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116. 第4回ステータス判定 -七戸愛香-

最後の一人になった彼女は―

 最後に残ったのは、七戸愛香だった。


「クラス召喚されたけど、あたしは最弱の商人として、行商でもして生きるから」

 ――愛香以外の全員が「実はAクラス」と判明した今、愛香はあきらめとともに開き直った趣だった。


「えっと、あの……」

 戸惑いを隠しきれない様子のユイナをよそに、愛香は淡々と水晶玉に手を乗せた。


NAME : アイカ・シチノヘ

AGE : 16 (6 MP / 104 UG)

SEX : 女

LV : 9


STR : 25

DEX : 25

AGI : 25

VIT : 25

INT : 280

MND : 160


CLASS : 経理兵 LV 1

GIFT : 商い人 (S)

SKILL

標準ノーディア語翻訳認識・表現総合 LV 6

計数管理術 LV 9

空間管理術 LV 8

都市地理学 LV 9

食材加工術 LV 5

衣服製作術 LV 4

調理術 LV 5

小物組立術 LV 3

火系統魔法 LV 3

水系統魔法 LV 1

地系統魔法 LV 1

総合地理学 LV 3

歴史学 LV 2

生物学 LV 1


 その瞬間、沈黙が聖堂を支配した。


「目がおかしい。『C』が下の方でも曲がって見える。たぶん長旅で疲れてる」

 その沈黙を破ったのは、他ならぬ愛香だった。


「いや、これ、どっから見ても『S』だよね?」

 和葉が「ツッコミ」を入れて、その場の空気は緩和された。


「計数管理術がレベル8からレベル9、空間管理術がレベル7からレベル8、都市地理学がレベル6からレベル9、調理術がレベル4からレベル5、衣服製作術と小物組立術が追加、ですね……」

 ユイナが言ったそれが、前回との差分だった。


「帳簿は、愛香が管理してたよね、他にいない『経理兵』だったし」

「什器の修繕は、愛香ちゃんも手伝ってくれたよね。『買い換えとかとんでもない』って」

「調理もしてくれたよね? 『具材の使い方に無駄が多い』とか言って。あたしも手伝ったけど、あれから味がだいぶよくなったよね」

 美亜に池谷瑞希と佐藤明美がそんなことを言う。

 セプタカのダンジョン攻略において後方支援に手腕を発揮したC3班。その実質的なリーダーが、他ならぬ愛香だったのだろう。


「さすがは『ナナトヤ』のご令嬢ね」

 そう言って、晴美は微笑とともに愛香に目を向ける。

「え? 愛香ちゃん、『ナナトヤ』の?」

「お祖父さんが会長、お父さんが社長。押しも押されもしない社長令嬢、ね」

 和葉の問いに晴美が答える。


「ナナトヤ」は、由真たちの地元に店舗を展開するスーパーチェーンだった。

 ロードサイドにショッピングモールも展開して、中央資本相手に善戦している。

 21世紀に入っても、県内に店舗が少なかったコンビニエンスストアの大規模フランチャイジーとなり、本部の店舗網拡大と自社の新事業分野確保という「Win-Winの関係」を築いていた。

 その店名は、創業家の名字「七戸(しちのへ)」にちなんでいる。つまり――


「え? やっぱり、そうだったの?」

「それ、気軽に『愛香ちゃん』とか呼ぶのって……」

「私は気づいてたけど、本人は気にしてない感じだったから」

 他の面々も、そんなことを言い合っていた。


「あの、女神様……」

「アイカ・シチノヘを認証しました」

 そして、地球における事情とは無関係のユイナは、女神像に向かう。女神もまた、あっさりと愛香を認証する。


「『商い人』でSクラス、とは、私は、寡聞にして……」

「これは、この世界において初の事例です」


 ――この世界における「史上初」の事例。女神のその言葉を受けて、全員が愛香に注目する。


「そのスキルのうち、『空間管理術』は商業施設の空間配置を最適化できるもの、『都市地理学』は都市における地理、地政学、文化性、さらには『商品に対する需要の動向』を把握するものです。また、商業に関連する……言い換えれば『商品にできる』スキルについては、自らもある程度習得可能、という特質も兼ね備えています」


 需要動向が把握可能で、商業施設の構造も最適化可能。

 自らもスキルを持つことによって商品化可能な対象に精通することもできる。

 需要と供給を適切にマッチさせることができる。こと「商業」に関しては反則的能力(チート)とすら言える。


「あの、そうしますと、クラスは、ってこれっ……」

 問いかけたユイナの声が裏返る。


 水晶板に列挙された文字をのぞき見ると、商品種類別の「販売管理者」が多数居並んでいた。由真は、召喚されたその日に自らの前に示された「選択可能クラス」の羅列を思い出す。


「推奨クラスは、『総合小売理事官』又は『総合卸売理事官』です」

「それじゃ、『小売』の方で」

 女神のその言葉に、本人――七戸愛香は、眉一つ動かさずに応える。

 地元小売業の「サラブレッド」。その「血筋」に、迷いはないのだろう。

「最弱の商人」ならぬ「最強の商人」でした。

ここでもまた、「成り上がり」です。


愛香さんは、生産職全員を束ねる「小売」担当という前提で、やはり初期から登場しています。

最初の段階で「レベルが学級最低」だったのも、「実はある意味最強」という裏があってのことです。

作者としては、「感情の起伏に乏しいジト目キャラ」として描いてきたつもりです。「社長令嬢」という裏設定はほとんど触れていませんが。

「七戸愛香」という名前も、小売業界のとある有名企業にちなんでいます。その名にふさわしい店舗網を展開することになるでしょう。

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