9. クラス奉告
次の儀式に入ります。
2年F組の面々は、6グループに分けられて、会議室風の部屋に入れられた。
由真は、相沢晴美、桂木和葉、嵯峨恵令奈、度会聖奈の4人と同じグループとされた。
由真以外の面々は、SクラスとAクラスと判定された、この学級の最高位に君臨する女子たち。担当の神官は、件の女神官ユイナ・セレニアだった。
女神像の足下に石板が据えられている。女神官は、その傍らに立つ。
「この石板に向かいますと、適性クラスに関する情報が提示されます。神像を介して女神様とお話しすることが可能です。また、仲介者として、私が質問にお答えします。その上で、ご自身のクラスをお決めいただき、女神様に奉告してください」
その上で、出席番号順ということで、相沢晴美がまず石板に向かう。
「……ねえヨシ、女になった、っていったい……」
「ねえ度会さん、それより相沢さんのアレ、しっかり見てた方がよくない?」
由真に話しかけようとした聖奈を、桂木和葉が制する。
「なんか、この世界でやってかなきゃな訳だし……相沢さん、このシチュに完璧に対応できてるじゃん?」
桂木和葉の指摘は妥当だった。相沢晴美の観察や判断は、続く彼女たちにとってはこの上ない指針となる。
「それでは、アイザワ様、こちらへどうぞ」
相沢晴美が、石板の前の椅子に腰を下ろした。
「性別女、レベル64。ギフト『光の神子』『氷の姫神』、いずれもSクラス。認証しました。選択可能クラスを検索……表示しました。推奨クラスは『大聖女』『魔法大導師・氷系統魔法』『槍術騎士』です」
女神像から女性の声が響く。それは神秘的な情景のはずながら、告げられる言葉は機械的で、21世紀の地球人にとってはかえってなじみ深く感じられた。
「まずそもそも、この『クラス』はどういう意味が?」
「『クラス』は、その人の能力と適性に基づく職業の社会的位置づけとなります。この『奉告の儀』において女神様に奉告いただいた『クラス』については、それを活かすことのできるスキルが与えられ、かつそれが円滑に上達する、それを女神様が保証してくださいます」
「推奨クラスが3つ示されましたけど、これは?」
「推奨クラスは、既存スキルやギフトによって、女神様よりお示しのあるものです。通常は一つ示されますが、アイザワ様は、Sクラスデュアルギフトの持ち主ですので、三つお示しのあったものと思われます」
「それは、順番があるのでしょうか?」
「お示しのあった順、『大聖女』『魔法大導師・氷系統魔法』『槍術騎士』の順に推奨されているということかと思われます」
「そうすると、たとえば『大聖女』を選んだとして、それを女神様に奉告すると、加護が得られることで、『大聖女』の名に相応な職業適性が身につき……その分野での社会的成功が得やすくなる……そういう理解でよろしいですか?」
相沢晴美の問いに、女神官は「まさしくそのとおりです」と答える。
「なるほど……」
といって、相沢晴美は右手をあごに当てて、数秒考え込む。
「この『クラス』、複合型にすることは可能でしょうか?」
相沢晴美は、女神官に問いかける。
「複合型……とは……」
「推奨された『大聖女』『魔法大導師・氷系統魔法』『槍術騎士』、この三つの要素を複合兼備する『クラス』を設定し、それを登録する、ということは可能なのでしょうか? 成長が遅くなるという難点はあると思いますけど、せっかくの『ギフト』を十全に発揮するには、そういう方向が望ましい……とも思うのですが」
数秒の沈黙。それを破ったのは、女神官だった。
「アイザワ様が今おっしゃったような複合的な『クラス』の設定は、女神様が受容されれば可能です。そういう事例はありました。ただ、これもアイザワ様がおっしゃったように、複合的なものは、その分成長に必要な経験が多くなる。前例によればそうなります」
女神官の答えに、相沢晴美は頷くと正面の女神像を見据える。
「それでは……『聖女』に氷系統魔法を加味した上で『騎士』と複合させた『聖女騎士』。このようなクラスの設定は可能でしょうか?」
「氷系統魔法も担う光系統魔法大導師『大聖女』と槍術による『騎士』の複合による『聖女騎士』、設定及び登録は可能です」
今度は、女神像――を通じた「女神自身」――が返答する。
「では、それでお願いします」
「了解しました。……クラス『聖女騎士』、レベル21。奉告を受理しました。対応スキルは石板で確認してください」
そんな答えとともに、相沢晴美のクラス奉告が終了した。
彼女もTUEEEです。
ここからは、1日1回程度に減速させていただきたく。