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42. 仙道衛のモノローグ (6) 俺の「第一守護対象」

仙道くんのクラスは「守護騎士」です。となると、必要なのは…

 午後から時間が空いたため、俺はいつもの自主練場所に向かう。程なく、相沢・渡良瀬に島倉・七戸、さらにセレニア神官とも合流した。


「そういえば仙道君、モールソ神官のあれ、大丈夫だった?」

 渡良瀬が俺に聞いてくる。


「あれ? なんのことだ?」

「なら大丈夫だね」

 そういって、渡良瀬は俺に微笑を受ける。それは、あまりにまぶしすぎた。


「大丈夫、って……なにか、あったのか?」

「実は、モールソ神官、仙道君に『弱体化』の闇系統魔法を仕掛けてたんだ。そう来ると思って、パッシブで『弱体化』の『マ』を無効化する光系統魔法の術式をあらかじめ組んでおいたんだけど、役に立ったみたいでよかった」


 ――ようやく俺は事の次第を知らされた。

 モールソ神官が騒いでいたのは、渡良瀬の言う「『弱体化』の闇系統魔法」を仕掛けたのにそれが通じずに焦っていたということだ。「試合」と言いつつ一方にそんなことをするとは、この神殿の連中は想像以上に腐っている。

 そして、それを「無効化する」術を仕掛けたという渡良瀬。会話の端々から、渡良瀬がセレニア神官と同等以上に魔法を使うことはなんとなく察していた。その力量は、少なくともモールソ神官の鼻を明かす水準にはあるらしい。


「あれ? もしかしてそれ、あのヒロインムーブのときにやったの?」

「……だから言ったよね、そういうんじゃない、って」

 島倉と渡良瀬が、そんなことを言い合っている。


「あ、それでですね、実は、明日のステータス判定ですけど、今ここにいる4人の皆さんは、前回と同じ結果を出しますので、承知しておいてください」

 セレニア神官が言う。


 2週間前のステータス判定の直後、俺たちの力を吸い取って、平田・度会・毛利の3人に振り分ける術が仕掛けられた。

 幸い、俺を含むこのメンバーは、渡良瀬が解呪してくれたおかげで影響を受けていない。

 しかし、明日のステータス判定で俺たちに「成長」が確認されれば、俺たちが「対策」をとっていることに神殿の幹部連中も当然気づく。

 そこで、俺たちのステータスが「停滞」していると装うのだろう。


「それで、せっかくですから、ここで皆さんの実際のステータスを確認しておきましょう」

 そういって、セレニア神官は小さな水晶玉と水晶板を取り出した。それを使うと、神殿内で使われている大がかりな器具と同様にステータス判定ができるらしい。


 最初は、相沢が判定を受けた。


NAME : ハルミ・リデラ・フィン・アイザワ

AGE : 16 (1 MA / 103 UG)

SEX : 女

LV : 78


STR : 150

DEX : 460

AGI : 280

VIT : 140

INT : 2450

MND : 1200


CLASS : 聖女騎士 LV 31

GIFT : 光の神子 (S) / 氷の姫神 (S)

SKILL

標準ノーディア語翻訳認識・表現総合 LV 8

光系統魔法 LV 10

氷系統魔法 LV 10

闇系統魔法 LV 9

水系統魔法 LV 7

風系統魔法 LV 6

槍術 LV 9

剣術 LV 7

地理学 LV 6

歴史学 LV 4

生物学 LV 4


「こないだより、さらにキレッキレですなぁ」

「アイザワさまって、ひょっとしてスライムを300年くらい倒し続けてた?」

 島倉と七戸がそんなことを言う。実際、4桁に達しているINTとMNDやレベル10を含む多数の魔法とその他のスキルは、ただただ圧倒的だった。


 次に判定を受けたのは、他ならぬ俺だった。


NAME : マモル・センドウ

AGE : 16 (14 UN / 103 UG)

SEX : 男

LV : 43


STR : 420

DEX : 540

AGI : 450

VIT : 550

INT : 300

MND : 320


CLASS : 守護騎士 LV 31 - 守護対象は未定

GIFT : 栄光の守護者 (A)

SKILL

標準ノーディア語翻訳認識・表現総合 LV 6

無手武術 LV 7

剣術 LV 8

地理学 LV 5

歴史学 LV 3


「明日、カツラギさんとサガさんの結果が出たらわかりますけど、センドウさんは、解呪のおかげで順調に伸びてますけど、他の人たちは、軒並み停滞させられてます」

 セレニア神官はそう言った。


「あと、『守護対象』ですけど、この『クラス』の場合、『守護対象』が決まらないと成長が今ひとつなんです。逆に、『守護対象』が決まれば、それに応じてステータス以上に強くもなります」


