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237. さらなる栄典

前回さらに成り上がった主人公ですが…

 王子と由真たちを乗せたバソは、エンジンの音とともに走り出した。


「他にも差し入れがあるのですが、それは、神殿に着いてからお渡しします」

 エルヴィノ王子がそんなことを言う。まだ他にもあるのか。

「それで、こちらは、民政省の幹部の皆さんです」

 そう言って、王子は前方の面々に掌をかざす。


「民政尚書のカルノ・フィン・コールトでございます。タツノ副長官には、たびたびご指導を賜っております」

 タツノ副知事と同年代とおぼしき年配男性が口を切る。

 その声は、通信で何度か聞いていたものの、生で聞くのはこれが初めてになる。


「民政次官のヴィスタ・フィン・ファラシアと申します」

 そう名乗った女性は、「次官」という肩書きにしては若々しく見える。


「冒険者局長のトラガルモ・フィン・ビルトでございます。このたびは、シチノヘ理事官に、いろいろ助けていただきまして、大変に感謝しております」

 初老の男性が、そう名乗って頭を深く下げた。


「冒険者局長ということは……」

 自らも「冒険者」である由真にとって、この人物は上司というべき地位になるのでは――

「いえ、冒険者局と申しましても、『民間化』以降は名ばかりの小さな所帯でして……今回のようなことでも、冒険者を動員する権限もございませんので……」

 相手は恐縮をあらわに言う。


「お三方とも、タツノ長官が退任される際に推薦された人物です。コールト尚書は民政次官からヒルティア県副知事に転じていました。ファラシア次官は民政省社会局長、ビルト局長はアトリア市冒険者局長でした」

 エルヴィノ王子が言う。

「推薦はいただいたのですが、私などは、とても器ではありませんで、今回も、閣下と副長官におすがりする始末でして」

 コールト尚書は、そう言ってぺこぺこと頭を下げる。


 程なくたどり着いた先は、前回祈祷のために立ち寄ったコモディア神殿だった。


 聖堂のすぐ脇に、大きな会議室が1室、小さな部屋が数カ所あった。

 エルヴィノ王子は、由真のほかに、コールト民政尚書、ファラシア民政次官、ビルト冒険者局長に、ファスコ官房長、それに愛香を伴って、小部屋の一つに入る。


「それで、ユマ殿に差し入れです」

 エルヴィノ王子がそう言うと、ファスコ官房長が封書と小箱を用意する。


「コーシア伯爵ユマ。S級命婦に叙任す。アスマ騎士団に列す。大陸暦120年晩夏の月8日、ノーディア国王ウルヴィノ陛下のために、エルヴィノ・リンソ・フィン・ノーディア」

 エルヴィノ王子は、紙を朗読して、それを由真に手渡す。続けて。ファスコ官房長が差し出した小箱も渡された。



コーシア伯爵ユマ


 S級命婦に叙任す。

 アスマ騎士団に列す。


大陸暦120年晩夏の月8日

ノーディア国王ウルヴィノ陛下のために

 ノーディア王子エルヴィノ



 紙にはそう記されていた。

 小箱の方を開けると、ワッペンのようなものが大小2つ入っていた。小さい方は長い帯に結ばれている。


「そちらは、いわゆる『クンショ』というものですね」

「……『クンショ』?」

 エルヴィノ王子の言葉を由真はオウム返しにしてしまう。

 目の前の「それ」は、由真の目には「勲章」に見えた。どうやら、「勲章」はそのまま輸入語になっているらしい。


「そちらは、今月中に叙任すればよいと思っていたのですが……このところ、大夫云々という称号がしきりに飛び交う風潮が顕著になってきたもので、とりあえず用意しました」

 これもまた、アスマ軍首脳部の「戦い」の招いた結果らしい。

「ちなみに、あたしも往きの特急でこういうのをいただいた」

 横合いから、愛香がそう言って紙を見せる。



アイカ・シチノヘ


 勅命を奉じ騎士爵を授与する。


大陸暦120年晩夏の月8日

アスマ公爵ノーディア王子エルヴィノ



アイカ・リデラ・フィン・シチノヘ


 A級命婦に叙任せらる。

 アスマ騎士団に列せらる。

 以上勅旨を奉じ謹みて奏す。


大陸暦120年晩夏の月8日

アスマ公爵ノーディア王子エルヴィノ



「アスマ軍との関係では、シチノヘ殿が矢面に立っていますから、箔をつける程度のことはさせていただきました」

 エルヴィノ王子は淡々と言う。

 確かに、あのアスマ軍が相手では、騎士爵もない「臣民」というと、それだけで「マウント」を取りに来られるだろう。


「愛香さんも、これで貴族様?」

「ユマ様には遠く及ばないけど、もらえるものはもらう」

 由真の言葉に愛香が応えた、ちょうどそのとき。


 屋外から、突如甲高いラッパの音が鳴り響いた。

勲章がどうこうでマウントを取りに来るなら、勲章を出して対抗するだけ―という「戦い」の結果です。

愛香さんも「リデラ・フィン・シチノヘ」です。


そこへ鳴り響いたラッパの音ですが――

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