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解明編⑳ 魔法武闘会編④ モリスVSマキュベス

前回のあらすじ:マキュベス達の戦いを終えた後、テオ殿下から知り合いを紹介された。


ブクマ登録、ポイント評価ありがとうございます。

今回は戦闘回です。

 そうして、二年生の戦いが始まることとなった。

予選ではテオ殿下とドロシー令嬢は違うグループに所属させられた。

先にドロシーの戦闘が始まる。ちなみに、このグループは当然ながら男性もいる。


 試合が始まると、ドロシー以外の面子で攻撃し合っていた。

彼女がしばらくじっとしてそれを見守っていたのだが、その人達の勝負がつくと一気に動き出した。

まるで暴走した動物のように荒々しいものであるが、体力が切れた敵にとってその動きは読めないものであったらしく、彼女のタックルでストラップが破壊された。


 こうして彼女も本選に出場することが確定したのだが、あまりにもお粗末な結果である。

言ってしまえばただの魔力のごり押しであり実技の能力は低いと判断されかねない。

なので成績が低くなる……かと思いきや、戦いの運び方の方は上手かったためそちらの方は高評価かもしれない。


 そして、次の戦いであるテオ殿下の予選が始まる。

こちらはわかりやすく、全員が敵というパターンである。そのため、開幕集中砲火が予想されうる展開である。どう乗り越えるのか、という緊張感が観客にも伝わる。


 試合開始。

その瞬間二人ほど王子の方へ向かい、一人がその場で待機している。先ほどのどこかお粗末な試合と比べると、計算づくされており組織立っている。


 二人の攻撃を適当に躱した後、掌にこぶし大程度の炎を生み出しその背中にたたきつける。

まるで背中へ叩きつけるように行ったその攻撃は二人のストラップを壊すのにふさわしい一撃であった。

最後の一人へゆったりと歩きながら近づく。


 すると、その一人は事前に準備でもしていたのか土の槍の弾幕を生成する。

その大きさは現代で言えば一メートル程度だが、その数は数えきれないほど。

それらが一気に殿下へ襲い掛かる。


 しかし、その足取りは変わらずゆっくりのままである。すべて紙一重でかわし、躱しきれないものは水を用意して盾にする。あれだけあった弾幕がすべて消えるころには殿下は対戦相手の目の前にいた。

その後先ほどと同じように、炎で事務的にストラップを壊して予選が終わるのであった。

もちろん、殿下は無傷である。


 まさに圧倒的な余裕と力を会場に見せつけていた。

観客はあの水や炎が魔法によるもの、と判断していたがマキュベスだけは魔石によるもの、ということを見抜いていた。


 ちなみに、この大会は持ち込み有とされている。主流魔法の中には道具が必要なものもあるため、基礎魔法を使いながらという条件下で利用が許可されているのだ。

実際、二人の攻撃を避けるときも土の槍の弾幕を避けるときも基礎魔法を用いていた。


 こうして、二年、三年の予選が終わった。

次は勝ち残った八人による本選である。教員としては予選だけで十分と言えば十分だが、観客にとってはこの本選こそが最も楽しみにしていた部分である。

伊達に大会という名前がついているわけではない。


 その対戦相手に関してだが、なかなか面白いことになっていた。

それは、一回戦でマキュベスとモリス公爵子息、そしてドロシー令嬢とテオ殿下がぶつかり合うというものだった。

ちなみにモリス公爵とテオ殿下が順当に勝ち残ると決勝で戦うことになるように仕組まれている。


 モリス公爵子息。

魔力操作ではほぼ互角、魔力量も大きく劣り、頼みの主流魔法も戦闘という面においてはモリスの方が有利という状況。

ハッキリ言ってしまえば、マキュベスに勝ち目はない。


 そもそも振興という人が本選まで勝ち残った例と言うのはほとんどない。

魔力量が他の平均的な貴族より劣っていること、そして主流魔法が戦闘向きではないことから勝ち抜くのは土台無理な話とまで言われている。

要は勝負する舞台が違うのだから、仕方ない話である。


 ついでに言えばモリスの家、トマス公爵家は昔からそういった武闘系にはめっぽう強い家系。

そういうわけで、マキュベスはこの戦いを諦めて……

(せっかくですし、胸を借りる気持ちで自分のすべてを使って勝ちを狙いますか)

いなかった。


 野心というより、ただの好奇心がマキュベスを動かす。

自分の能力はどれくらいまで通用するのか? それが今のマキュベスは気になっていたようである。

ここらはマキュベスの人種によるものだろう。


 彼は昔から「勉強」ではなくて「研究」を行っていた。

本質は異なるが、動機は似たようなものである。しかし、前者は先駆者がいる場合がほとんどだが後者はないことも多い。それでも突き進むのは一言で言ってしまえば「好奇心」だろう。