 ――やっぱりそれか。

 セレニア神官にも言われて、思い出させられた問題。


「セレニア神官、俺は、平田を『守護』するとか、どうしても受け入れられないんです」

「まあ、別に勇者様を『守護』しなければいけない訳でもありませんから。あの、もちろん、ここの幹部の皆さんは、当然そうすべきだと思っているみたいですけど……ギフトとクラスは、センドウさんのものですから、最後は、センドウさんが守りたい人を指定すればいいんですよ」

 優しく、穏やかに、セレニア神官はそう答えてくれた。


「俺が……守りたい人……」

 そう口にした俺は、思わず女子の一人――他ならぬ渡良瀬に目を向けてしまう。


「ああ、『守護対象』は、『第一』から『第三』までの三段階あって、『第一』は一人限りですけど、『第二』は最大10人、『第三』は不定です。なので、ここにいる皆さん全員を『第二』に指定しておく、というのも可能ですよ」

 そう言われると――俺はいよいよ渡良瀬に見入ってしまう。


「意中のお相手がおられるなら、今ここで、『守護対象奉告の儀』をしちゃいましょうか」

 そういって、セレニア神官は鞄から小さな女神像を取り出した。


「え? ここで? できるんですか?」

「ええ。ここの聖堂は、邪魔が入りかねませんし。……あの、私なら、これで十分可能ですから」

 そう言われては、俺に断る理由もない。そのまま、セレニア神官は机に即席の祭壇を設けた。


「神官ユイナ・セレニアが申し上げます。守護騎士レベル31、マモル・センドウ殿が守護対象を定め、ここに女神様に奉告せんと欲しております」

「神官ユイナ・セレニアを認証しました。守護騎士レベル31、マモル・センドウを認証しました。守護対象の奉告を許可します。守護対象の等級と名を提示してください」

 女神像から、妙に機械的な口調で返事が来た。


「それでは、センドウさん、どうぞ」

 そう言われて、俺は一瞬息が詰まった。深呼吸して、心を整えて、思い切って切り出す。


「あ、あの……俺、仙道衛は、……渡良瀬由真(よしまさ)を、守護対象に指定したいと思います」

「ヨシマサ・ワタラセは、登録されていない名です。現在の名はユマ、クラスは雑兵レベル0。ユマを守護対象に指定することを希望するのであれば、正規の名前で改めて宣言してください。また、等級が指定されていません。併せて等級を指定してください」


 機械的なその答えに、またしても俺は息が詰まる。名前で、「ゆま」と呼べというのか――

「……その、等級、というのは……」

「第一から第三のいずれかのことです。『第二守護対象に』と言ってもらえれば通じます」

 そう答えたセレニア神官は、にこりとほほえんだ。「第二」と言うつもりかどうか、試されてるのか――


「わかり……ました。俺、仙道衛は、渡良瀬由真(よしまさ)改めユマを……だ、第一守護対象に、指定します」

 俺は、なんとか言い切った。


「奉告を受理しました。守護騎士レベル31、マモル・センドウの第一守護対象として、ユマを登録しました」

 その機械的な答えに、俺は大きく息をついていた。


「って、あの、せ、仙道君……第一、って、あの、一人きり、って言ってた、あの第一?」

 他ならぬ渡良瀬――由真の声。振り向くと、この美少女の頬が赤く染まっていた。

「ああ、その第一だ」

「って、それ、一人きり、なんでしょ?」

「ああ、そうだな」

「もう、由真ちゃんってばぁ、そぉんなのわかってるくせにぃ」

 島倉美亜が大仰な声を上げて、由真を肘でつつく。そのからかいに、由真は、いや、あの、その、などと口元でもごもごと言い、顔を伏せてしまう。


 そんな姿に、俺の顔も強烈にしびれ、そして顔を上げられなくなってしまった。

(そうだ。一人きりの『第一守護対象』だ。俺は、渡良瀬を……いや、由真を守り抜く)

 ともかく俺は、そう自らに言い聞かせた。

アイザワさまは、スライムを300年倒し続けてはいません。


さて、仙道くんの一人称、いかがだったでしょうか。

このお話の「恋愛成分」がこちらになります。

「異世界(恋愛)」の作品と比べると、希薄もいいところですね…


次回からは、由真ちゃん視点の三人称に戻ります。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  仙道→由真へは割とフラットな感情と感じていたので、恋愛成分にちょっとした驚きを感じました(笑)  が、元男性に対して恋愛成分になってしまえるのは、フラットと言えますね。
[一言] あらやだ、実質求婚じゃないですかw
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