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245. 新たな敵

出現した気配。それは――

「え?」


 小型バソのハンドルを握っていたウィンタは、まなざしを険しくしてブレーキをかける。


「あれは?」


 魔法の能力はないはずの衛にも、感じるところはあるのか、警戒をあらわにダムを見つめる。


「あれは……まずいな」


 そして由真は――約1キロ前方にあるダムの人工湖に出現した「それ」を認識し、即座に魔法解析を行い、その「水準」を理解させられた。


「火系統、雷系統、地系統は使う。闇系統も、かな。そもそもあれ……ダム湖の上に立ってる」

 解析できた状況を口にして、由真は棍棒を手に取る。


「あれは……低く見ても、あの河竜程度には、強いね」


 その意思の力「ダ」。それにより引き出された「ラ」のエネルギー。その強さは、例の河竜を上回る。これほどの敵は、七首竜以外には見たことがなかった。


「由真……」

 由真に呼びかけつつ、衛が大盾を手に取る。


(って、この盾……)


 出発前に、晴美と和葉の武器と合わせて腐食対策は施した。

 しかし、ダム湖の上にいる敵の「ダ」と「ラ」からして、それだけでは足りない。


 由真は、衛の盾に手を添えて、素早く呪文を組み立てる。


「『盾に(オムネース)攻め(ウェロキターテース)来る(オプーグナンテース)一切の(コントラー)速度を(スクトゥム)その前にて(プロー・ホーク)完全に(ペルフェクテー)除去せん(デレアム)』」


 一つ目の呪文を唱える。


「『盾を(オムネース)超え来るカリダーティオーネース一切の熱とエレクトリキターテースクェ電気の(トランセウンテース)力を(ペル・スクトゥム)完全に(ペルフェクテー)遮らん(インテルキピアム)』」


 次の呪文を唱えて、由真は盾から手を離した。


「由真、何を?」

 衛が問いかけてきた。


「この盾に来る攻撃の速度を消す術と、盾の中を伝わってくる熱と電気を遮る術を、まとめて施した。これで、地系統魔法でも物理でも、攻撃はたいてい緩和できるし、火系統魔法とか雷系統魔法が来ても、完全に近い断熱と絶縁ができるよ」

 由真は、先ほどの呪文に込めた術式を答える。

 これで、事前に施すことのできる対策は、およそできただろう。


「それから、周りに他の敵は……」

 念のため、と思い、由真は索敵を巡らせて――川の下流14キロほど先に、強大な「ダ」を検知してしまった。


「これ?! まさか、河竜も?!」


 この距離でも十分感じられるだけの強い「ダ」。

 一度見た相手でもあり、間違いようがない。


「え?!」

「河竜?!」

 ウィンタと衛が、驚きをあらわに目を見開いて由真に振り向く。


「やられました。……あの場所に、河竜が出ました」

 歯ぎしり、うめき。そういったものをどうにかこらえて、由真は2人に「事実」を告げる。


「河竜って……でも、こっちの敵は……」

 険しいまなざしで、ウィンタはダムの方に向く。

 そこに現にいる「敵」。それは、14キロ先の河竜と同等以上の強さをもって、ダムから先を狙っている。


「『最強の(マクシマース)魔を(ポテスターテース)滅ぼす(サクラース)最大の(クアエ)聖なる(ディアボリコース)力を(フォルティシモース)我は(オッキデント)伝えん(トランスフェラム)』」


 その呪文。川下にいる晴美たちに「力」を伝えることを願うそれにかけるしかない。


「それから、他に加勢されたらまずいから……『我らの周りの(ディアボリコース)魔の物を(キルカ・ノース)滅さん(ペルダム)』」


「ダ」を帯びる魔族と魔物を対象とする広範囲の即死魔法。

 ダムの方向に2キロほどの範囲なら、潜んでいた敵も全て死んでいるはずだった。


「後は……こっちの敵ですね」


 由真はバソから降り、衛とウィンタも続く。


 1キロほど前方のダム。

 歩けば10分から15分はかかる距離。

 しかし、あの強大な魔物との間としては、すでに十分接近している。


 その敵の「ダ」がにわかに強まる。集積された「ラ」が、ダムの堤体に向かって――


「『それを(イド)沈めん(デーメルガム)!』」

 とっさに詠唱する。水面に立っていた敵は、次の瞬間足場を失い水中に沈んだ。


「『水により(アブ・アクアー)それを(イド)圧せん(コンプリマム)!』」

 さらなる詠唱。敵の放とうとした「ラ」は、水圧によって相殺された。


「ウィンタさん、敵が浮いてきたら、風でこちらに押してもらえますか?」

 ダム湖に沈み水圧に囲まれた敵がおぼれている間で、由真はウィンタに問いかける。


「こっち、って、手前ってことね?」

「はい。ダム……堰堤の向こう側にいられては、こちらが不利です」

 最重要の防衛対象であるダムを挟んでの戦いなど、続ける訳にはいかない。


 程なく、敵は水面に戻ってきた。


「【風弾十連・収束】!」


 そこを狙って、ウィンタの風弾が放たれる。

「十連・収束」の威力は、敵の体を弾き飛ばすに十分だった。


 敵は、落下する寸前でダムの天端に踏みとどまろうとした。


「『摩擦を(フリクティオーネム)除去せん(デレアム)!』」


 その瞬間、由真は詠唱する。


 敵の乗る天端の摩擦係数をほぼゼロにする術。

 それにより、敵は風圧に押されるままに転落した。


 大型動物が背中から落下して、地面に衝突する――直前に、その体躯が回転し、四つ足で着地した。


 遠目に見えたその姿は、背中の白い縞が目立つ、()()()だった。

魔法を駆使して、防具も強化した上で、この敵に挑みます。


その魔法の呪文ですが、綴りは次のとおりです。


"Omnes velocitates oppugnantes contra scutum perfecte deleam."

"Omes calidationes electricitatesque transeuntes per scutum perfecte intercipiam."

"Maximax potestates sacras quae diabolicos fortissimos occident transferam."

"Diabolicos circa nos perdam."

"Id demergam."

"Ab aqua id comprimam."

"Frictionem deleam."

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