 幼少期のころからずっとそのような精神で育ってきた。

その性格や考えは今も変わらず、いやむしろ純化しているとさえいえる。

だからこの戦いも諦めではなく興味が湧いている。


 そうして、会場にたどり着く。

マキュベスはあくまでいつも通りの態度であったがモリスの方は少し異なっていた。

彼に話しかける。


「マキュベス。同じクラスだが、手加減は不要。

悪いが、貴殿に負けるわけにはいかない。本気で行かせてもらう」


 と先ほどとは異なりギラギラとした目つきでマキュベスを見る。

マキュベスが好奇心で戦うとすれば、モリスは自らの理想のために戦う人種だ。

お互いに背負っているものは異なるが目指しているものは同じである。


 そして、試合が始まった。

この勝負は時間を置けば置くほどマキュベス側が不利となる。

なぜなら体力という面でもマキュベスが負けている。つまり勝つならモリスの不意を突くしかない。

まずは亜流魔法を使用する。


 すると、おおよそであるが魔力の流れも観察できる。

予想通りと言うべきか、体内に流れている魔力は今の段階では非常に少ない。特に顔の部分が少なめだ。

これは魔法のしくみとしてノータイムで魔法を行うというのは一般的に不可能と呼ばれているからである。


 それは魔力がどこから補給されているのか、という話が絡む。

詳しくはまた後にするが、一言で言えばいきなりトップギアで戦うというのは不可能である。

なのでモリスとしては最初はあまり魔力がない状態で戦わざるを得ない。


 ということで、マキュベスが先ほどの試合で出したトップスピードと同じ速度で攻撃する。

それに反応できずに攻撃が彼の首筋に入る。見ると、ストラップも多少壊れている。

この速度にモリスも大層驚いており、一瞬反応が遅れてしまったようである。


 続けて拳で攻撃するのだが、動きが読めないのか大げさに避ける。

そのせいか、隙ができたように見えたためマキュベスはそこに蹴りを入れた。

すると姿勢が悪かったためかよけきれずにクリーンヒットする。


 攻撃されっぱなしのモリスから、拳の攻撃が入るのだが予選で戦った相手と同じくらいの速度。

つまり今のマキュベスにとっては避けてカウンターを入れるのに絶好の攻撃。

なので紙一重で避けて拳で一撃を入れる。


 その一撃で冷静になったのか、いったん下がってしまう。

追撃しようと思ったが、さすがに距離が遠いため追撃を諦めた。

みるとストラップは半壊という状況である。


「なるほど、まさか貴殿が世にも珍しい初期最高成長型とはな。

道理であそこまでの動きができるのか」


 初期最高成長型。

先ほど魔力をいきなりたくさん出すことは不可能と説明したが、この型の場合いきなりトップギアを出すことができる。これがマキュベス最大の切り札である。

これの恐ろしさや特異性については先ほどの戦いっぷりからありありと現れているだろう。


 なぜ成長、と銘打っているのかというと戦っているうちにどんどん成長しているように見えるからである。あの勇者もこの型であったとされる。

なので、初期から最高だから初期最高成長型と呼ばれている。


「仕方ない。最終決戦まで取っておきたかったが……今負けるわけにはいかないからな。

切り札を切らせてもらう」


 というと、あちらから仕掛けてきた。

しかしその速度や魔力の量は先ほどとほとんど変わっていない。

何か放出系でも行ってくるのか、と警戒をしつつカウンターを用意する。

相手の防御力を考えるなら、この一撃で勝負は決まる。


 そして目の前に拳が来る。それを先ほどと同様に紙一重でかわしカウンターで肘打ちを決めようとする。

モリスの顔に当たる直前。急にその腕の動きが止まった。

見ると、腕がモリスにつかまされていた。


 ありえない、と思いながら必死に逃れようとするが先ほどとは考えられないほどの力で離れられない。

その瞬間、自分の体に直感が走る。それはお腹への攻撃。

右腕が掴まれていたため、左腕に全魔力を込めてお腹をかばう。


 しかしその攻撃は直線であった。

左腕が盾として機能したにもかかわらず、それを貫通して魔力で防御していないお腹に攻撃が入ってしまう。

その一撃でストラップが全壊してしまった。


 結果、この勝負はモリスの勝ちである。

お読みいただきありがとうございました。

ちょっと筆者の体調不良でテオ殿下戦を書くだけの余裕がなかったです。申し訳ない。

次回決勝戦で、多分不評でした武闘会編は一旦終わります。

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