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65. 強敵出現

このまますんなり彼らだけでクリア―とはいかない訳で…

 少し進んだ先に、空洞が広がっていた。

 日曜日、ここに52体のゴブリンが出現し、由真がそれを一瞬にして殲滅した。そのことは、晴美たちも聞いていた。


「しっかしまあ、ユマはすげぇな。ゴブリン50が目の前に出たってのに、顔色一つ変えずにつぶした、ってんだからな」

「それも、『光の盾』を横に広げて圧殺、って……私にはまねできませんよ」


 休息を取りつつ、ゲントとユイナが「そのこと」を話す。

 そのおかげで、このダンジョンの兵力は大幅に減少し、ここでも合計24体を倒したため、彼女たちはこうして休息を取ることができる。


「さて、と。第三層をちったぁ探っとかねぇと、ユマに顔向けできねぇからな」

 ゲントの言葉で、彼女たちの休息は終了となった。



 その空洞の奥にある、第三層への入り口。扉を開き、階段を降りた先に、またしても洞窟があった。


「目立つ敵は……あれ?」

 索敵を開始したユイナが、とたんに首をかしげる。


「ん? どうしたユイナ?」

「これ……索敵が解呪されてます」

 第二層で一行の「目」となったユイナの索敵魔法。それが「解呪」されている。一行の緊張が一気に高まる。


「風を使ってもか?」

「第二層から、光と風の併用です。これ……あっ! 短絡されました! 左およそ100メートル先で術が切れてます!」

「くそ、通路が開けられてたか。ユイナの術が切られるってこたぁ、A級以上だな」

 ユイナの光系統魔法を解呪できるほどの「強敵」。それが100メートルほどの距離まで迫っている。


「……もしかして……あれ?」


 声を上げたのは、和葉だった。

 左手の空間に目をこらした彼女は、そういって前方を指さす。

 目測200メートルほど続く直線の経路。その先を巨漢が歩いている。


「おそらくは。あれの近く……100メートル程度の範囲まで行くと、光も風も解呪されます」

「って、あれ……ひょっとして、一つ目? サイクロプス、って奴?」

 暗い洞窟の中で、和葉は敵の姿をとらえていた。


「よく見えるわね和葉」

 晴美は思わず声を上げていた。


「確かに、ありゃサイクロプスだな」

 ゲントが言う。この世界でも、「サイクロプス」という名の「一つ目の怪物」がいるのだろうか。


「って、サイクロプスで、解呪ができる、ってことは、まさか……」

 ユイナの声が引きつる。

「相当危ない奴、みたいね……」

 至極当然のことを、晴美は口にしてしまう。



 程なく、サイクロプスは100メートルほどまで近づいた。

 当然、こちらの姿は視認されているはずだ。


「こっからは、魔法はダメ、ってとこだな」

「それだけじゃないです! ゲントさん! 気をつけて!」

 ユイナが叫んだその瞬間、サイクロプスの目が光った。


「【光の盾】!」

 ユイナが詠唱し、一瞬「光の盾」が現れる。しかしそれは、次の瞬間には消えていた。


「ダメです! 『光の盾』も保たない! 逃げないと、石化されます!」

 ユイナの叫び。「石化の邪眼」に「こちらの手札は解呪される」。晴美の意識に、それらのことが駆け巡る。


「【発光】! 【光まとえる(アイゼスヴァント・)氷の壁(ミット・デム・リヒト)】!」


 前方に「発光」の術を発動して敵の目をくらませて、その間で光系統の「ラ」を帯びた「氷の壁」を展開する。

 直後、自らの展開した「氷の壁」の表層が石化されたのがわかった。


「ハルミさん!」

「敵は、『アイゼスヴァント』を物理の壁だと思ってるわ! 今のうちに撤退しましょう!」

 晴美が展開した「氷の壁」。その厚さは3メートルほど。それが「保つ」までに稼げる時間は、そう長くないとみるべきだ。


「だな! いったん撤収だ!」

 ゲントの声に、全員が階段へと走り出した。

「名前を呼んではいけないたぐいの怪物」をそのまま出すのはさすがに気が引けましたので、代わりに「一つ目」のやつを出しました。


ちなみに、「アイゼスヴァント・ミット・デム・リヒト」(Eises Wand mit dem Licht)は、「アイゼスヴァント」(Eises Wand)が「氷の壁」、「ミット・デム・リヒト」(mit dem Licht)が「光を伴う」です。

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