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83. 魔将の最期

 しつこくつきまとってきた「風の弾」をどうにか切り裂いて、マガダエロは由真たちに向き直った。


「おのれ……ちょこざいな……」

 マガダエロは、大きく息をついて気息を整えた。そのときだった。


「『風よ輝く水をまといて敵を討て』、【霧雨の嵐】!」


 女神官が詠唱し、光線の束が放たれる。それは――マガダエロではなく、七首竜に、その胴部に向けられた。


「なっ?!」

 マガダエロは思わず振り返る。しかし、七首竜は、首のうち2つを動かして、光の攻撃を闇系統魔法でかき消した。


「【アイゼスシュペーレ・ミット・デン・リヒテアン】!」


 ほぼ同時に、女騎士が詠唱する。七首竜の左上に、輝く氷の槍が10本ほど現れて、一斉に降り注いだ。七首竜の5つの首が反応して火炎を放ったものの、何本かは首を貫いた。


「なっ!」


 しかし、七首竜には、先ほど迎撃に回った2つの首、尾、そして何より胴部の「コア」が生きている。この程度の打撃などすぐに――


「『トゥアム・ウィータム・ペルダム』」


 少女の声が、マガダエロの耳にもはっきりと聞こえた。

 その少女――このダンジョンに攻略を図った「勇者たち」の中でも最も恐るべき対手は、いつの間にか七首竜の懐に進んでいた。

 彼女が手にした棍棒は、七首竜の胴を貫いていた。


「ゲームセットだよ、七首竜」


 その言葉とともに。

 七首竜の7つの首が、腐食したかのように形を失い崩れ落ちていく。


「この距離なら、君の『存在』を『消す』ことはできる」


 革鎧すら身につけず、単なる棍棒を突き立てただけの少女。

 その少女の棍棒に貫かれた七首竜の体は、泥のように溶けて崩れていく。程なく、球体のコア以外、全てが消え去った。


「なんだと……」


 あり得ないその光景。それに意識を取られて声を上げかけたそのとき、マガダエロは「殺気」に気づく。


「たあっ!」


 高く鋭い叫びとともに、マガダエロの額が切りつけられた。

 傷口からしたたる血が目にしみる。


「このっ!」


 とっさに前方へ剣を振る。

 しかし、マガダエロの剣はむなしく宙を切り――その左胸を剣が貫いた。

 半身に構えた女戦士が剣を突き立てている。その姿を認めたそのとき――


「ふんっ!」


 気合いもろとも、守護騎士の剣がマガダエロの脇腹に突き立てられる。


「おらあっ!」


 そして――冒険者の大剣が、マガダエロの胴を横一文字に切り裂いた。


「マガダエロ、七首竜は、もういない。僕たちは、君に集中できる。だから、君の自己回復能力も……消すのは造作もないことだよ」


 ――闇に沈み消えゆく意識が最後にとらえたのは、少女のその言葉だった。

ゲームセットです。


ダンジョン攻略、実質これにてフィニッシュです。

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