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66. 邪眼のダニエロ

いったん撤収したら、情報を整理する。「冒険」の基本です。

 第二層に戻り、扉を閉じる。幸い、サイクロプスが追いつく気配はなかった。

 一行は、休息も惜しんで来た道を戻り、ダンジョンから無事に脱出した。


「くそ、あのサイクロプスは……」

「あの規模の解呪使いは……おそらく、『邪眼のダニエロ』、石化と解呪のギフトを持った、S級個体です」

 外に出たところで、ゲントの声にユイナが応える。


「ダニエロか。面倒なのが来やがったな。戻ったら、サニアに情報を集めさせねぇと」

 そういうと、ゲントは大きく息をつく。


「しかしハルミ、お前もすげぇな。ユイナの『光の盾』も効かねえとこで、発光に氷の壁の合わせ技をとっさに出すなんてな」

 そう言われて、晴美は一瞬戸惑う。


「あのときは……危ないと思って、無我夢中でしたから……」

「ハルミさんはですね、基礎レベル78、クラス『聖女騎士』レベル31なんです。ステータスは大陸最強ですから」

 晴美の横から、ユイナがそんなことを言う。


「は? レベル78? ってか、『聖女騎士』って、そもそも何なんだ?! 魔法職じゃねえのか?!」

「光系統魔法の『聖女』、氷系統魔法の『魔法導師』、槍を使う『騎士』、この三つの複合型クラスとして、ハルミさんが大地母神様にお認めをいただいたものなんですよ」


 もう一ヶ月も前のことで、晴美自身が半ば忘れかけていたことだった。

 3種のクラスに適性があると聞かされて、複合型で全てに対応しよう、と安易に考えて設定した「クラス」、それが「聖女騎士」だった。


「なるほどな。ユマだけでも驚きだってのに、ハルミもそんなかよ。……ってか、『勇者様』がどんなのかは見てねぇが、ユマとハルミを押しのけるような化け物なのか?」

「だと、思います?」

「思いたかねぇな」

「レベルは58、STRが900、VITが890、AGIが770。あと、聖剣が使えますから、それを与えられたら、敵なしですね」

 ――話の流れで、ユイナは「勇者様」の個人情報を暴露してくれた。


「そのレベルが物理に振ってんのか、そりゃ、ユマとハルミとは違う意味で『化け物』だな」

 確かに、今の平田は「膂力」に関しては「化け物」の領域にある。


「まあ、聖剣を握らせれば、魔物退治はお任せして大丈夫でしょうね」


 それだけの「力」を持っているのなら、その「無駄な力」で、アルヴィノ王子の思惑に乗って「魔物退治」でもしてくれればいい。自分たちとは関係のないところで。

 晴美は、そんなことを思っていた。



 ユイナは、立場上は「神殿側」ということで、モールソ神官と兵団司令部に報告に向かった。


 晴美たちは――「主力」から外されていることもあり――ゲントたち「曙の団」の天幕に入った。

 そこには、この日は休息を与えられていた由真もいた。


「邪眼のダニエロ……またずいぶんとやっかいな相手ですね」

 ゲントから話を聞いたサニアは、そういって眉をひそめる。


「半径およそ200メートルはパッシブで解呪、石化の射程範囲は最大300メートル先。魔法のレベルにもよりますけど、ウィンタの風系統魔法でも100メートルが限界です」

「ユイナの『光の盾』が、100メートル近くで簡単に消されちまったぜ」

「アクティブで狙われたら、ユイナさんの光系統魔法でも厳しいでしょうね」

「ハルミは、『発光』から『氷の壁』につなげたけどな」

「聖女騎士様は、光系統魔法と氷系統魔法は……」

「一応、レベル10です」

 晴美は、隠さずにサニアに答えた。


「なるほど……聖女騎士様の術が、どこまで通じるか……まあ、王宮が『マクロ』を出せば、勇者様の手で倒せるでしょうけど……」

「……マクロ?」

「王国秘蔵の聖剣『マクロ』、ですか」

 サニアが漏らしたその言葉に、晴美が反応すると、由真が即座に補う。


「由真ちゃん、なんでそんなの知ってるの?」

「神殿にいるうちに、いろいろ本は読んでたから」

 晴美の耳打ちに、由真は耳打ちで答える。


「そうなると、アルヴィノ王子の『ご視察』で、王宮の聖剣『マクロ』が勇者様に下賜されれば、勝負は決まりですね。『マクロ』なら、魔物への物理ダメージが強化されますし、ダニエロの石化にも対抗できますからね」

 由真は、他のメンバーにも聞こえるように言う。

 本来なら「王国の常識」なのかもしれないそのこと。それを知らない「異世界召喚者」であることを悟られないために、由真は先手を打ったのだろう。


「逆に言うと、『マクロ』がないと、手も足も出ない感じですよね」

 由真はサニアに向き直って言う。


「そうですね……ユイナさんが、最強レベルの『アマリト』を拵えてくれるなら、話は変わりますけど……」

「……アマリト?」

「ああ、『アマリト』は、ざっくり言うと、こっちの『御守り』みたいなの、かな?」

 また声を上げてしまった晴美に、由真がすかさず言う。


「……まあ、ユイナさんも、研修が終わるまでは忙しいでしょうし、『アマリト』を作るなんて話になったら、勇者様が最優先でしょうから、私たち冒険者にまでは回ってこないでしょうね」

 サニアは一瞬いぶかしげな表情を見せた。「御守り」すら知らないとなると、この世界では非常識な存在と認識されても仕方がない。


「ともかく、邪眼のダニエロとかそういうのは、勇者様に任せておけば大丈夫でしょう、たぶん」

 由真はそう言って、晴美たちの「素性」への詮索を避けさせた。

「勇者様」といえば「聖剣」ですよね。

当然御利益があり、魔物対策に決定的な効果があります。


なお、由真ちゃんは異世界召喚2週目から本を借りて読みまくっていた人です。

ここに来る途中でも、ダンジョン攻略の記録を読んでいました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 65話後半と66話前半の文章がかぶっています。第二層に戻り、扉を閉じる。幸い、サイクロプスが追いつく気配はなかった。 65話と66話に関する事は文書に混ざった?
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