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13. 由真(ゆま)として、新たな暮らしへ

ようやく落ち着きます。

 その部屋は、日本でいう3LDKの間取りだった。

 玄関から中に入ると右手にバストイレが、左手に扉があり、正面に台所を備えた居室がある。居室の奥に扉が2つあり、いずれも部屋につながる。

 居室とその奥の2室はフローリング、玄関左手の扉の奥にあるもう1室は畳敷きだった。フローリングの2室のうち1室には大きなベッドが据えられている。

 晴美は、ベッドが据えられた部屋を寝室、もう1室のフローリングの部屋を書斎とし、玄関そばの畳部屋が由真(よしまさ)の居室とされた。


「ごめんなさいね、渡良瀬君。『従者』とか、そんな失礼なことにしちゃって。私には、他にいい知恵が浮かばなくて……」

 リビングに落ち着いたところで、相沢晴美はそういって頭を下げた。


「いえ、ごしゅじんさ……」

「いや、ちょっと、それは止めて。私はそんなつもりがあった訳じゃないんだから。敬語とかも止めてよ」

 すかさず制止されて、由真は相手に対する「主人に対する礼」は止めることにした。


「いや、あの状況は、……僕は、完全にあきらめてたから。相沢さんのおかげで、こうして生きていられて、感謝の言葉もないよ」

「そう言ってもらえると助かるわ」

 相沢晴美は、そういってため息をつく。


「それで、女神官さん、えっと……」

「あの、私は、ユイナ・セレニアと申します。ユイナ、と呼んでくだされば」

 女神官――ユイナが応える。

「それじゃ、ユイナさん。登録の手続きがどうこう、って彼らは言ってたけど……」

 相沢晴美に問われて、ユイナは「臣民」と「住人」の違いについて説明する。


「名字なし……前近代的ね……」

 そのつぶやきに、ユイナは、ええ、とだけ応えた。

「名前……そう、名前よね。渡良瀬君、『理由』に『真実』で『由真』って書いて『よしまさ』って読むわよね? けど、今現在は女の子……となると……」


 一連のごたごたで、あえて思考を向けていなかったそのこと。「異世界」といっても、そもそもクラスメイト39人と行動をともにしている以上、日本語の名前を巡る是非を考えない訳にはいかない。

 幼少の頃から、「由真」という文字に対しては、「ゆま」という名の「女の子」という先入観をもたれる傾向が強かった。それに対する反発から、由真は心身の鍛練に打ち込んできた。

 とはいえ、そうして鍛えたはずの心身は、この異世界にはすでにない。あるのは、眼前の相沢晴美よりも小柄で華奢な少女の身体だけだった。


「『ゆま』っていう読み……そうだね、『男に戻るまで』は、受け入れざるを得ない、よね」

 あえてそう口にすることで、由真の感情は、どうにか落ち着きを得た。「男に戻るまで」は、女名前も甘受するしかない。


「語末がア段だと、こっちの世界の女名前としても、自然なんですよね?」

 由真はユイナに尋ねる。

「はい。ノーディア語は、男性名詞の語尾は「オ段」、女性名詞の語尾は「ア段」が圧倒的ですから」

 それは、由真が推測したとおりの答えだった。


「それでは、『ユマ』さん、として、登録する、ということで……」

「それで、お願いします」

 ユイナに答えて、由真は内心を決定する。


「ところで、あの、アイザワ様とユマさんの関係は、結局どのようになるのでしょう?」

「私は、『ご主人様』とか言ってふんぞり返るつもりはないです。渡良瀬君……由真ちゃん? 彼女にとって自然な関係で」

 そう答えると、彼女は由真の方に向く。


「ただ、そうね、度会さんだけじゃなくて、平田君と毛利君も危険ね。仙道君はこっち寄りの可能性があるけど……とにかく、今の彼女は、すごく微妙な位置に立たされてるから、彼女を保護するつもりはあるわ。他の全てを犠牲にしてでも。それは間違いない」


