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126. 王子の願いと由真の決意

殿下からのお話は、一段落つきます。

 エルヴィノ王子の執務室で、由真とユイナは「当面の課題」を巡る相談を続けていた。


「他にも、たとえば鉄道の民営化も、秋から検証される課題ですね」


 長い汽車旅の中でたびたび話題になった件だった。


「それは確か、僕たちの世界の制度を参考にしたとかいう……」

「ええ。経済省が『競争原理を導入する』と強く主張して、兄もそれに賛同して……曲折を経て、今の仕組みになっています。これも、経済省から見れば、アスマは競争原理が働いていない、ということになり、私などから見れば、カンシアの鉄道は大丈夫なのか、と不安がぬぐえない、という状態です」


 由真が聞いた範囲では、エルヴィノ王子の認識の方が妥当と思われる。


「まあ、これは、専門的に過ぎますから、今すぐどうこうということはありません」


 確かに、いきなり由真に何事かを頼むには、相当専門的で技術的な事柄だろう。


「秋の検証の対象ではない件にしても、たとえば、先ほど話題に上った通貨制度の件なども、私が判断を誤る危険が常にあります。私の代わりに判断をしてくれる『首脳』がいてくれれば大いに助かります。少なくとも、広く意見を聞くことのできる『顧問』がいるだけでも、安心感が違います」


 その言葉を否定することは、由真にはできなかった。


 エルヴィノ王子は、国王から託されたこのアスマの地の統治を全うするため、若くして万事に責任感をもって当たっている。

 彼は、優れた能力をもって、その使命を果たしている。


 しかし、王国政府の現状は、あの蒙昧な第一王子が、民を顧みず暴走を続け、貴族を代表する勢力はそれに賛同するばかりという惨状を呈している。

 その中で、アスマを統べるだけでなく、王国全体の政策にすらも怠りなく警戒を続けるのは、あまりに負担が大きすぎる。

 その役割を分担しうる者――少なくとも「顧問」、できれば「重臣」。それは、この地のためにも必要だろう。


「その、僕は、とても、殿下をお支えするような、そんな器は、ありません……けど、僕にできる限り、全力で、殿下のために、働きたいと、そして、アスマのために尽くしたいと、……そう、強く、思っています」


 強く応える自信はない。しかし、強い言葉を捧げたい。

 そんな矛盾した思いが、由真の心を焦がす。


「ありがとうございます、ユマ殿。追々、いろいろお願いしていきますが、ユイナさんとともに、よろしくお願いします」


 常の穏やかな笑みとともに、エルヴィノ王子はそんな言葉を返した。

 由真は、相手に対して最敬礼で応えた。

長くなりましたが、殿下からのNAISEI関連のご指示は、ここまでとなります。


鉄道制度話を詳しく描くことも考えたのですが、脱線(話が横道にそれる)して復旧に時間がかかる(大本の筋書きに戻すのに文字数を要する)状態になるので止めました。

鉄道は、この異世界の重要移動手段なので、この先も折に触れて言及することになります。

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