の認定も問題ない」


 続けられたその言葉で、逆に「実情」を推測させられてしまう。

 神殿の最高幹部には、ユイナを神祇官に任ずることに反対する意見もあるのだろう。

 また、アルヴィノ王子を頂点に仰ぐ「勇者の団」と袂を分かつに至った晴美たちに対しても、王国内には反感もあるということだ。


「さて、これで、私の用事は、ほぼ終わったようなものなのだが……セレニア神官、一つ頼みがある」

 ナイルノ神祇長官がユイナに顔を向ける。


「はい、なんでしょうか、長官台下」

「済まぬが……ユマ様のステータスを、測定させていただくことは、できるだろうか」


 ――由真は、自らの耳を疑った。


(ユマ『さま』? 測定『させていただく』?)


 紫衣に身を包んだ最高位の神官が、自分に対して異様な敬語と敬称を使う。

 この神殿では、「レベル『ゼロ』」の「住人」として、名字を奪われ、名前を直接呼ぶことすら忌み嫌われた。

 そんな由真に対する、この長官のこの態度は――


「え、えっと……ユマさん? あの……」

「まあ、ステータスくらいなら、別にいくらでも……」

 戸惑いをあらわにするユイナに、由真はとにかくそう応える。


「それでは、こちらへ……」

 そう言われて、由真は祭壇の水晶玉に向かい、そして手をかざした。


NAME : ユマ

AGE : 16 (29 UP / 104 UG)

SEX : 女

LV : 0


STR : 0

DEX : 0

AGI : 0

VIT : 0

INT : 120000

MND : 120000


CLASS : 魔法大導師(無系統魔法) LV 0 遊撃戦士 LV 0 民政顧問官 LV 0 都市管理官 LV 0 都市技監 LV 0 農村管理官 LV 0 魔道具製作師 LV 0 医薬師 LV 0

GIFT : ゼロ (X)

SKILL

標準ノーディア語翻訳認識・表現総合 LV 10

無系統魔法 LV 0

無相武術 LV 0

民政学 LV 0

都市経営学 LV 0

都市工学 LV 0

公衆衛生学 LV 0

農業経営学 LV 0

魔法解析術 LV 0

魔道具工作技術 LV 0

医術 LV 0

薬学 LV 0

歴史学 LV 0

地理学 LV 0

生物学 LV 0


 ――変わったのは3箇所だけ。INTとMNDが「60000」から「120000」となり、「雑兵 LV 0 / 魔法導師(無系統魔法) LV 0」だった部分が「魔法大導師(無系統魔法) LV 0」となっていた。


「なんとも恐るべき水準、おさすがです、ユマ様」

 ナイルノ神祇長官の引きつった声が聞こえた。


「えっと、これ……レベルにすると、『4000』に相当する、ってこと?」

「みたい……ですね」

 晴美とユイナがそんなやりとりをする。


「これは……やはり……」

 ナイルノ神祇長官は、そういって深く息をつく。


「実はユマ様。明日、陛下が、今年初めて、王都王宮に還御されます。ついては、セレニア神官とともに、ユマ様にも、陛下への拝謁を、お願いしたく……」

「……は?」

 切り出されたその言葉に、由真は思わず間抜けな声を上げてしまう。


「あ、あの、長官台下、私と、ということは、私も、あの、拝謁を賜ることに、なっているのでしょうか……」


 他ならぬユイナが当惑をあらわにしている。


 彼女たちは、アルヴィノ王子の姿は――きわめて不本意ながら――数度見ている。

 エルヴィノ王子に至っては、ささやかながらも夕食をともにすらした。


 とはいえ、この王国の頂点に立つ「国王陛下」の拝謁となると、さすがに戸惑いやら動揺やらを禁じ得ない。


「うむ。陛下は、卿を神祇官に任ずるに当たり、卿と直接話をされたい、とご所望であった」

「私と、ですか……」

「17歳にして神祇官に任ぜられることが、そもそも前代未聞の儀だからな」

 そう言われて、ユイナは、はあ、と応える。


「我らが国王陛下は、ご即位直後にご不例となられ、以後、ナスティアの離宮にてご静養を続けておられます。陛下が王都に還御される貴重な機会に、ユマ様も王都に来られるということであれば、是非とも、お顔合わせを……」

 ナイルノ神祇長官は、由真に向かって深々と頭を下げた。


「あ、あの……ユイナさんと一緒に、ということなら、その、謹んで、承ります……」

 ――由真も、そう応えるしかなかった。

レベル4000相当。「おさすがです、ユマ様」―さすゆまです。


そして、国王陛下に拝謁を賜ることになりました。

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