「そうしたら、あの、アイザワ様は、ユマさんの味方、保護者、そう理解しても、よろしいのでしょうか?」

 ユイナは、そう問いかけつつ、由真に目を向ける。その意図は、由真にも理解できた。


「僕は……相沢さんに救われた命だから、ステータスとかなんとかは、相沢さんに隠すつもりはないです」

「わかりました……けど、念のため、確認を取らせてください」

 そういって、ユイナは手元の鞄から小さな女神像を取り出した。


「神官ユイナ・セレニアがお尋ねいたします。ハルミ・リデラ・フィン・アイザワ殿をユマさんの保護者とお認めになられますか?」

「質問者、神官ユイナ・セレニアを認証しました。聖女騎士ハルミ・リデラ・フィン・アイザワを認証しました。質問に回答します。ハルミ・リデラ・フィン・アイザワは、ヨシマサ・ワタラセ改めユマの保護者として認定可能です」

 相変わらずの機械的な口調で、女神像――を通じて女神は答えた。


「それでは……」

 由真のギフトとクラスについて、ユイナは相沢晴美に説明した。

「これが、僕のステータス」

「名前は、もう『ユマ』に変更されています」


NAME : ユマ

AGE : 16 (29 UP / 104 UG)

SEX : 女

LV : 0


STR : 0

DEX : 0

AGI : 0

VIT : 0

INT : 10000

MND : 10000


CLASS : 雑兵 LV 0 / 魔法導師(無系統魔法) LV 0 遊撃戦士 LV 0 民政顧問官 LV 0 都市管理官 LV 0 都市技監 LV 0 農村管理官 LV 0 魔道具製作師 LV 0 医薬師 LV 0

GIFT : ゼロ (X)

SKILL

標準ノーディア語翻訳認識・表現総合 LV 10

無系統魔法 LV 0

無相武術 LV 0

民政学 LV 0

都市経営学 LV 0

都市工学 LV 0

公衆衛生学 LV 0

農業経営学 LV 0

魔法解析術 LV 0

魔道具工作技術 LV 0

医術 LV 0

薬学 LV 0


「これ……ツッコミどころ満載……っていうか、ツッコミを入れる気もなくなるくらいのイレギュラーね……」

 ため息をついて、相沢晴美は自らのステータスを示した。


NAME : ハルミ・リデラ・フィン・アイザワ

AGE : 16 (1 MA / 103 UG)

SEX : 女

LV : 64


STR : 140

DEX : 400

AGI : 260

VIT : 130

INT : 2000

MND : 910


CLASS : 聖女騎士 LV 21

GIFT : 光の神子 (S) / 氷の姫神 (S)

SKILL

標準ノーディア語翻訳認識・表現総合 LV 8

光系統魔法 LV 10

氷系統魔法 LV 10

槍術 LV 8


「かなりINTに極振りされてるんだけど、それでもこれ」

「ちなみに、INT四桁はアイザワ様だけ。続くのは、ワタライさんとサガさん、いずれも640です」

「これが、普通の『突出した天才』のステータス……」

 三人がそれぞれに言葉を漏らす。


「あと、スキルは、最大でレベル10です。アイザワ様の光系統魔法と氷系統魔法は、すでに最大限開発されています。あとは、基礎レベルとクラスレベルを底上げすると、その分の向上が期待できます」

「この『標準ノーディア語翻訳認識・表現総合』のおかげで、こうして会話も読み書きもできるんですよね?」

 相沢晴美の問いに、ユイナは、ええ、と答える。


「そこだけは、由真ちゃんレベル10か……」

「まあ、アイザワ様のレベル8も十分高いですけどね……このスキルは、異世界召喚された場合に必ず与えられるものなので、『ゼロ』とは無関係になったものだと思います」

「あれ? 相沢さんの『槍術』レベル8って……」

「ああ、私、長刀やってて、自分で言うのもなんだけど、結構得意なの。それでだと思うわ。まあ、スキルとかは、追々相談していくとして……」

 そういって、相沢晴美は二人に目を向ける。


「その『相沢さん』とか『アイザワ様』って、なんか距離置かれてる感じがするのよね。私は、『由真ちゃん』『ユイナさん』って呼んでる訳だし……下の名前で呼んでもらった方がうれしいかな」

 由真とユイナは互いの目を見合わせ、どちらからともなく破顔した。

「それじゃ、晴美さん」

「よろしくお願いします、ハルミさん」

 二人の答えに、相手――晴美も笑顔でうなずいた。

TS主人公・由真ちゃんに、晴美さんとユイナさん。3人がまとまりました。

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