表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

168/451

167. いざ出発

チーム由真ちゃん、いよいよ出発します。

 由真は、ウィンタに示唆された救急箱と、予備用に10メートルロープ1本を購入した。


 夕食を済ませて部屋に戻ってから、最終の荷造りをする。

 持ち運び用の背嚢も手に入れたため、列車の中でも使いそうなものはそちらに入れる。

 そうなると、大型背嚢がそれ自体かさばってしまう。アトリア西駅やコーシニア中央駅のような自動改札となると、通過するにも邪魔になるだろう。

 手荷物が託送できるという話なら、明日早起きして試してみるのもいい。


 あらかた片付いて、シャワーを浴びてから時刻表に目を通す。

 この版は、大陸暦120年盛春の月1日に行われたダイヤ改正を反映したものだということで、ダイヤ改正の要目に関する記事も掲載されていた。

 それを読んでいるうちに、時刻は午後10時を回る。

 明日に備えて、由真はそこで就寝することにした。



 翌朝。

 6時に起床した由真は、大型背嚢を持って受付窓口に向かう。

 早朝ながら、メリキナ女史はすでに窓口に入っていた。


「おはようございます、閣下」

 向こうから声をかけてきた。

「おはようございます、メリキナさん。あの、今からでも、荷物の託送って、お願いできます?」

「はい。大丈夫です」

 メリキナ女史に快諾してもらって、由真は一息つく。


「朝早くから済みません。メリキナさんも、大変ですね」

「いえ、今日は、閣下ご一行のご出発に向けた最終準備がありますので。これが終わったら、後は休みます」

 この受付嬢が本当に「後は休む」かどうかは若干疑問だったものの、それは言わずに由真は荷札を受け取った。


 晴美と和葉も、同様に箱型鞄を持ってきてメリキナ女史に託送を頼んだ。

 3人でいったん宿泊棟に戻って朝食を済ませて、集合時間の8時20分にロビーに入ると、衛、ウィンタ、ユイナも到着していた。

 衛は鞄を、ウィンタは背嚢を手にしていた一方、ユイナは手提げ鞄のみの身軽な姿だった。



「それでは出発しましょう。今回は、タミリナまでは快速になります」

 そう言ってユイナが先頭に立つ。


 前回使った「シンカニオ」の改札口ではなく、今回は「普通列車」の改札口から入ることになる。

 こちら側は、ホームに降りる階段が並んでいる。


 1番線・2番線が「シナニア線各駅停車・メトロ東西線」、3番線・4番線が「シナニア線快速」、5番線・6番線が「サイティナ線」、7番線・8番線が「コノギナ線」、9番線・10番線が「第1環状線」とされていた。


 3番線・4番線に向かう階段を降りると、左右に地下ホームが居並んでいた。


 両側に案内板があり、3番線側は「8:50 タミリナ行 15両」「特等・一等-1号車 二等-6・7号車」、4番線側は「9:00 トコアノ行 15両」「特等・一等-1号車 二等-6・7号車」と表示されている。


 3番線には銀地に緑色の帯の列車が停車していた。

 側扉を4つ備えたロングシートのその車両は、すでに満席のようだった。


「まだ余裕がありますし、まとまった席を取った方がいいでしょうから、次のにしましょう」

 そう言いつつ、ユイナは進行方向に進む。


 ちょうどそのタイミングで、4番線に列車が入線してきた。

 こちらもやはり銀地に緑帯で――扉の間にクロスシートがあるように見えた。

 停車直前まで減速した車内を注意して見ると、4組ある扉の間に各1組ずつのボックス席が備えられている車両があり、それにロングシートのみの車両が続いている。


「そちらは三等車です。今回は二等車なので、こちらですね」

 ユイナは、そう言って先を促す。


「って、これ通勤電車じゃないの? 二等車もあるの?」

「あちらの各駅停車の方は、横座席の三等通勤車しかありませんけど、こちらの快速はタミリナから先にも行きますから、特等・一等車もついてますよ」

 晴美の問いにユイナが答える。


 列車は15両編成で、最先頭の1号車が「特等・一等車」、6号車と7号車が二等車だった。

 7号車に入ると、車内はカンシアと同じ片側向きの2人掛けリクライニングシートが並んでいる。両端の壁には時計もかけられていた。

 3番線の方が発車する前だったため、由真たちは、前後に並ぶ4席とその隣の2席を確保することができた。



 8時50分に3番線の列車が発車し、程なく次の列車が到着して、9時になると由真たちを乗せた列車も発車した。


 列車はすぐに地上に抜けて高架線に入り、複々線の外側を走行する。


 もう1本の線路が地下から上がって複々線のさらに外側に連なると、最初の停車駅ノクティナ・アトリカに到着する。

 この駅のホームは島式1面2線で、複線1組を挟んで反対側にも島式1面2線があった。


 ここを出ると、列車は線路が6本連なる三複線の中央を走る。

 外側の路線に相対式ホームのある駅を3つ通過した先で、次の停車駅オクトバとなる。

 ホームの構造は、ノクティナ・アトリカと同じだった。



 さらに2駅に停車して、快速列車はタミリナに到着した。

 ホームの時計は9時半を指している。ちょうど30分かかったということになる。

 見える範囲は島式ホーム3面6線で、その先に高架線を乗せた建屋がそびえていた。


 階段を降りた先がコンコースで、改札口は南口と北口がある。


 由真たちの乗った列車が到着したのは2番線で、3番線・4番線がシナニア線の上り、5番線・6番線がタミリオ丘陵線、下り階段の降り口に「7番線・8番線 第2環状線乗り場」の看板がある。

 そして、5番線・6番線の先に「シンカニア乗り場」の看板が掲げられ、その下に自動改札機が並んでいた。


「シンカニアは、乗換で乗るときは、乗車駅で自動改札機をもう1回通さないといけないんです」

 ユイナに言われて、時刻表にそんな注意書きがあったのを思い出した。


「これ、『カザリア号』と『ナスティア号』の乗り場でしか見たことないのに、アスマだとこんなとこにもあるのね」

 ウィンタが切符を通しつつ言う。


「北駅、ナスティア駅、イトゥニア駅にあるのは、元はシンカニア用として先に入れたらしいです。『ミノーディア』の増発も見込んでたみたいですけど」

「それ、『東線』ってやつよね。凍結されたままだけど……」

「たぶん、再開はないと思います。アルヴィノ殿下はナスティアから先にご関心はないですし、ナスティア以遠の着工がないうちはナスティアまでの着工も陛下がお認めになりませんから、止める人はいても進める人はいませんし……あ、こちらですね」

 ユイナは、そう言って表示板を指さす。


 そこには、「コーシア125号 コーシニア中央行 10:00 13番線 12両」「停車駅:オトキア、コーシニア中央」「特等-1号車、一等-2号車、二等-3・4号車、三等-5~7号車、9~12号車、食堂車-8号車」と記されていた。


 その上に「コーシア123号 コーシニア中央行 9:45 14番線 12両」「停車駅:オトキア、コーシニア中央」「特等-1号車、一等-2号車、二等-3・4号車、三等-5~7号車、9~12号車、食堂車-8号車」という表示もある。


 予定より1本早い列車にも乗れるタイミングだったが、早く着く分には別段問題はない。

 由真たちは、その列車に乗るべく、案内板の先にある階段に向かった。

――支度が冒頭まで完了していませんでした。これから特急に乗り換えるところです。


現地到着まで、今少しお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