44. 第3回レベル判定
神殿幹部の前で、公式のステータス判定です。
翌日午前、召還以来3度目のレベル判定が行われた。
最初に判定を受けた晴美は、前回と全く同じ「レベル72・クラス『聖女騎士』レベル26」とされた。
クラスメイトたちにざわめきが走る一方、モールソ神官とグリピノ神官は、遠目にもわかる冷笑を浮かべた。
桂木和葉は「レベル35・クラス『遊撃戦士』レベル27」で、前回から基礎レベルが1上昇しただけだった。
彼女は、目線を上げることもなく、終始硬い表情のままだった。
嵯峨恵令奈は「レベル33・クラス『魔法導師』レベル26」で、基礎レベルが2、クラスレベルが1上昇という結果だった。
彼女は、その結果にさしたる関心もない様子だった。
そして仙道衛は、「レベル35・クラス『守護騎士』レベル27、ただし守護対象未定」とされた。
前回から全く変動がなく、すでに指定されているはずの「守護対象」も「未定」とされている。
「センドウ殿、『守護対象奉告』はまだだったのか。だから停滞しているのだよ。これが終わったら、すぐに聖堂に行って、勇者殿を守護対象として奉告したまえ」
「そのつもりは、ありません。平田に、護衛の必要はないので」
モールソ神官に声をかけられて、仙道は即座に切り返した。
「は?」
「平田が、レベル60とかになってたら、レベル35が守る筋合いはないはずです」
そういって、仙道はモールソ神官から離れる。モールソ神官は、鼻白んだ様子でその後ろ姿を見送っていた。
そうこうするうちに、平田正志の順番が巡ってきた。
「マサシ・リデロ・フィン・ヒラタ殿、レベル58、クラス『勇者』レベル25です」
おお、というどよめきが、神殿側から上がる。モールソ神官とグリピノ神官の喜色もあらわだった。
「マジか、平田、レベル58って……」
「相沢にも追いつくんじゃね?」
「奴にはもう逆らえねえよ……」
クラスメイトたちからは、そんな声が漏れてくる。
「みんなから『ラ』を吸い取って、レベル60近くまで来た、って訳ね。ユイナさんが必死で上げたレベルを、こんなやり方で追い抜くなんて……」
晴美は、平田を見つめつつそうつぶやく。
「これで、晴美さんと仙道君からも『搾取』できてたら、レベル65くらいまでは来てたと思う」
「……そう、ね。私たちからは、搾れなかった訳だからね……由真ちゃんのおかげで」
そういって、晴美は表情を緩めた。
「ツヨシ・モウリ殿、レベル35、クラス『拳帝』レベル26です」
その声で、再びどよめきが上がる。
昨日由真に「大外透」で投げ飛ばされた毛利剛は、基礎レベルを10も上げていた。結果、嵯峨恵令奈を追い抜き、桂木和葉と並ぶ位置にまで達した。
「何のレベルが上がったっていうのかしら?」
「膂力と耐久性だと思う。昨日も、受け身はとれてなかったけど大けがはしなかったみたいだし」
晴美の漏らした疑問に由真は答える。物理系のSTRとVITに「極振り」される成長をしているのだろう。
「セイナ・ワタライ殿、レベル36、クラス『賢者』レベル18です」
判定の最後を飾った度会聖奈。彼女もまた、基礎レベルが10上昇していた。
その聖奈は、喜ぶ様子は見せず、ちらりと由真たちの方に目を向けて、席に戻っていく。
そして今回も、由真のステータスは判定することなく、これで解散となった。
大きく伸びた人、停滞してしまった人、明暗分かれました。
(一部ステータス偽装している人たちもいますが)
次回は、彼女のお話です。